※リクエスト作品になります。




理佐side




理佐「おはようございまーす…」


普段よりちょっとだけ萎縮して楽屋入りする今日は、ガールズアワードの日。元々人見知りな私は、この、臨時の薄い壁で仕切られただけのモデルさんたちがみんないる楽屋がちょっぴり苦手だ。

最初はそんな気持ちで緊張しながら準備していたけれど、用意されていた衣装に着替えて、髪の毛を可愛くしてもらったりメイクしてもらったりして、大好きなものに囲まれていくうちに気分は上がってくる。

楽屋入りして、10分…20分…1時間…2時間…

……そろそろ出番かな。

モデル始めたての時は歩くのが難しいと感じた、踵の高い靴を履いて、楽屋を出てステージの方へと歩き出す。

一歩踏み出すごとにどんどん会場の音が大きくなってくる。

何万人もの前に出ていくこの瞬間はいつになっても怖いけれど、光が眩しくて先が見えないその中にはきっと、ファンのみんなの優しさが溢れているから…

よし、今日も頑張りましょう…!



__________________________________________________________________



理佐「ふぅ、」


何回も歩かせてもらっているステージでも、まだまだ緊張する私。それが終わった今は少しだけ肩の力が抜けてホッとしてる。

スタッフの人たちに挨拶しながらさっきまで待機していた楽屋に戻って、メイクを落とそうかって思っていた時、後ろから呼ばれた。


天・ひかる・夏鈴「りーささんっ!」


なんだと思って振り返ると、モデルとして参加してた後輩たちがニコニコで顔をひょっこり出していた。その可愛い姿を見て、私も先輩スイッチが入る。


理佐「あっ、久しぶり夏鈴ちゃん…!」
夏鈴「えぇっ、私だけ?(笑)」
天 「えっ、理佐さん…」
理佐「へへっ、ごめんごめん。久しぶり〜天ちゃん!」
天 「わーい!理佐さーん♪」


ふふ、久しぶりに夏鈴ちゃん贔屓をしてみれば、天ちゃん、シュンとしちゃうんだから本当可愛い。なんだか懐かしい。


ひかる「すみませんうるさくて。理佐さんの楽屋教えてもらっ    たんで、遊びに来ちゃいました。」
理佐「ううん、全然。ひかるちゃんも久しぶり^ ^」
ひかる「はい、お久しぶりです!」


私が在籍していた時よりも大人な衣装を見に纏った3人を見て、大きくなったなぁって。立派になった後輩を見て、私が卒業してから2倍にも3倍にもなった櫻坂を感じた。

そして、そんな3人と暫し戯れていると最後の1人が顔を出す。


由依「おっす、」
理佐「、!おっす、」


小さく右手を挙げて挨拶してくる。久しぶりに会った。今日の由依、一段とかっこよくてなんか照れちゃうな、なんて。

この可愛い後輩3人とは違って私の楽屋の中にまでは踏み込んでこない由依。そういうところ大人っぽくて大好きなんだ。

そうやって、私が少しの間由依のことを見つめているのは他の3人には気づかれていたのかな…

それからは最近の櫻坂の活躍を色々聞かせてもらって。

天ちゃんがフランスが楽しかったんだとか、ひかるちゃんは飛行機の中で寝てたら背が低くていないと思われたんだとか、夏鈴ちゃんなんてマレーシアが熱すぎて衣装が肌にくっつくのが嫌だったんだとか。

好き勝手お喋りする3人の話を、由依と2人で頷く。その雰囲気がグループにいた時みたいでふと、「もう一度帰りたい」そんなこともちょっとだけ思った。

数十分くらいそんな時間を過ごしているうちに、中々戻ってこないメンバーをマネージャーさんが迎えに来て。お開きの時間みたいだ。

帰りたくないと駄々を捏ねる子供もいたけれど、3人は大人しくマネージャーの後に着いて行く。

由依もそのまま帰っちゃうんだろうなぁ、もっといてくれてもいいのに。なんて、考えたらこんなことを言われた。


由依「帰り、ちょっとだけ時間あったりしない…、?」


何かを期待するようなその眼差しは、由依が2人きりの時にだけするそれ。自然と私も、表に見せてる私から由依の前だけの私に切り替わる。


理佐「うん、別に大丈夫だけど。由依たちと時間合うかな。」
由依「待ってるから大丈夫。もし、私のほうが遅かったら待っ   てて欲しい。」
理佐「OK、了解。」


じゃあね。じゃあ。 

お互い言葉では別れてみたけれど、やっぱり名残惜しい。まだ一緒にいたい。会えてなかった期間の由依こと、沢山聞きたい。





__________________________________________________________________




理佐「お待たせ、由依」


あの後、私は少しマネージャーさんと立ち話になって、長引いてしまい結局ちょっと遅れてしまった。

由依もしかしたら帰っちゃったかもしれないと焦りながら出てきたんだけど、由依はいつも通りの由依でちゃんと待っていてくれた。

出口付近でスマホをいじって待ってくれていた由依に小走りで駆け寄る。

すると、一瞬だけ目をニコッとさせてゆっくり抱きついてきた。


理佐「由依?」
由依「…何も言わないで、そのまま抱きしめて。」


言われた通りに、優しく包み込むと「ふふ」と嬉しそうな声が漏れてる由依。そんな仕草ですら可愛くて。

久しぶりの腕の中の温もりが愛しくて私も大切に大切に由依のことを抱きしめた。


由依「……何ヶ月ぶり?」
理佐「寂しかった?」
由依「、、、寂しくなかったって言ったら?」
理佐「由依ちゃんの嘘つき」


きっと、私たち2人だけにしか聞こえない、耳元だけの会話。その秘密感から、思わず“ 由依ちゃん ”なんて2人の時の呼び方に戻ってしまう。

由依が私がいなくて寂しくなかったわけがない。仮に「寂しくなかった」と言ったとしても、暇さえあれば来ていた由依からのどうでもいいようなメッセージが説得力をなくす。


由依「へへっ、あたり。……理佐は?」
理佐「私は由依みたいに寂しがりじゃないもん。」


由依が私にしたように私も由依に嘘をついてみる。すると、ちょっとだけ腕の力が強くなった。


由依「……寂しかったって言えっ、」
理佐「んふふ、腕きついよ」
由依「…嬉しそうに言うなし、」
理佐「嬉しいんだもん、仕方ないでしょ?」


返す言葉が見つからないのか、肩に頭を擦り寄せてくる。それを何も言わないで頭を撫でてあげると、「会いたかった」と一言だけ。その一言がどれだけ私の心臓に悪いか由依は分かってないだろう。


由依「…また明日から理佐に会えなくなるね。」
理佐「うん」
由依「由依、頑張ったんだよ?理佐に会いたいって思っても1人   で。」
理佐「えらいね、由依ちゃん」


よしよし、と子供を褒めるように頭を撫でたところで由依のスマホがなり、マネージャーさんからの催促が来ているみたいだった。


理佐「……もうそろそろバイバイしないとだね」


関係性を公表してないし、怪しまれないためにもそろそろ仕事仲間としての私たちに戻らないと。

そう思って抱きしめていた由依の手を緩めようとしたら、それを嫌がってもっとくっついてくる由依。


理佐「っ、由依?」
由依「……またちゃんと頑張るから、今だけこうしてたい。
   ……許して?」


上目遣いで、辛そうにそう言われたらもう私は腕に力いっぱい力を込めて抱きしめるしかない。


理佐「…うん、許す。私もまだ由依といたい」
由依「お揃いだねっ…」
理佐「うん、お揃い」


ふふって、身体を離して見つめあって笑って。

本番中で、楽屋周りに関係者の人が少ないのをいいことにこっそりと、数ヶ月ぶりのキスをした。

チュッと、ちっちゃくて軽いものを1回だけ。
お互いの気持ちが溢れないように。



表には出せない関係の私たち。

想いのストッパーも、バードキスまでで、その先を許した事は今までない。だけど、いつかはちゃんと由依と結ばれたいと思ってる。そのいつかまで、あとどれくらいかな。

もしかしたら何年、何十年、何百年とかかるかもしれないけれど、たとえそうだとしても、きっと私はずっと永遠に由依を愛し続けるんだろうな


fin




お読みいただきありがとうございました!

個人的に、理佐さんには由依さんに夢中であって欲しいけれど、仕事の時には仕事モードになる感じでいて欲しくてモデルに集中した場面と甘い場面と書き分けてみました…🫧

ちょっとうまくいかないとところも多かったので、ところどころ後で手は加えるかもしれません🙇‍♂️


おっす。