※リクエスト作品になります。「1人じゃやだ。」の続編です。

ハロウィンの時に、番外編のお話を出させていただきましたが、こちらは続編ストーリーのみのお話になっています🫧

どうぞ



由依side




夏鈴ちゃんと晴れて付き合うことになってから少し時間が過ぎて。付き合いたてのあのウキウキ感も、やっと落ち着くようになってきたこの頃。

私は少しだけ、不満があるのです。


yui : 夏鈴ちゃん、なにしてるの?
yui : 見て〜、今日はこれ食べたよ。夏鈴ちゃんは何食べた?
yui : 今帰ってきたよ。もう寝ちゃってるかな。おやすみ。


全てのメッセージについた既読マーク。それなのに並ぶのは私の言葉ばかり。そう、夏鈴ちゃんってば、連絡返してくれないタイプだったの。

でも、完全なるフルシカトという感じではなくて次の日とかまた会った時に「本読んでました」とか、「昨日は餃子食べてみたんです。気になってたお店あって…」とか、たくさん話してくれる。

夏鈴ちゃんが何を考えているのかわからないと言うのは今に始まったことではないから私もそこまで気にしてないけれど、やっぱり改めて不思議な子だなと再確認した。


そんな中迎えた初デートの日。ちょっとだけお洒落して待ち合わせ場所まで行くと既に夏鈴ちゃんがいて声をかける。


由依「夏鈴ちゃん」


私の声に反応してパッと顔を上げた夏鈴ちゃんは、こっちを向いてにこっと笑った後一眼レフをカシャっと。


由依「わっ…!びっくりした、」
夏鈴「ふふ、ごめんなさい。今日の由依さんが可愛くて」


今さっき撮った写真を見ているのか口角がすごく上がってる夏鈴ちゃん。不意打ちだったし、私はそんないい顔してないと思うんだけど、夏鈴ちゃんが嬉しそうだからいいかなって。


由依「待たせちゃった?」
夏鈴「いえ、私も今さっき着いたところで」
由依「そっか」
夏鈴「じゃあ、行きましょうか」


そう言って、私の一歩前を歩き出す夏鈴ちゃん。付き合ってるのに、手も繋がないし腕も組まない私たち。

私はちょっと人肌恋しく思ったりするけれど、夏鈴ちゃんが楽しそうに前を向いて歩いていく姿がとても愛おしくてそんなことどうでも良くなっちゃう。

足元からウキウキが伝わってくる夏鈴ちゃんの横へ、小走りで並びに行く。

横目でチラっとこちらを見た夏鈴ちゃんは、やっぱりクールに表情はあんまり変わらなかったけど嬉しそうな口をしていた。

ふふ、分かりずらいようで、分かりやすいんだから






それから少し歩き、一緒に見る約束をしていた映画まで少し時間があるからと、カフェに入った私たち。

ただそこでも夏鈴ちゃんはカメラをいじってばかり。

一緒にいれるだけで幸せだけど、ちょっとつまんないの。ってドリンクのストローを回していると急にぽつりと夏鈴ちゃんが呟く。


夏鈴「由依さんは本当に被写体向きですよね」
由依「ありがとう…?」
夏鈴「…んふふ。可愛い」


写真フォルダを見返して1人すごく楽しそうな夏鈴ちゃん。

私に見向きもしないでそればかり。楽しくはない。だけどこの状況だから私は聞けるような気がした。


由依「…夏鈴ちゃん、メッセージ返してくれないのなんで?」
夏鈴「んー、気分ですかね」


気分、か。

返信しなくても良いって思っちゃうほど心を許してくれているのか、ただめんどくさいやつだと思われているのか。

前者がいいけれど、少しだけ傷つく。

そんなことを考えていると夏鈴ちゃんが徐に言葉を付け足す。


夏鈴「……強いて言うなら、由依さんとお話ししたくて」
由依「話?」
夏鈴「、、、その、口実と言うか。話しかけた時何も話題ない   の気まずくて。」


それに、由依さんの声で直接聞きたくて。と続ける夏鈴ちゃんの素直さがわたしの胸をキュンと貫く。

ただ、その余韻に浸っていられたのも数秒。「あっ、もう時間ですね。行きましょう」なんて、時間を確認してパッと手を差し伸べられる。

つかみどころがない。ほんと猫みたい。

でもそんなところを好きになっちゃった私の負け。

細くて真っ白なその手を握る。



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映画を見ている際中、なんとなく話に集中できない。
それはきっと、隣にいるのが夏鈴ちゃんだからで。

2人で決めた映画だけど、はじめに見たいと言い出したのは私だったから夏鈴ちゃんもちゃんと楽しんでくれているか、不安だった。

だから時々夏鈴ちゃんが微笑んでいたのをバレないようこっそり見ては、2人で楽しめていることに私は少しホッとしていた。


由依「楽しかったね」
夏鈴「はい、途中で出て来た猫が由依さんにそっくりで」
由依「えぇ?似てたかなぁ?笑」
夏鈴「ぁ、ほら。その顔がすごく」


思いの外楽しかったのかテンションの高い夏鈴ちゃん。顔を見合わせて微笑み合う。

あぁ、この時間をずっと過ごしていたいなぁ。

そう思う半面、すっかり暗くなってしまった夜空に、別れの時間が近づいてることを実感して。

もうすぐ夏鈴ちゃんとバイバイなんだ。寂しいな。そんな気持ちが静かに私の心に広がり始めた。


その一方で、折角貴重な休み合わせてデートしてるのに、今日は朝からずっとカメラの中の私にばかり夢中な夏鈴ちゃん。

今だって私と話しているのと同時に、何かの写真を愛おしそうに見ている。

そろそろ我慢の限界が来た私は、「こっちを見て」なんて可愛く素直なことは言えないけれど、

大事にカメラを持って写真フォルダを見ている夏鈴ちゃんの両手を押さえ、その唇に短く口付けた。


夏鈴「ゆ、由依さん…?」
由依「……そんなに、カメラの中の私が可愛いの、?」


そういうと、ふんわり笑ってぎゅうと抱きしめられる。


夏鈴「、、、こっちの方が遥かに可愛いですよ」
由依「じゃあ、なんでカメラばっかりなのよっ…」
夏鈴「…ふふ、由依さんが大好きなんです。許してください」


大好きだから、カメラに夢中になってしまう…?

それって、カメラの中の私の方が実際よりも可愛いってことじゃない?

でも、それは違うみたいだし、。

やっぱり不思議な子。

そんなこと思っている私を察したのか、抱きしめられていた腕を離して、頭を触りながら気まずそうにヘラヘラと話し始める夏鈴ちゃん。


夏鈴「由依さん、可愛くて、直接見れないから……、カメラで   レンズ越しなら頑張れるかなって、、//」


ちょっと頬を赤らめて、そんなことを言われたら嬉しいに決まってる。だけど、それだけじゃ満足できない私はワガママを言った。


由依「…直接でも頑張ってよ、」

夏鈴「いやいやいや……、無理ですよ。由依さんどれだけ自分   が美人かわかってますか?」


真っ直ぐ見つめられた瞳がとっても綺麗だと思った。

……私はいつでも、その綺麗なレンズに写りたい。
有象無象なそれじゃなくて、貴女しか持ってないそのレンズに


由依「夏鈴ちゃん、綺麗な瞳してるね」

夏鈴「えっ、?」

由依「私はその目に写りたい」


形あるものはいつかきっと色が褪せたり、どれだけ大切にしていても壊れてしまうでしょ?

そんなことなら、もっと長持ちで、もっと色鮮やかなフォルダに残りたい。

記憶という、とっても素敵なフォルダに。

私より少しだけ背の高い夏鈴ちゃんのほっぺたに手を添える。その嬉しさが隠しきれていない顔は、しばらく私の目に残像が残るほど愛らしかった。


fin




お読みいただきありがとうございました!

最近、自分のお話に飽きを感じています…。
今回もなんとなく上手く展開できなくて、つまらないと感じさせてしまっていたら申し訳ないです。

おっす。