※リクエスト作品になります。男性化です。



由依side



はぁ、ちょっと気持ち悪いかも…。出社して早々、オフィスのデスクの下で、誰にもバレないようにお腹を摩る。

最近どうにも身体の調子が悪い。熱っぽい日があったり、今みたいに気分の悪い感じが続いたり。原因はわからないけれど、きっと風邪でも引いてるのかなと勝手に思っている。

理佐は過保護だから「心配で俺、夜しか寝れないから病院に早く行って!」と何回も行ってくるけれど別に大したことじゃないし、躊躇している。

病院だってタダで見てくれるわけじゃないからね。

でも、どうしよう。凄く気持ち悪い今はなんとか澄ました顔してデスクでパソコンをいじっているけど治る気配もなければ、もう我慢の限界。

私は体調が良くないと顔に出るタイプだから、このまま強がっていたら部下たちの厄介になりそうだし。仕方ないから資料室にでも行って一旦1人で休憩しよう。

私は席を立ってなるべく早く廊下を歩いた。その途中、社長…まぁ旦那と目があったけど気付かれるんじゃないかと思って咄嗟に逸らした。

そしてついた資料室。適当にあった椅子を引っ張ってきて腰をかけると、どっと疲労感が押し寄せてきた。

はぁ、やっと気が抜ける…。そう思っていたのに、不運にもガチャっと扉の開く音がして誰か入ってきたみたい。

こんなだらけた姿見られちゃまずいと思って、反射的に私はスッと背筋を伸ばした。でもそんなことする必要本当はなかったみたいで。


由依「っ、ぁ、社長…か、。」


キョロキョロと入り口から顔を見せるのは社長だった。そして、私のことを見つけるとちょっと真剣な顔をして近づいてくる。


理佐「由依、」
由依「…ごめん、すぐ仕事戻る、。」
理佐「なんで。仕事できる状態じゃないでしょ、今。」


怒られちゃった。まさか理佐が見透かしていたなんて思ってもなかった。


由依「いやいや、平気だよ。なんともないから」
理佐「………これ、社長命令。休むのも仕事のうち。」


そう言うとぽんっと大きな手のひらを頭の上に置かれる。なんだか戦力外通告をされたみたいで、自分の体調管理すらままならない自分が悔しかった。


理佐「なんか熱くないか、小林。」


そう言って私を立たせて抱きついてくる。それに対して私は理佐を押し返すんだけどなかなか動いてくれない理佐。

ねぇ、誰かに見られたらどうするつもりなのっ。私の体調辛いの知ってるなら離して…。本当は立ってるのも辛いくらい精一杯なんだから構わないで、、、。


由依「理佐っ、離して…。怒るよ。」
理佐「怒ってもいいから、今すぐ病院行ってこい。仕事なら
   大丈夫だから。」
由依「…平気だってば、風邪薬飲むから、」


そう言っても離してくれないからイヤイヤと反抗すると、理佐は本気で怒ったみたい。私のことを抱えてどこかへ連れて行く。


理佐「んしょっ、」
由依「ちょっ…!馬鹿、誰かに見られたらどうすんの…!」
理佐「由依が観念しないから仕方ないだろ」


それからと言うもの、体格差のある理佐にどれだけ私が抵抗したってたかが知れていて、会社のエントランスまで連れてこられてしまった。

幸い今は、営業時間内で誰にもきっと見られていないはず。……まぁ、清掃の方には多少二度見はされたけど、


理佐「……はい。病院行っておいで。」
由依「、、、だから大丈夫だっt…」
理佐「病院行くまで家に上げてあげない。わかった?」


そこまで言われたら、流石に仕方なく今日は病院に行くしかなかった。

理佐がタクシーを呼んでくれて、お金を渡すと同時に行き先を運転手の方へ伝える。


理佐「櫻坂総合病院まで。」
「はい、了解しました」
理佐「……じゃあ、ちゃんと診て貰うんだよ?」
由依「うん。、」


ドアを閉める前に最後に少しだけ頭を撫でてくれて理佐の優しい笑顔に私の気持ちも少しだけ落ち着く。

もぅ、そんな過剰にならなくていいのに、、。軽い風邪症状だもん。

この時の私は本気でそう思っていた。まさか、あんな事になっていたなんて思いもしてない。



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「心肺が確認できました。おめでとうございます。妊娠6週目ですね」
由依「ほ…?」


病院についてとりあえず外来に行ってみると、すぐ産婦人科の方に通され色々検査をした。その結果がなんと、“ 妊娠 ”だと。

思ってもいなかったことに、私の頭はまだついて来れてない。そんな中でも次々と話は進んでいってしまう。


「少し前に生理のような出血がなかったですか?」
由依「えっと…ぁ、2日間くらいありました、、けど元々周期も
   乱れ気味なので、てっきり生理なのかと…。」


混乱した頭で何とか答える私に、女性の先生は「それが1つのサインだったんですよ」と優しく微笑む。

そうか、、そうだったんだ、。私、今お腹に赤ちゃんいるんだ…。

その後も忙しいだろうに予約もしてない私に対して丁寧な説明をしてくれたんだけど、実感が湧かなくて半分他人の話を聞いているみたいでよくわからなかった。

そして、そのまま気づけば私は家の玄関に立っている。

はぁ……理佐が帰ってきたらなんて話そうかなぁ。理由もなく重い足取りで扉を開けるとそこにはいるはずない人がいた。


由依「ただいま…」
理佐「おかえりー」
由依「えっ、なんでいるの?!仕事どうしたの!」
理佐「んー。今日なんか会社にいても落ち着かなくて在宅ワー
   クにする事にした。」


呑気に在宅ワークって…(笑)この自由な感じが理佐らしいとも思ったけど、きっとその落ち着かない原因が私なんだと知っている。


由依「そ、そうなんだ…」
理佐「それで?なんか言うことは?」
由依「、、、ん?」
理佐「結果。どうだったの?」


えー、ここで言う感じ…?目の前で仁王立ちしている理佐はいかにも真剣な様子でまるで動く気配はない。

、、、ちゃんと中で話したかったけど、話すまで入れてくれなさそうだし…仕方ない、言うしかないのか。静かに腹を括った。


由依「病院ついて、外来行ったらすぐ産婦人科に通されて検査
   いっぱいして……それで、」
理佐「それで?」
由依「…妊娠してた」


後から思えば何もそんな不安に思わなくてもって感じなんだけど、この時の私の感情と言ったらもう漠然とした不安に駆られていて。口籠もった矢先、歯切れ悪くそう告げる。

すると、黙って理佐が抱きしめてきた。


理佐「赤ちゃんできたんだ」
由依「ん、そう。そうみたい」
理佐「嬉しくないの?」
由依「えっ…いや嬉しい。嬉しいんだけど。まだ実感湧かない
   って言うか。自分のことと思えなくて、、、」


素直に今の気持ちを口に出すと、理佐が顔を合わせてきて私が惚れた時から少し皺の増えた笑顔でくしゃっと笑った。


理佐「んふふ。嬉しいねっ、由依♪」
由依「…うん」
理佐「むぅ、ほらもっと喜ぶの!嬉しいね!由依!」
由依「……ふふ。そうだね理佐」


不安げな気持ちをそのまま返事に含んでしまう私に、良く言えば楽観的、悪く言えば何にも考えてないような理佐は無邪気に喜びを強要してくる。

その姿がなんだかおかしくて、フッと肩の力が抜けて、私の口角が上がる。この人は本当に、どこまでも私のことを理解している人だ。

それからリビングに上がってソファーに座れば、普段のひっつき虫を2割り増しにしたような理佐が隣にくる。


由依「…ちょっ、近いって」
理佐「やぁだ、この距離でいたい。」
由依「もう、鬱陶しいから少し離れて…!」


半分私の上に座るようにしてくるもんだから堪らなくなって声を上げるけど、構わず私にぴったりくっついてくる理佐。

はぁ、本当。産んだ覚えのない子供にすごく手がかかる。


理佐「やぁっ、由依ちゃ〜ん…!」
由依「こっち来んな、馬鹿…!熱いっての…!」
理佐「やだやだ、ずっと一緒にいたい…」ウルウル


その後もこの日は理佐からのラブコールが酷くて疲れたけど、これだけ大歓迎してくれたお陰で最初の不安はもうほとんどなくなった。

……貴方と結婚してよかった。ありがとう、理佐。



to be continued…




お読みいただきありがとうございました!

どこで切るのか迷ったのですが、「続きを待ってます!」と言ってくださる方が多数いらっしゃったので、早めに投稿できるところで切らしていただきます。ご要望ありがとうございます🙇‍♂️

この続きもそこまで凝ったお話ではないので早めに投稿できるように頑張ります🫧

秋も前半が終わろうとしているのにまだまだ暑い日が続いていますね…。皆様、体調に気をつけてお過ごしください😌


それでは、おっす。