由依side
突然だけど、私はちょっと前から気になっていることがある。
…私、年齢に対してちょっと子供っぽすぎない?
大好きな飲み物は決まってココアだし、家事だって理佐と暮らしてるせいで私が手を出すところがなくて放置状態。
でもこれっていつかは直さないといけない気がして。
飲み物はともかく、「え、そんなのもできないの」なんて思われる人にならない為にちゃんとすることはしておかないとって思う。
だから、私は今日から年相応の大人になる為に努力することを宣言します…!
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お互いアウトドアな性格じゃない私たちは、家にいるとき大体決まって映画鑑賞になる。
そして、いつも通り理佐が持ってきてくれたココアとブラックコーヒー。
優しい声で「はい」と私の前に置かれたココアを、今日は理佐のものと交換する。
理佐「ん?由依、コーヒーの気分なの?」
由依「…うん。」
理佐「そう、、。ミルク何個?それともお砂糖入れる?」
由依「え、」
理佐「えっ?」
自分は飲む時何もいれないまま飲む癖して、私が飲むと言ったらすぐ色んな甘味料を入れてこようとする理佐にちょっと驚きの声を上げると、理佐もポカンとして少しの間2人して間抜けな顔を見せ合う。
由依「ミルクもお砂糖も要らない。ゼロ。」
理佐「ええっ…大丈夫?それ、エスプレッソだよ?普通のより
も苦いの強いよ?」
由依飲めないでしょう、その言葉こそ言わなかった理佐だけど結構寸前まで言いたい放題言われてちょっと傷つく私。
大丈夫、もう大人だもん。ブラックコーヒーくらい飲めないと。
心配過剰な理佐を横に、ごくっと一口飲み込む。
由依「うわぁ〜……」
理佐「、、、ふふっ。だから言ったのに。(笑)ほら、
ココアにしな?」
想像の何倍も苦かった。微笑む理佐にさっき交換したものを戻されてしまう。
ついでにお口直しにココアを飲んでいたら、小さい子を扱うように頭を撫でられて。
……ちょっと、コーヒーはまた今度にしてみよう。
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コーヒーは飲めなかったけど、それは舌の問題。何回も練習すればきっと飲めるようになるはず。
でも料理くらいなら切って炒めてお皿乗せるだけだし、練習も何も、口に入れて仕舞えば同じなんだ。私にもできる。
そう意気込んで、スーパーで買ってきた食材を袋から出している理佐に声をかけた。
由依「ねぇ、理佐」
理佐「ん〜?」
由依「今日は私がご飯作る」
そう言うと理佐は一回こっちを向いて私に優しく微笑む。
いつもならその面倒見の良さに甘えてしまうけれど、今日はそれくらいじゃ引き下がらないって決めてるもん。
理佐「え?いいよ、私が作るから由依は好きなことしてな?」
由依「それはこっちの台詞。理佐こそゆっくりしてて!」
理佐「ええっ、だって由依、昔寮暮らしだった時も料理苦手だ からってみんなに任せっきりだったじゃん(笑)」
いたいところを突かれてぐうの音も出ない。
由依「あれは、、、私だけじゃなかったし、平手とかも全然や ってなかったからっ、。しかも、理佐だって最初はそう だったじゃん…!」
理佐「私は別にやってなくてもできるからさ、(笑)」
由依「私だって今はもうできるもん」
そんな大見得張って始めたはいいけど、
由依「いっ、」
理佐「ん?あ、もう言わんこっちゃない(笑)」
シュッと軽く包丁で指を切ってしまった。ポタポタと垂れる私の血を見て理佐は慌てる様子もなく優しく手を見てくれる。
理佐「ちょっと見せて。他のところは?大丈夫?怪我してな い?」
由依「…平気」
理佐「ん、良かった。ここもそんな深い傷じゃなさそうだね。
ちょっとここ握って待ってな色々持ってくるから。」
お手伝いしたいのに、1人じゃ何にもできなくて、なんなら理佐の脚引っ張ってばかり。今まで理佐に甘えすぎてたんだなと思った。
そして救急箱を持ってきた理佐が、私が止血していた指に絆創膏を貼ってくれる。
由依「ごめん、」
理佐「…ふふっ。大丈夫、そんな落ち込まないの。」
私のテンションが駄々下がりなもんだから、理佐は考えて、寝室の掃除をしてきて欲しいと言ってくれた。
綺麗好きな理佐がいるこの家は、私が掃除なんてしなくとも常にピカピカ。汚れてる場所ないかなーって思って見渡しているとごちゃっとした棚を見つける。
あ、ここ片付けよう。
取り敢えず全部もの出すか。なんて、取り掛かったけど懐かしい物がいっぱい出てきて、それを見て物思いに更けていたら気づくと入り口に理佐が立っていた。
理佐「ふふ、やっぱり進んでない。」
由依「っ、あ、理佐」
理佐「ご飯できたよ。それ後で私が片付けるから一緒に食べよ
う。」
“私が片付けるから”その言葉に胸がチクチク痛んだ。
今日の初めは、私はやらないだけで本当はできるんだと自分で思っていたけれど。現実はそうじゃなかった。やってもできないし、なんなら理佐の手間増やして迷惑ばかりかけてる。
そんな事実を目の当たりにしたらショックと理佐への罪悪感でご飯を食べる箸すら止まってしまった。
そんな私を見兼ねて理佐はご飯を中断して、一回話をしようとソファーに移動する。
抵抗する理由もなく私はその理佐の後をついて行った。
理佐「、、、今日は背伸びしたい気分だったの由依ちゃん。」
理佐の膝に跨って抱きつけば優しい声でそんなこと聞かれる。
由依「……私、理佐がいないと何もできないから、」
理佐「うん。」
由依「もう24歳で、大人で。なのに、全然子供と変わらないか
ら、そろそろ大人にならないとって思って…」
そう思って始めたことを思い出しては何も上手くいってなくて涙が出てきそう。理佐の肩に口を埋めたら優しく背中を摩られて、その雰囲気に流されて泣いていた。
理佐「……由依さ、あんまり年上舐めちゃダメだよ。」
由依「ん、?」
理佐「由依は確かに成人してるし、20歳超えてるし大人には
なったけど。私よりまだ子供なんだよ。赤ちゃんなの。
だからできないことは私に任せておけばいいし、余計な
こと考えないで黙って甘えてくれてればいいの。」
それに、と理佐は続ける。
理佐「さっき由依もう24歳って言ったけど、普通24って言った らまだまだ社会人になりたてなんだから。何もできなく ていいの。それが当たり前なの。」
「この業界にいると感覚おかしくなっちゃうよね」って優しく笑って頭を撫でられたら一気に安心してあったかい言葉が嬉しくて涙が溢れる。
理佐「……んふふ、泣き虫だね。でもそんな由依でいいよ。何 歳になっても、どれだけ由依が大人になったとしても、
私の前ではずっと、甘えん坊で泣き虫な赤ちゃんな由依 のままでいい。」
どんな由依でも大好き。極め付けにそんな言葉を言ってくる理佐は私より1つ歳上ってだけなのにずるいと思った。
由依「子供扱い…しないで、」グスッ
理佐「ふふっ、はいはい。ごめんね。」
由依「由依だって早く大人になるし、」
理佐「じゃあ私は追いついて来てくれるの待ってるね。」
本当、何言っても理佐の手玉に取られる。でもそんな理佐が、本当の大人で、歳上の人なんだって感じた。
理佐side
私の彼女の由依は、たまに突拍子もないことを始めることがある。でもそれは、私からしてみたら、好奇心に駆られて冒険に出る子供みたいに可愛い存在で。
今日だって、流石に包丁で指切った時は内心焦ったけど、由依の思惑が見え見えで気づいてないふりするのが大変だった。
理佐「…なんでこんな可愛いんだろうなぁ〜、、、(笑)」
サラサラと、私より先に眠っちゃった由依の頭を撫でる。私の愛しい人は、寝顔まで赤ちゃん。
そんな寝顔を見て、今日由依が言っていた早く大人になりたいと言う言葉を思い返す。
理佐「…大人ねぇ。ふふ、なれるかなぁ、由依に。(笑)」
言葉ではそう言うけど、私の思惑はそんな可愛い物じゃない。一生赤ちゃんでいてって言う、すごく重たいワガママ。
そんなことを考えながら私はベッドの下で1人、お酒を飲みつつ星を見上げる。
聖なる夜に、星に願いを。
___________神様、私から永遠と、
この可愛い由依を取り上げないでください。
fin
お読みありがとうございました。
だいぶ前の下書きで、ふと思い出したのであげてみました。
意外とこのお話好きな読者様多そうだなと思いまして🤭
そして私ごとですが、4thアリーナツアーの座席は2階のスタンド席でした✨特に読者様と会ったりする機会を設ける予定などはありませんが一緒に参加される方、一緒に楽しみましょう^ ^
おっす。