※男性化入ってます
由依side
妊娠していることがわかってからの私は日に日につわりが酷くなる一方だった。
特に吐きづわりが酷くて、何か食べては戻して、食べ物の匂いを嗅いだだけでも戻して…と言う感じ。
そんな中…
理佐「由依…、」
心配そうに背中を摩ってくる理佐に無性に腹が立ってしまった。
もう身体が限界で、なるべく動きたくないのに下手なところを摩られると戻してしまいそうになる。
由依「や、めて……吐くから、、」
理佐「、、、全部出しちゃったら少しは楽になるかもよ、?」
不器用な理佐のことは私が1番よくわかってる。単純に私のことを助けようとしてくれていることもちゃんと知ってる。でも、もう心に余裕がなくて優しい言葉を返してあげられなかった。
由依「そんな、簡単に言わないで……吐くのだって辛いんだっ てば、」
理佐「でも、、」
由依「理佐にはわからないよっ、、」
言った後すぐ理佐のことを深く傷つけてしまったことを悟る。そんなつもりはなかったんだと弁解する為に私が償いの言葉をかけようとした時にはもう遅かった。
由依「ぁ、ごめっ……。違う、そういう意味じゃなくて、」
理佐「、、、そっか、ごめんね、」
静かに寝室を出ていく理佐の背中を目で追ったはいいけど、私の体にはもう理佐を追いかける元気はなかった。
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それからと言うもの、一応メッセージアプリを通してごめんねとは言い合ったけれど。私たちの目に見えない距離はそのまま。
いつかは腹を割って2人で話す時間を作らなければいけないとはわかってるけれど。お互いぎこちなくてタイミングの読めない日々が続いていた。
そんな中のこと。
「小林さん、社長からの伝言です。」
由依「…は、はぁ?」
普段通りオフィスで仕事をこなしている際中、普段は社長の隣で秘書をしている方が珍しく私の元に来てこう言った。
「そこの通りにあるお店で、予約していたスーツを取りに行ってほしいと。」
社長の秘書の方から正方形の付箋を見せてもらう。そこには服屋の住所と予約名が書かれてた。
「小林さんにはお身体を大事にして欲しいので、私が行こうかと何度も掛け合ってみたのですが、どうしても小林さんに行って欲しいとおっしゃるので……。やっぱり私が代わりに行ってきましょうか、、、?」
体調を気遣ってくれる秘書の方だったけれど、いつもは寛大な理佐がこだわるのにはきっとなにか理由があると思って。
由依「あー、、いや。私行きますよ。すぐそこのお店ですよ
ね?」
「はい。本当に1人で大丈夫ですか、?」
由依「大丈夫です^ ^」
「そうですか。では、くれぐれもお気をつけくださいね」
理佐からなんて珍しい。
普段、会社では公私混同しない為に極力接しないのに。
そんなことを思って昼休憩も兼ねて会社を出た。
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由依「…すみません、予約していた渡邉ですが」
年代物のレコードがかかっている店内はとっても落ち着いた雰囲気で、理佐の好みによくあってるお店だなと思った。
理佐の名前を言えばすぐに女性の落ち着いた雰囲気の店員さんはわかってくれて、バックヤードからおそらく理佐が買ったものと思われるものを持ってきてくれたんだけど…
由依「えっと、、これって…」
目の前に出されたものは、レディースのゆるりとしたマタニティスーツだった。状況を理解できない私を見て、何かを知っていそうな顔をした店員さんが話してくれる。
「渡邉様から、“ 奥様に ”とお聞きしています。」
理佐から、私に…?誕生日でもないし、何かの記念日でもなかったはずなんだけど…。ピンとこない顔を向けると、優しい口調で、話し始める店員さん。
「渡邉様はありがたいことに、度々ウチの店で服を買って下さるのですが、毎回見にきては、奥様のお話ばかりなされて女性の服をご覧になるんですよ。」
由依「……なんか、照れますね、」
私の知らない理佐の一面を聞いて、ちょっと気恥ずかしい。そんな私に優しく微笑んだ店員さんは続ける。
「いつも奥様の話を話している時は本当に幸せな顔をなさるので、どんな素敵な方なんだろうと気になっていたのですが、想像以上でした。」
「……首を突っ込むようで、大変恐縮ですが、何か、あったん ですよね、?」
由依「えっ、?」
「…これを買われていく時に、渡邉様が仰ったんです。
自分は不器用で、鈍感だから、よく奥様を怒らせてしまうん だと。…奥様は自分には勿体無いくらいだと。」
理佐、そんなこと思ってるんだ。よく、愛の言葉をくれる理佐だけど、案外そう言う気持ちを話してくれることは少なかったりするから、ちょっとだけ嬉しい。
そして、どうして理佐がこれを買って、私に取りにこさせたのか、その理由もわかった気がする。だから私もその気持ちに向き合って、そろそろ正直にならないとと思った。
由依「あの、これ着て帰ってもいいですか…?」
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ガチャ…
会社に戻ってきて、普段社員はあまり行くことのない社長室へと足を運んだ。
扉が開いて振り向いた、私にこの服を贈って来た張本人は目を丸くさせる。
そんな旦那に向かって、本当は怒ってないけれどちょっと怒ったような口を聞いてみるんだ。
由依「……仕事中に何、これは?」
理佐「……っ、ごめん、邪魔した、?」
由依「……嬉しかったけどさ、」
理佐「…そっか、良かった」
久しぶりにまともに会話するものだから、理佐がとってもぎこちない。他の社員には至って普通だったのに。
……でも、理佐にとって私が特別だって言う理由なような気もするから悪い気はしない。
気まずい沈黙が流れる中、おずおずと理佐は私の聞きたかったことを自分から話し出す。
理佐「…あの、その服のことなんだけど……俺、何にもしてあ げられてないなって前から思ってて…、自分の子供育て てもらってるのに、辛いの助けてあげられないか ら………だから他のやり方で、少しでも由依の助けにな りたくて、由依のストレス減ればいいなって思って、」
由依「ストレス?」
理佐「……毎朝よく、ズボンが入らないって言ってるか ら、、」
私がまだ理佐のことを怒っているとでも思っているのか、必死の弁解に少し笑いそうになった。でもそれだけ思ってくれてることが嬉しくて。
最近、私は自分のことで精一杯で理佐のことまで気遣ってる余裕なんてなかったのに、この人はどうしていつもこう、どんな時でも私のことをよく見てくれるんだろう。
ただただ嬉しくて口角が緩んだ。
そしてやっと、私が怒ってないことに気づいた理佐はちょっと嬉しそうに、私を優しい目で見つめて、柔らかく笑う。
理佐「可愛いよ、由依。」
理佐からそう言われた途端ブワッと目頭が熱くなって涙が出てきた。
これは、ホルモンのバランスが乱れて情緒不安定になっているだけ。そう言い聞かせても止まることを知らない。
理佐「えぇ〜、何で泣いちゃうの〜(笑)喜んで欲しかった
のに。」
由依「ばかっ、喜んでるもん…(泣)」
理佐「…ごめんね、何にもしてあげられなくて。こんな俺で」
由依「うん。辛く当たってごめん、私も…」
理佐「うん、大丈夫だよ」
あの日からと言うもの、あんまり理佐に話聞いてもらう時間も取れてなかったから、久々の温もりが胸に染み渡る。
そうだ、私が好きになった理佐はこう言う人だった。
確かにちょっと不器用だし、鈍感だし、女の子の扱い方あんまりわかってないな〜なんて、思うことだってあるけれど。
いつでも、相手のことをよく考えて誰かのために思いを巡らせて、一生懸命になるような、そんな人。その矢印の先が私なら特に。
そして、少し落ち着いた頃に尋ねる。
由依「あそこ別に安価な訳じゃないし、高かったでしょ…?」
理佐「あー……いくらだったかな。忘れちゃったや(笑)」
由依「ええっ?(笑)」
理佐「まぁ、とにかく、そんなの気にしないでいいの。素直に ありがとうって貰ってくれて可愛い笑顔見せてくれれば それでチャラ」
顔を上げて優しく涙を拭いてくれる理佐が最高にかっこいい。
それがムカつく。いつもは子供みたいに無邪気な人なのに、いざという時そうやってかっこいい顔できるところ、ムカつく。
そして、そんな天邪鬼な私の目を見つめて理佐は調子のいいことを言うんだ。
理佐「こんなことしかできないけど、これからも俺と一緒にい てくれませんか。」
なんで答えたのか、そんなの1つに決まってる。
To be continued…
お読みいただきありがとうございました!
「上司に恋するのも悪くはないかも」シリーズ、長きにわたって投稿してきましたが遂に次回最終話です…✨
おっす。