理佐side
ピピピピ… ピピピピ…
冷たい電子音が控えめに耳に響いてくるのか煩わしくて、眉間に皺を寄せて今日を始める。最近よく眠れない日が続いてるせいか、身体が鉛のように重たい。
働かない頭に響いてくる容赦ない音をどうにか止めようと、開かない目はそのままに手探りでスマホを探してみるけど今日はなかなか見つからない。
いつもいい加減なところに置くからいけないんだよ、と昨日の私に対して今日の私は朝からご立腹。しょうがないから、仲介役の私が眼鏡をかけてスマホを探してやろうと眼鏡置きに手を伸ばす。
だけど、眼鏡が見つからなかった。
いつもならすぐ手伸ばせばどこかしらにあるんだけどなぁ…なんて、やっと重たい瞼をあげてボヤッとした視界を頼りに探してみる。
でも……
理佐「あれ、?ないな、、、」
昨日の夜どこ置いて寝たんだっけ。と、重たい身体を起こしてベッドに座り昨日寝る前にしたことを考えてみる。
ん〜……昨日リビングで外したんだっけ、帰ってきてお風呂入って…、変なことしてなかったけどなぁ……忘れちゃったや。
こんな時に私はすぐ愛する人を呼んでしまう。小さい頃、お母さんが自分の物の場所を全て理解してたように、由依と付き合ってからは由依が私の物の場所を大体知っているからだ。
理佐「ゆぃ、由依〜……」
由依「んー?」
理佐「私の眼鏡しらない…って、それ……」
由依「んふふ、どう?」
かけている眼鏡に両手を添えてご機嫌な様子の由依。今日の私の眼鏡が無かったのは、私のズボラのせいじゃなくて可愛い泥棒さんのせいだったみたいだ。
にしても、ニコッと私に笑顔を向ける眼鏡の由依が可愛くて自然と頬が緩む。こんなんだから、いつも私は由依に怒れない。
理佐「もう、、、結構さがしたよ、(笑)」
由依「ふふ。ごめんね。」
理佐「ん、じゃあ返して。」
ちょうだいと、私におねだりする時の由依を真似て手を出してみると首を横に振って由依はイヤイヤと。
由依「いや〜。」
理佐「え〜?由依ちゃんの可愛いお顔、理佐ちゃんに見してよ
」
由依「ダメ〜♪」
私の眼鏡をつけてよくわかんないけどご機嫌な由依。
私、困っちゃうんだけどなぁ〜…(笑)って言っても私を困らせるのが楽しいのか「にひひ〜」と、ご満悦な感じ。
そして私が返して〜と手を伸ばすとイヤイヤと逃げ回る由依。仕方ないから追いかけると由依は声をあげてはしゃぐ。
そうしてしばらく経つと、由依に触発された私がベッドを降りて本格的に追いかけ始める。
こうやって影響されやすいのも私たちらしいなと後から思う。
理佐「待て待て〜!」
由依「あはは(笑)」
理佐「も〜笑ってる場合じゃ無いってば、由依」
お互いアイドルをやってる身だからなのか私たちには広すぎるダブルベッドの周りを朝から2人してぐるぐると。走ってるうちに昔のことを思い出す。
由依が嫌なことあった時もよくこうやってベッドの周り追いかけっこしたっけ。
『ちょっともう由依!時間なくなっちゃうからおいで!』
『いやいや〜!!やなのー!』
『一緒にいてあげるから、ね?』
『それでも、や!』
健康診断や、予防接種のある春と秋なんてそれはそれはもう大暴れで、結局疲れて眠ってしまった由依を私が抱えて連れて行き、そのまま由依が寝てる状態での注射なり検査なりが多かった。
まぁ、流石に大きくなってからそんなこともしなくなった由依だけど今日の今だけはその時の由依に戻ったみたい。悪戯に笑う由依が憎たらしいけど可愛かった。
それから暫くは私が動いては由依が逃げての繰り返し。でも昔と違って、お互い本気でやってるわけじゃ無いからなのか最後にはどちらからともなく追いかけっこをやめてそのままフェードアウトした。
理佐「はい、捕まえたー♪」ギュッ
由依「へへ。捕まったー。」
理佐「ほら、眼鏡外しな?」
後ろから由依のことを抱きしめると、観念したのかゆっくり由依が眼鏡を外す。それを貰おうと手を出せば、軽くぺちっと払われてしまいきょとんとしてる私に由依が眼鏡をかけてくれる。
カチャ…
由依「…ん、いいよ。」
理佐「ふふ。ありがとう。」
向かい合って微笑みを交わせばやっと由依の顔が鮮明に見えて嬉しい。頬に手を添えると嬉しそうにくすぐったそうにする由依は、まだメイクもヘアセットもしてないすっぴんの状態みたい。
由依はメイクも髪の毛を可愛くするのも上手だけど、どんな上手いメイクでも髪型でもすっぴんには勝てないことを私は知ってる。きっと他の人は知らない、彼女である私だけの秘密。
理佐「ふふ、可愛い。由依ちゃん。」
由依「…まだなにもしてないよ?」
理佐「それでも可愛い」
照れたのか腰に腕を回してくっついてくる由依。そんな由依の頭を優しく撫でてやると顔は見えないけど喜んでるんだろうなってすぐわかる。
折角眼鏡返してもらったから、もう少しだけ由依を可愛がっていたいなと、出発まで時間が押してるのを承知で由依の顔だけを両手でそっと持ち上げる。
理佐「今日なんで私の眼鏡かけてたの?」
由依のほっぺを親指の腹でサラサラと撫でながら聞くとちょっとだけ恥ずかしそうに教えてくれた。
由依「……理佐いつも眼鏡してるから、私もなんか付けたくな ったのっ。」
理佐「えぇ?そんな理由?」
由依「むぅ。」
私にとっては小さな理由でも由依にとっては大きな理由だったんだろうな。「そんなこと言わないで」とでも言いそうな怒った顔を私の首元に埋めてしまった由依を見て思う。
それからちょっとの間、由依の背中を抱きしめながら撫でていると不意に耳元で由依が言う。
由依「今日さ、理佐の服借りてもいい?」
理佐「え?いいけど、どうして?」
由依「……最近、理佐不足で寂しいよ。」
小さい声で呟かれた言葉だったから、由依はきっと私に聞こえてないと思ってるだろうけどちゃんと私の耳には届いていた。
その脈打つ小さな由依のハートと、ぎゅっと締まる腕が余分なほどの愛を添えて。
確かにドラマとか、モデルとかあって由依とすれ違いになっちゃうことここら辺多かったもんな。普段と変わらないように見えたけどそれは由依の優しさからの配慮だったみたい。
きっと今日のは、“ そろそろ寂しさ限界だよ ”っていう由依の優しいSOSだったんだよね。
……次の休みは由依に尽くしてあげたいな。
眼鏡を取ってきたり、私の服を着たがったり、言葉では言えない分たくさんたくさん可愛いアピールで私の気を引こうとする由依のことがより一層愛しく感じる朝だった。
fin
お読みいただきありがとうございました!
思いつきで描き始めたので、文章の起伏など何も無くつまらなかったと思わせてしまったらごめんなさい🙇♂️
そして、感謝祭の内容についての詳細が大まか決定しました🎉
1週間の毎日投稿で、今もらっているリクエスト全ての中からバランスよくスケジュールを組ませてもらいます。実行されるまではもう少しかかるかもしれませんが、皆様に楽しんでいただけるようこちらも全力で努めますのでよろしくお願いします✨
また、改めてフォロワー様1000名突破ありがとうございます!読んで貰えるだけで恵まれているのに、いつもコメント残していってくださったりマシュマロ投げてくださったり、いいねやリブログしてくださる皆様にとても支えられているK46です。
現在、批判的な声は一切なく暖かい読者様に囲まれて投稿できていることを感謝いたします🙇♂️✨こんな能のない人間が紡ぐ物語ですが、少しでも楽しんでいただけていればこちらとしても本望です。
これからもお世話になることしかないかと思いますが、
もしよろしければ付き合っていただけたら嬉しいです☺️
それでは、おっす。