※リクエスト作品になります。



由依side



あるmvの撮影期間のこと。

みんな今回のシングルもクタクタになるまで踊って、体力にはそこそこ自信のある私も舞台との両立をしてる関係で流石に満身創痍。

部屋の前でみんなと別れてからしばらく、スーツケースを開けたり、荷物を整理したりした後。「やっと座れる」そんなことを思った矢先。

ドアのノック音が鳴って開けてみれば天ちゃん、夏鈴ちゃん、そしてひかるがいた。

その悪戯げしかない笑顔を見れば何も言われなくてもわかる。遊びに来たんだ、先輩が疲れていると言うのに。


天 「お邪魔しまーす!」
由依「ええっ、ちょっと何しに来たの?」
夏鈴「すいません、由依さん。天がどうしてもって言うもん    で」
ひかる「言うもんで…」


私のお出迎えもそこそこに、天ちゃんは押し入って来て私の部屋をくまなく探索。それに続いて夏鈴ちゃんやひかるもどさくさに紛れるもんだから、呆れる。


由依「ねぇ、ちょっと。私、一応先輩ね?そんな人のベッドに
   上がるってどうなのよ。」
天 「ふふ。すみません。由依さんの匂いするから。」


私は別に気にしない主義だからいいけど、躾としてこれくらいは既成事実として言っておかないと。じゃないと、先輩、後輩の境界線がいつの日かきっと曖昧になってしまう。

そんなこと考えていると、天ちゃんが暴れている横で、私のベッドに横になってじっと丸まっているひかる。いつもの天ちゃんにつられるお調子者の元気が見えないからちょっと心配でそっと脇腹の辺りに手を添えて声をかける。


由依「ひかる?」
森田「…」
由依「え、ちょっと。寝てるの?」
夏鈴「あー、かもしれないですね。」
由依「えぇ…もう…」


本当、自由人な後輩たちに呆れる。やってることは完全に車上荒らしだよ。折角、みんなが気を遣ってくれて個室にしてくれた意味がまるでなくなった。

仕方ない、起きたら帰ってもらうことにしようか。正直言えばひかるくらい、居てもなんの支障もない。


由依「流石に3人とも私のベッドで寝るなんてやめてよねー。
   頼むよ?」
天 「え〜由依さんのケチィ〜、ひかるばっかり特別扱い。」
由依「はいはい、由依さん今日疲れてるの。ちょっとしたら
   お部屋戻って2人も早く寝なね。明日も早いんだから」
夏鈴「ここがいいです。」
由依「夏鈴ちゃんまで……。私に休みの時間はないわけ?」


お手上げだよって意味でそういうと、ベッドから立った天ちゃんは元気に抱きついてくる。


天 「ふふ。嘘ですよ〜。由依さんのこと大好きなんで、大人   しく夏鈴とハウスします。ちゃんと休んでくださいね    ♪」


それで元気になったらまた遊んでください、なんて言う天ちゃんは本当調子がいい。そのまま夏鈴ちゃんの手を引っ張って、ひと足先に私の部屋を後にするから、パラパラと手を振っておやすみとだけ返しておいた。

……よし、元気な子供たちもいなくなったことだし私はお風呂にでも入ろうかな。そう思ってスーツケースを開いていると後ろからか細い声が。


ひかる「由依さん」
由依「…ん?ひかる、起きたの?」


そう聞くと、フリフリと頭を横に振るひかる。


ひかる「元々寝てないです………由依さんと2人きりになりた     くて、寝たふりしてました。」
由依「そっか、」


ひかるらしくない事を言って、近づいた私におでこをぐりぐりとすりつけてくる。

ツアーも後半だし、ライブになるとお客さんを楽しませたいと、誰よりも演出に気合いの入るひかるのことだからちょっと燃料切れしちゃったのかな。

珍しく甘えん坊な様子のひかるが、ちょっとだけ心配で頭や背中を撫でてあげていると、ひかるはなにやら疲れてる顔して言った。


ひかる「…帰ります」
由依「そう?さっきはあぁ言ったけど、別にここで寝てもいい   よ?」
ひかる「いえ、由依さん疲れてると思いますから、」


落ち着いてきて、徐々にいつものひかるに戻ってきたのか消極的におずおずと私のベッドから立つひかる。そんな帰ろうとするひかるのことを私は後ろから抱きしめた。


ひかる「わっ、由依さん…?」
由依「こら。強がんないの。ここで寝な。」
ひかる「っ、でも、」
由依「後輩なんだから、大人しく先輩に甘えておきなさい。
   変な気遣わないの。」


私がそういい終わると、みるみるうちにまた涙が溢れてきて「由依さんっ…!」なんて言って可愛らしく抱きついてくる。


ひかる「由依さん〜(泣)」
由依「ふふ。どうしたのー、ひかるちゃん」
ひかる「寂しいです〜…、早く帰ってきてください…(泣)」
由依「ごめんね。もう少し待って」


舞台のお仕事が入ってから、駄々を捏ねることが多くなったとは思ってたけどまさか寂しいとひかるが思ってるなんて。驚きと嬉しさで胸がいっぱいになる。


ひかる「あとどれくらいですか?何回寝たら由依さん帰ってき    ますか?」
由依「ん〜?(笑)どれくらいだろうなぁ。まだもう少しかか   ると思うよ」
ひかる「なるはやでお願いします。」


そうやって甘えてくるひかるの感じが懐かしかった。入って来た時は、照れながら後ろを可愛くついて来たものだけれど。

大人になるにつれて当たり前だけど過度な甘えん坊は減っていったひかる。だから、今のひかるが私には余計に可愛くて頭を撫でてみたり、頬を触ってみたり、包み込んでみたり。


ひかる「大好き由依さん。」
由依「ん、ありがとう」
ひかる「…」
由依「ん?どうした?」
ひかる「……由依さんからは?」ウルウル
由依「……どうしよっかなぁ。」
ひかる「えぇっ、由依さん…!」
由依「ふふ。大好きだよ。これ以上は理佐に怒られちゃうから
   ダメね」
ひかる「ぶー。いいなぁ理佐さんは。由依さんが彼女なんて」


ふふっ。可愛いひかるに戻ってきた。


由依「ふふっ、理佐に宣戦布告?(笑)」
ひかる「なわけ。私殺されちゃいますよ。」
由依「確かに(笑)」


そういうと、だから今だけ独り占めさせてください!って背伸びしてまで首にくっついてくるこのくっつき虫。可愛いやつめ。疲れた体が癒される。

ひかるのためにも早めにグループ活動に戻らないとな。腕の中でスヤスヤと眠るひかるの顔を見て、そんなことを思った夜だった。



fin



お読みいただきありがとうございました!

「頑張って欲しいけどそれより寂しい」の森林バージョンで書かせていただきました🫧

2人の間に流れる特別可愛い雰囲気が上手く書けていたら嬉しいなと思います☺️

また最近マシュマロ飛ばしてくれる方が増えていてとても嬉しいです…!

Twitterで少しお話ししましたが、1年以上書き手をしているのにも関わらずまだまだ読者様の需要がなかなか掴めないところがありまして…

「〇〇が好きです」とか「こう言うお話書いて欲しいです」とか言う声は書き手活動をするにあたっての道標になっています😌

なので、これからも気が向いた時で大丈夫なので、定期的にお話ししに来てくださるとありがたいなと思っています🙇‍♂️

おっす。