※リクエスト作品になります。
 遅くなって申し訳ありません🙇‍♂️



理佐side



由依『ふふっ、なぁに、理佐。』


あの言葉と由依さんの笑顔が今でも忘れられない。
一度終わった私の人生が再スタートしたあの日のこと全部。

久しぶりに名前を呼んでもらえて、言葉には表せないような気持ちになった。

専門家の間ではαの人は、人を惹きつける特有のフェロモンを常に放っていると言う説も度々飛び交っているという噂は聞いたことあったけどその説を私が信じたのは、この時が初めてだった。

_____それくらい、私が嫌いなαの部類にいる由依さんは、私にとって素敵に見える。

収容所にいた時は名前で呼ばれることなんてもちろんなくて、「0727番」それだけがずっと私のことを表していた。あだ名なんてない。

Ω収容所の中で自分の名前を教えるか教えないかは、然程決められていなかったけど、今思えば、私は収容所の中で本当の名前を口外したことなんてなかった。

自分の人生なんて、あの日、Ωとわかって収容所に連れて行かれたあの日に全て諦めていたし、大きすぎるショックを負った私はずっと、あの私を裏切った人たちが呼んでいた名前で呼んでもらいたいという気持ちになれなかった。

だけど、由依さんに呼ばれてから、やっぱり名前で呼ばれるのっていいなって思い始めて。

1番最初のあの時は、呼ばれた瞬間嫌な鳥肌が立ちもしたけど「この人は私のこと何にも知らないんだから」と思ったら仕方なく私が下がるしかなくて。

何にも知らないからってこの人はもう、…(笑)苦笑の中で素直に思ったことだった。


それから私は密かに自分の心に決めたんだ。私、この人の為に頑張ろうって。

恥ずかしい話、貰い手が悪かったらまっずいご飯でも出してお腹下させてやろうかなんて反抗的な考えを由依さんと出会う直前まで握っていた私。

だけど、Ωだなんて気にしないで分け隔てなく、なんなら優しく愛を持って接してくれる由依さんの姿を見て、こんな人に悪く当たったら私の方がバチが当たるような気がした。

___________私が思ってるより、世界は悪いことばかりじゃないのかもしれないって気づき始めた。

だから由依さんの話には笑顔で耳を傾けるし、私で力に慣れているはずないんだけど仕事の相談事だって真摯にのってあげる。もちろんご飯だって毎日私ができる精一杯の美味しいものを。家事は丁寧に。


由依さんじゃなかったらきっとありえない。悪態ついて初日で追い出される私の姿が安易に想像できることが不思議ではないくらい。

私の中で由依さんはなんか特別な存在だから。
それだけが私の原動力。

こんなこと、つい数週間前の私に伝えたりなんかしたらきっと、「将来の私はとうとう頭のネジが外れてしまうのか」とでも思ってしまうだろうなって。

そこまで考えた時ソファーでさっきからパソコンと睨めっこしていた由依さんが気の抜けた声を出した。


由依「ん〜〜、理佐ぁ疲れた。」
理佐「お仕事、お疲れ様です。肩でも揉みますか?」
由依「んーん。肩は凝ってない。大丈夫。」


ゆっくり首を横に振る由依さんの目は確かにちょっとお疲れ気味のように見えて少し心配になる。一緒に暮らし始めてまだちょっとしか経ってない私たちけど、それでも過労だとわかるくらい最近は忙しそうだった。

何か力になってあげたいけれど、αの人にΩがどれだけ費やしたってできることはきっと限られてる。だからせめて身体を労わるお手伝いはしたいと思って、肩を揉むかと尋ねると拒否されてしまった。


理佐「そうですか…では、足?」
由依「ちがうよ。」
理佐「ぇ、んと、じゃあ、、手?」
由依「手も疲れてないよ。」


由依さんに違う違うと言われるたび焦ってしまって頭が回らない。思いつく限り言ってみたけどそれも全部違うみたいで、とうとう私は黙り込んでしまった。

ん〜……後は、背中とか腰とか…。そもそもマッサージをして欲しい訳じゃないのかも。そりゃそうか、素人のこんなんに適当に指圧されるよりも少しお金かかるけどプロの人にやってもらった方がいいよね、。

それじゃあ由依さんは今私に何を望んでいるんだろう。お腹空いているとか?お風呂に入りたいとか?ぇ、もしかして私を収容所に返したいとか…?

……そんなのやだな、私の意見なんてきっと反映されないけど、。

1人で悲しみに包まれそうになった時、急に腕が引っ張られて構えていなかった私はそのまま由依さんの膝の上にストンッと座らされて、「ぎゅ〜♪」という声と共に抱き潰された。


理佐「わっ…?!えっ、ちょっと、、」
由依「ん〜!癒されるー。理佐可愛すぎる。」
理佐「きゅ、急になんですかっ、…///」


私の頭にすりすりと擦り付けてくる由依さん。なんだかワンちゃんに懐かれているのに似ていて嬉しく思ったけど、素直に喜ぶことができない。

由依さんに出会ってからずっと、由依さんの愛感じる行動には感動させられてばかりだったけど反面つらくもあった。

こんなに愛されていいのかなって。その愛を受け取って仕舞えば、私また傷つくんじゃないかなって。

人間の愛は、どんなに頑丈に見えても意外と些細なことでヒビが入って綻んで、瞬く間に消え失せてしまうことを知っているから、心が勝手に自衛している。

…………いいの、かな。期待しても、

その答えを求めて、やっと腕を離してくれた由依さんの方を見れば不意に目が合ってしまった。

こんな体勢だから顔もいつになく近くて、由依さんのその宝石のような綺麗な目から目が離せない。どうしようって私が固まっているうちに、由依さんの綺麗な顔がだんだんとゆっくり近づいてくる。

あれ、私このまま由依さんと……。

由依さんの顔が、私の前髪の圏内に入ってきた頃ようやく由依さんがやろうとしていることが私にも分かって咄嗟に我に返る。

流石にまずいと思う頃には、条件反射的に肩を強く押してしまった。


理佐「っ、だ、ダメです…!由依さん、!これはダメ!」
由依「ん?ダメってなんで…?」


キョトンとした顔をする由依さんに驚かされる。知らないのかな、由依さんは…。だけど私の思ってることが、思ってることなせいで恥ずかしくて上手く言葉に表せそうにない。

だって、Ωとαはキスをしたら、、


理佐「ぇ、、、ゆ、由依さん。知らないんですか、?/」
由依「なにを?」

理佐「ぁ、赤ちゃんできちゃうんですよ…っ、き、キス、、
   したらっ……///」


耳も、首も、身体の内側まで全部熱い。だけど伝えないと由依さんにも私にも良くないことが起きてしまうと思って…。

Ω収容所の中にある図書館で借りた本に書かれていたんだ。「Ωとαはキスをしたら子供ができる」と。その1行を読んでしまった私は、1人しかいないのにその本をバッ!と閉じて少しの間羞恥で固まってしまったことを覚えてる。

そして、今も同じように。

きっと私はこう言う類のものが苦手なんだろう。あるいは向いてないか、慣れてないのか。

そして、心が耐えきれそうになくて私が下を向いた瞬間におでこになにか当たる感覚がした。



由依side



耳まで赤くして、恥ずかしそうに言った彼女にびっくりする。
と同時に、こんなにピュアな理佐にまた虜になってしまった。

収容所の中でも一応授業と言う学校みたいなものがあると噂を聞いたことがある。だけどその学びの質というか、教育の劣悪さは収容所によってバラバラで、どこまで習っているのかも正式なところわからないらしい。

私がΩを迎え入れるにあたって、結構しっかりしたΩ収容所を選んだつもりでいたけれど、それでこうなのだから現実はかなり学習という面ではΩは遅れているのだろうと私は瞬間的に思った。

ただそれを咎めるつもりはない。知らないなら私が教えればいい。最初から最後まで、洗いざらい。

そんなこと頭の中で考えたけど、目の前の今にも羞恥心にやられてしまいそうな理佐を見てやめた。

代わりに私は落ち着かない様子の理佐に微笑んだ後、理佐のおでこにちゅっと軽いキスを1つ落とす。


理佐「ふぇ……//」
由依「ふふ。理佐、キスで子供はできないよ。そんなすぐでき   ちゃったら世の中子供だらけになっちゃう(笑)」


いづれ、正しいことは私が教えることになるだろうけど、今の理佐にはこれで十分だと思った。だってほら見て?こんな顔中赤くしちゃって唇きゅっと結んでる。

きっとこれ以上のこと教えたら理佐恥ずかしさでパンクしちゃうもん(笑)教えられないよ。

そして、おでこにキスされただけでこんな間抜けな顔してる理佐を膝の上に乗せながら私は天を仰いだ。


由依「あーあ。明日仕事休んじゃおっかな。」
理佐「ぇ…っと、、、」
由依「よし決めた。私明日休む!」


まだ熱に浮かされた頭がこっちに返ってきてないのか、まともな返事が返ってこない理佐。そんな理佐に私はお構いなくある提案をした。


由依「ねぇ、理佐。明日、動物園行こう?」



__________________________________________________________________



朝2人で準備して、昼前に着いた動物園はもう凄い人で賑わっていた。


理佐「人っ、多いですね…。」
由依「そうだね、、、。」


ずーっと檻に入れられた動物のような生活をしていた理佐にとっては私の感じてる何倍も人が多く感じられるだろう。人口密度に圧倒されて落ち着かない様子の理佐を見て感じる。

そんな理佐の緊張をほぐすにも、迷子にならない為にも私は理佐の手と私の手を絡めて見せた。


由依「ほいっ。」
理佐「あ…。、」
由依「行こうか。」


ほとんど初体験の大人数に、手繋ぎ。初めてのことに囲まれて開いた目が閉じない理佐だけど、私がふんわり笑いかけたらちょっと口角を上げてきゅっと握り返してくれた。

それからは人の波に置いていかれながら私たちのペースで動物を見ていった。

昨日聞いたらほとんど動物園なんて行ったことがないと言っていた理佐だから、楽しんでくれるかちょっと心配だったけどウサギに餌をあげたりゴリラの手の大きさと自分のを比べている姿をみて少し安心する。

そしてそのいつもより一際輝く表情を見て思う。
……私がこの子を幸せにしてあげたい。

Ωって結果をもらってどれだけ辛かっただろう、それがもし子供の時だとしてもだ。きっと私には想像できないほど辛いことだっただろう。

収容所だって、看守がΩに良くしているという話は聞いたことがないしΩ同士の喧嘩だってぼちぼちあるみたいだからきっと彼女は色々なことに今まで耐えてきていて。

Ωと言うだけでもうきっと一生分の辛い思いをしてきた彼女が本当に偉いと思った。そして、今は私の横でいつも尽くしてくれていて本当に感謝しかない。

あぁ、本当にこの子には幸せになって欲しい。ずっとずっと。彼女を苦しめる全てのものから守ってあげたい。笑顔にしてあげたい。救ってあげたい。

そんなことを心が感じた瞬間、繋いだ手にグーっと力が入ってしまっていたみたいでキョトンとした彼女に心配をかけてしまう。


理佐「由依さん……?」
由依「っ、ぁ、ごめん、痛いよね」
理佐「……ずっとそうやって、私のこと離さないでください
   ね。
由依「ん?」


彼女が何か言っていた気がしたが、あいにくの鳥類コーナー。雑音が大きすぎて聞こえなかった。

それからお昼休憩をして、朝、理佐が作ってくれたサンドイッチを食べれば2人してまた太陽の下を元気に歩く気力が湧いてきてより活力的になる。

そして、1番の人だかりができている場所に着いた時だった。
そういえば最近テレビで何年かぶりに交配が成功したとかなんとか、話題になっていたな。なんて私が思っていた時。


理佐「ぁ、あれ…!」


興奮気味に理佐が指差していたのは人が群がっているライオンの赤ちゃんのコーナー。本人は気づいているのか気づいていないのか私の手を取ってそっちへと軽く引っ張る。

手を取られることなんて別に珍しいことじゃないのに思わず “あっ ”と思った。

嬉しかった。

収容所を見学していた時も、家に来てからもどこか一線引かれているような気がしていたから。それがもし、ここにいる間だけだったとしても、理佐が私に心を開いてくれているんじゃないかって錯覚していたかった。

本当にそっと握られていたから、きっと少し私が遅れるだけでこの手は外れてしまうだろうって理佐の小走りに私もついていく。何でかその時に、あぁ私たちこの先も上手くやっていけるなって強く確信して自然と笑みが溢れた。


理佐「ライオン、本当にいたんですね…、!」
由依「幻だと思ってた?」
理佐「はい。正直…。本の中でしか見たことがなかったので」


「可愛いですね」って柄にもなく笑う理佐が私には1番可愛く映った。彼女がΩの中でも最高峰の階級だからとかじゃない。普段、彼女が薄情なせいでちょっと笑うだけで私の胸がキュンとした。




理佐side



私にとって犬や猫以外の動物は全て空想上の生き物だった。

とても力が強いトラ、人間をも丸呑みしてしまうヘビ、3トンも体重がある像。知識としては知ってる。だけど信じられなかった。

……自分で目にしたものだけ信じるって決めたから。目に見えない何かを信じ、縋って2度も傷つきたくはないから。私の家族の愛が壊れたあの日みたいに。

だけど今日、由依さんに連れてきて見せてもらって私の中での考えが少しだけ変わった。

_____目に見えないものでも、信じられることがあるかもしれない。

トラだって、ヘビだって、ゾウだって本当に存在する生き物だった。何より、隣で見ていてくれた由依さんから向けられる目がいつもとっても優しくて。

……Ωってわかった日から今日まで、冗談抜きで自分の第二の姓を忘れられた時間だった。

わかってる。釣り合わないってことだって、私じゃきっと世を歩く時由依さんが恥ずかしい思いをしちゃうんだってことだって……。きっと今までの私ならそれだけで距離をとっていただろう。

だけど今日だけは違う。そんなこと忘れて、久しぶりに本当の私が声を出した。


理佐「ぁ、あれ…!」


自分でも訳わからなかった。こんな楽しむはずじゃなかったのに、、、。この人の隣にいるといつも何も上手くいかないのは、なんで。

この時から私はうっすらとわかっていたのかもしれない。私は由依さんと幸せになる運命なんだって。

___________ねぇ、神様。そうなんでしょう?
      私、幸せになってもいいんだよね…?

隣から「可愛いね」って笑いかけてくれる由依さんの屈託のない笑顔が「いいんだよ」って言ってくれているような気がした。

そして、この時にはまた誰も気づいてはいなかった。ずっと隣にいたαの由依さんでさえ。

…………私がヒートになっていることを。



to be continued…





お読みいただきありがとうございました!
感謝祭1日目は、たくさんリクエストをいただいていたオメガバースでした。お楽しみいただけましたでしょうか…?

そして、櫻坂46さん「Start Over!」発売おめでとうございます!🌸全楽曲いいもの揃いで早くライブで見れる日をワクワクしながら待っている書き手です☺️

夏鈴ちゃん、センターおめでとう。ずっと待ってたよ。

また、今日はK46が書き手になってから丁度1年の日です。
そちらについては、別記事でブログを書かせていただいたので、もし時間があるようであれば見ていただけるとありがたいです。🙇‍♂️✨

感謝祭、うまくいかないこともあるかもしれませんが、何卒よろしくお願いします。🫧

おっす。