※リクエスト作品になります
土生side
ゆいぽんがひかるちゃんと付き合ったらしい。
ゆいぽんからそう話があった。
でも、その時のゆいぽんは以前、理佐と付き合ったことを報告してくれた時の、胸から込み上げる嬉しさを隠しきれてなかった可愛いあのゆいぽんじゃなくて。
お願い、助けて、もう無理。ひたすらに泣いている声の中にそんな言葉が見え隠れしていた。
そんな様子を見たら、私とふーちゃんは、当たり前に絶対にひかるちゃんには何かがある。そう思った。
だからひかるちゃんのことをずっと探ってた。
絶対何かあるって、絶対にゆいぽんと理佐にはまた一緒になってもらわないと困るって信じて。
それでも、怪しさは感じるけど特に目立った行動がすぐに見つかるわけでもなくて。やっとひかるちゃんの尻尾を掴んだのがひかるちゃんを探り始めて実に約2週間後だった。
たまたま夜、コンビニまで散歩に私が出かけていた時、ひかるちゃんを見かけて。
最初は自分の家に帰る途中なのかと思って遠目から見て疑ってなかったけれど、ある電柱の下でことは起こったんだ。
ひかるちゃんが電柱で立ち止まってからしばらく。その横に黒ずくめの知らない人も来て。しばらく2人はスマホを触っていただけなんだけど、その後サッと現金を手渡しする様子が見えて。
土生「何してるの」
小走りで追って、ひかるちゃんの手首を掴んだ。
そしたら最初驚いた表情をしたひかるちゃんだけど、振り向いて私の顔を見たら何かを観念したような顔になって。そのまま話を聞くために私の家まで連れて帰った。
土生「詳しく説明してもらっていい」
ひかる「っ、はい、」
ひかる「本当に、出来心だったんです。たまたまネットで
最近AI画像って言うのが流行ってることを知って、
一緒に貼られてた写真があまりにもリアルだったか ら、興味湧いて…」
アプリをインストールして、最初は動物と動物の写真とか好きなもので遊んでいたらしい。それからもっとハマって、課金をして指名で依頼すれば人の合成画像も作れることを知って。
ヒートアップして、これを使えばリアルなコラ画像を作れるんじゃないかって思ったみたい。それで、それを使えば理佐とゆいぽんが別れてゆいぽんが自分のものになるんじゃ無いかって。
話を聞きながら憤りが凄かった。
なんでそんな遊びにゆいぽんと理佐と友香が巻き込まれなきゃいけなかったのか。1人のその小さな遊びが、何にも関係ない2人の純粋無垢な育んだ愛をこうも簡単に歪ませることができていいのかって。
ひかる「反省してます、本当に」
土生「…反省、するだけじゃだめだよね」
ひかる「っ、はい、ちゃんと正直にお2人にも話して謝る
つもりです」
土生「謝って済むことじゃ無いよね」
ひかる「っ、」
きっと理佐とゆいぽんは優しいから、ひかるちゃんが謝りに行ったところで強く言わないし強く言えないと思う。
だから、お節介かもしれないけど、今ここで2人の代わりに私に怒らせて欲しい。そうでもしないと怒りで頭がおかしくなりそうだった。
土生「私が言うことじゃ無いけど、自分がどれだけ許されない ことをしたのかわかってる?理佐とゆいぽんは何にも
関係無いはずだった人なんだよ?こんなことになら
なかったら今も2人で笑って過ごしてたはずなの。
今だけじゃ無い。ひかるちゃんとゆいぽんが過ごしてた ここ最近の時間は本当なら理佐とゆいぽんが一緒に幸せ にしてたはずの時間なの。ひかるちゃんは、その2人の貴 重な時間を奪った、ただ自分の遊びに夢中になった
ばかりに。そのことの重大さ本当に理解できてる…?」
言葉に棘が出てきていることは自分でも自覚していた。
でもはっきり伝えないときっとこう言う類の子はいつかまたこんな過ちを犯してしまうと思って。
半分は、大切な後輩が同じ過ちを繰り返さないように、もう半分はもう2度と大事な人たちがこんな思いをしてほしく無いと言う思いから叱った。
そしたらやっと自分のしたことの重さを実感したのか、ひかるちゃんの目からポタポタと涙が出てきて。
ただ由依さんが大好きだっただけなんです、一回でいいから私にも振り向いて欲しかった。と。仕方ない後輩の背中を摩る。
許したわけじゃ無い、でも人は誰しもいつかきっとどこかで間違える。そして、その間違えるタイミングがひかるちゃんの場合は最悪だっただけ。
……他人事のように感じれなかった。わかるから、好きな人に気づいてもらえない寂しさが。
そして、私は落ち着いたひかるちゃんに「理佐とゆいぽんに謝るのはちょっと待ってね、傷つく人がいるから」と伝えてふーちゃんにあることを連絡した。
由依side
私と理佐がライブ中手を繋いだ日からもしばらく私とひかるちゃんの交際は続いた。
でも、付き合い始めた時に感じてた愛情は最近まるで感じれなくて。もう完全に休日が被った日に抱き抱かれる、そういう関係になりつつあった。
こんなのもう限界、こんなことになるなら理佐の浮気の一つくらい許してれば良かったのかな…
過去の自分の選択が正しかったのか、わからなくなった時期にふーちゃんから連絡があった。
ふゆか : 今から家行ってもいい?話したいことがあって
ふーちゃんが急に家に来ると言い出すのはまぁあるあると言うか、いつも通りだけど私は何か嫌な感がしてた。
ソワソワ家の中を訳もなく彷徨って、15分程度経った時にやっとインターホンがなってふーちゃんを家にあげる。リビングに入ってすぐ、向い合わせに座るように言われた。
齋藤「あのね。落ち着いて聞いてね。」
そういう出だしで始まったふーちゃんの話に私は消えてしまいたくなった。
理佐とゆっかーは浮気関係じゃなかったこと、ひかるちゃんが私に振り向いて欲しくて遊び感覚であの写真を偽造したこと、それをひかるちゃんがさっき土生ちゃんに吐いたこと。
これが本当の事実だと知れて嬉しかったけど、それ以上に嘘と言って欲しかった。
だって私はこの1ヶ月で、理佐と今まで大事にしていたものをどれだけの量壊して、どれだけの大事な暗黙の約束を破った?
浮気をされたと初めて知った時に、恋人である理佐の話はまともに聞かないでひかるちゃんの話を信じた。
それから理佐のこと無視して、ふーちゃんとかひかるちゃんの家に泊まって、ムカつくからって連絡も返さなかった。
それから、理佐以外の人とキスして、ソウイウコトを最後までしちゃった。理佐にしか見せちゃダメなのに、理佐以外の人にも見せちゃった。
おはようと行ってらっしゃいのハグも、おかえりとお休みのキスも理佐とできなかった。
__________理佐は何もしてないのに。
これは全て私のせい。
私の思い違いから始まった最悪のすれ違いゲーム。
本当に馬鹿だった、私との関係を断ち切ったのは理佐だと思ってたけど、それは間違いで、本当に断ち切ったのは私自身だった。
……私が、理佐との関係に自分でヒビを入れて割ったんだ
その事実が大きく私を貫いた。
齋藤「ゆいぽんが私に話してくれたことは、私からは理佐に言 ってないから、だからちゃんと自分の口で言いなね」
由依「…むりっ、会えないよ、合わせる顔ない…泣」
最低な事しておいて今更理佐の前に堂々となんて顔が出せるわけ無い。当然そう思ってた私にふーちゃんは言った。
齋藤「、、、それで、後悔しない、?」
合わせる顔がないからって会わないままで時間が進んでも、本当に後悔しない?私の顔を覗いて聞いてくるふーちゃんはもう答えを知ってるはず。
私の答えはNO、後悔、する。
でも、どんな顔して会えばいいの…こんなことが起きた後で…
そんな私を見透かしているのかふーちゃんは優しく包み込んで、私の背中を押す言葉をくれた。
齋藤「理佐はゆいぽんのこと大好きだよ、大丈夫」
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あの後、電話越しにひかるとは正式にお別れをした。
ひかるも泣いているみたいだったけど、胸は痛まなかった。
そして、ふーちゃんに手を引かれて1ヶ月ぶりに私の大好きな家の前に立つ。
私は、果たしてこの敷居を跨ぐ権利があるのかな。あんな酷いことをしたのに、理佐に、悪いこと、したのに、
玄関前で立ち尽くす私に、「仕方がないなぁ」なんて言って私の代わりにふーちゃんがドアを開けてくれた。その時に感じた私たちの家の匂いでもう泣きそうだった。
齋藤「はい、泣かないの。理佐は笑ってるゆいぽんのこと方が きっと好きだよ」
由依「ん、ごめんねっ、沢山迷惑かけて…」
齋藤「いいから、私のことは。
ほら笑って、いってらっしゃい」
玄関にいるのにいってらっしゃい。なんだかおかしくて不意に笑えた。閉まる扉を背に、私の靴が沢山散らかってる懐かしい玄関で靴を脱ぐ。
理佐「ゆ、ぃ、」
リビングには理佐が帰ってた。
遠慮がちに私の名前を呼ぶ理佐。
透き通るようなその瞳に見つめられたら、この1ヶ月の自分の失態がフラッシュバックして胸が潰されそうで、涙が出てくる。
由依「理佐…りさっ、ごめんね、…ごめん、私っ、1人で勘違い して、暴走した、、ごめんなさい、泣」
しゃくりあげて、子供みたいに大泣きした。申し訳なさに耐えられなくて、そしたら気づくと理佐も泣いてた。
理佐「ううん、ううんっ、、、私も、あの時ちゃんと引き止め て話聞いてあげられなくてごめんね、泣」
違う、違うの、あの時理佐は引き止めようとしてくれてたじゃん、私が避けたの、理佐は悪く無い、私が悪かったの、
心の中は饒舌だけど理佐へのありったけの「ごめんね」の気持ちは涙に変わってしまった。
理佐のその、腫れた目と、疲れていそうな様子と、いくらか痩せたかと思う頬を見たら、この数週間頑張って蓋をしていた気持ちが抑えきれなくて。
それで思った。あぁ、やっぱり私、理佐がいいなぁ。理佐とじゃなきゃダメみたいだ。こんなこと思うのは理佐しかいない。
理佐も同じ気持ちだったらいいのに。そう思った時
理佐「あの、ね、、、もう一回、やり直したい、由依と。
私、やっぱり無理…由依がいないなんて…。生きてる心 地、しないや…笑」
力なく、でも今の理佐の精一杯で作られた笑顔を見たらもう身体が言うことを聞かなかった。小走りで駆け寄って、やっぱり細くなった理佐を抱きしめる。
由依「うんっ、、うん、やり直すっ、泣
私も理佐がいい、理佐がいないとダメになっちゃう泣」
理佐の方に顔をつける。抱きしめたこのフィット感も、身長も、抱きしめ返してくれるこの力加減も全部が全部極上だった。
ずっとこうしたかったよ、理佐。ずっとずっと、求めてた、そうやって抱きしめてくれるのを。
理佐以上の人はいないね、今回わかった、きっと世界中どこ探しても理佐以上に私を幸せにしてくれる人はいないんだと思う。
でも、よりを戻すには、あと1つだけ理佐に言わなきゃいけないことがある。
由依「後ね理佐、もう一つだけ、理佐に謝らなきゃいけないこ とがあるの、」
由依「私ね、ひかるとね、付き合ってたんだ、理佐が浮気
してるなら私もって思っちゃって…それでね、
断りきれなくて、キスして、、理佐だけのところも全部 見せちゃったの、、ごめんなさいっ泣」
流石に打たれる覚悟でいた。だって不本意だったとは言え普通怒るでしょ、こんなこと恋人がしてたら…
なのに、理佐は怒らなかった。
理佐「そっ、、か、、嫌なことされなかった…?」
由依「え…?」
理佐「ちょっと、いや、だいぶ嫌だけど、できれば、そんなこ とになってほしくなかったけど、…最悪私は由依が
嫌な思いしてなければいいよ」
ふわっと微笑んで顔に手を添えてくれてそんなこと言う。そして続けて、「だって由依、手繋ぎ返してくれたでしょ?それでチャラだよ」って。
バカじゃ無いの、そんなのでチャラにできるほど軽いことじゃないよこれ。心にも無いことを思って、また涙を目に滲ませて理佐の肩に顔を落とした。
なんで私はあの日に限って理佐の話をよく聞かなかったんだろう。そのせいで恋人なのに、理佐とただこうやって抱きしめ合うのに凄い時間がかかっちゃった。
理佐「ズズ、へへっ、泣きすぎ由依笑」
由依「それ言う理佐だって、グスン、笑」
2人で泣きっ面を見せ合っておでこをくっつけて笑う。存在を確かめられるように両手で顔を撫で回されるのが嬉しくて仕方ない。
理佐「おかえり、由依」
由依「うんっ、ただいま理佐。遅くなってごめんね」
to be continued…