※リクエスト作品になります。「スピリタス」という作品の続編、ぽんかりんのお話です。




夏鈴side



ひかるが赤い顔して調子良さげにみんなに「バイバイ」と大きく手を振る。私の方にも目を合わせたニコッと酔っ払いスマイルを見せつけてくるから適当に手を振り返して。心の中では歓喜して。

……はぁぁ〜、もう。どうせこの後ひかるは寝落ちするんだろうな。それで、私じゃないあの人に世話焼かれて、可愛い顔見して、甘えて…。

やめたやめた。そんなこと考えるの。胸糞悪くなるだけだ。そう言い聞かせて、さっき届いた追加のハイボールをグイッと一気に飲もうとした。

したんだけど。


「こーら。一気飲みしないの。」
夏鈴「…なんですか、」
由依「珍しいじゃん、夏鈴ちゃんが感情的に呑むなんて。
   どうしたの?何かあったの?」


ゆるりとグラスのお尻の方を掴まれてテーブルに戻されてしまった。そうする張本人は上司の由依さん。

「お話なら聞いてあげるよ、お姉さんが」って、言葉にしてこないけど今にも言って来そうなその雰囲気がちょっと気に食わない。由依さんもだいぶお酒に呑まれているんだろうな。

私のこのひかるへの気持ちもめんどくさいものだ。曖昧な感情だからこそ、諦めきれない。手が届きそうな夢ほど頑張ってみたくなるものだ。

いっそ、有罪とでも誰かが言ってくれたら未練だって断ち切れるのに。


夏鈴「…既に恋人がいる人を思うのは、犯罪だと思います     か」
由依「恋人がいる人のことを好きになっちゃったの?」


話が飛びすぎです、由依さん。でも、確信を突いてくる由依さんの勘の良さは流石だなと思った。


夏鈴「好きになっちゃったわけじゃないです、私の方が先に好   きになってましたから。」
由依「……取られちゃったんだ。先に。」


そんな真剣に話されると、なんだか少し話しずらい。


由依「他の人じゃダメなの?」
夏鈴「他の人?」
由依「他に、もっと潔白で堂々と好きって言えて、夏鈴ちゃん   のことすっごく愛してくれる人、いるでしょ?」
夏鈴「…いますかね〜、そんな物好き。」


自分で言うのもなんだけど1人が好きな私。あんまり色んな人と関わるのが得意じゃない分コミュニティーは狭いわけで。そんでもって、夏鈴なんかのことを好きになってくれる人なんて…


由依「物好きなんて言わないでよ、(笑)悲しいなぁ」
夏鈴「いや、なんで由依さんが悲しくなるんですか(笑)
   それじゃまるで、」


“ まるで、由依さんが私のことを好きみたいじゃないですか ”
その言葉を言うのはちょっと躊躇われた。だって、目の前の由依さんの顔が見たことないくらい真剣だったから。


由依「…まるで、私が夏鈴ちゃんのこと好きみたいだって?」
夏鈴「……っ」
由依「その“ まるで ”が、もし本当だったとしたら夏鈴ちゃんは
   どう思う?」


思いがけない展開で、由依さんと目が合わせられない。まさか由依さんがそんな風に思っていたなんて思ってなかった。

だけど、不思議なことに嫌な気はしなかった。ひかるを一方的に隠れて追っているときよりも、気持ちが楽で。

でも、なんて答えるのが正解?由依さんの気持ちは嬉しいけれど、私は真面目に由依さんのことをそう言う目で見たことないし…。生半可な気持ちじゃ失礼…?

そんな私の気持ちを汲んだのか、由依さんはそっと机の下で周りの人に見えないように私と手を繋いだ。


由依「……今夜だけでも、そんな関係ダメかな。」


ずるい先輩だと思う。私が弱ってるところに漬け込んでこんな言葉を吐いて。

でも、悪くないと思ってしまう辺り私の気持ちはもう由依さんの方へ傾いているのかな。まだあんまりわかんないけど…。

しばらくの間考えていたんだけど、結局答えが出せないまま宴会がお開きになろうとしている。みんなが上着を着始めたり、荷物を持ち始めたりする中で由依さんもそろそろ席を立とうとしていた。

…その時に、なんだろうか。由依さんの温もりが遠ざかっていくのを感じて、反射的に引き止めてしまったんだ。


由依「?夏鈴ちゃん?」


その瞬間に自分の気持ちにも気付かされて、こんなこと言っちゃった。


夏鈴「今夜だけ、なら…」


由依さんと目があったまま数秒間世界が止まったような気分になった。

割り勘のお金を支払うことも忘れて。



fin





お読みいただきありがとうございました!
最後の方ちょっと書き下手でしたかね…。

今後のご想像はお任せいたします…😉🌿

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