※「Y. Mon amour.」の続きになります。
 リクエスト作品です。




理佐side




ある休日の朝。まだまだ小鳥が囀っている時間帯だというのに私は目を覚ましてしまった。

最近あんまり眠れてないから、長く寝ていたかったのに。なんて文句を心の中で垂れながら目を開けると、いつもならまだ一緒に寝ているはずの人がいなくて部屋を見渡す。

あれ、どこいっちゃったかな。

まだ起きてない頭を左右に揺らして見てみても、寝起きで出づらいままの声で「由依〜…」と呼んでみても由依は見つからない。

まぁ由依の行動なんて7年も付き合ってたら大体見当はつく。きっとリビングでドラマでも見てるんだろうな、と思ってゆっくり寝室を出るとやっぱり由依はリビングにいた。


理佐「ん…ぉはよ。由依。」
由依「………。」


私が声をかけると一瞬こっちを見たものの、返事をしてくれないまますぐにテレビへと戻っていってしまう。

あれれ?無視?

いつもなら「おはよう。って、もうお昼に近いけど(笑)」なんて優しく言ってくれるのに、今日は少し違った。でも別に由依のご機嫌取りなら世界一上手な自信のある私は、「今日は朝からツンツン由依ちゃんかな〜。」と焦りもしない。

寝癖も直さずそのまま由依の隣に座って優しく包み込むと、
ムッとした顔で睨まれてしまう。


理佐「由依?」
由依「フンッ」


どうやら不機嫌なような由依だけど、そっぽ向く時に「フンッ」と言ってしまう辺りはやっぱり怒ってても流石の可愛さだと思う。

だけど困ったな〜。今日は由依に癒してもらいたい気分でいたんだけど…。何とかこの猫ちゃんの機嫌を直す方法はないかな。

このまま由依に口で聞いたって答えてくれなさそうだったから由依がつけてたドラマをチラッと横目で見たら納得する。これ、私出てるやつじゃん。

わざとなのか、たまたまだったのか私の結婚指輪が目立つシーンで一時停止された画面は由依の気持ちを教えてくれて。わかった瞬間に、そんな可愛いことをする彼女が愛しくて堪らなくて笑ってしまう。


理佐「ふふっ…。」
由依「何笑ってんの、」
理佐「いや、由依は可愛いなって思って」
由依「、、、邪魔。ほっといて。」


仏頂面で立ち上がった由依はキッチンに行ってしまって絶賛ぷんぷん由依ちゃんの状態。こうなったら由依は頑固だけど、今日はちょっと秘密兵器を使ってみようかと思う。

それから私は自分のスマホを持って朝ごはんを作ってくれている由依の後ろからそっと抱きしめた。


理佐「ねぇ、由依?」
由依「…なによ」
理佐「これ見て。」


そう言って持ってきたスマホの液晶に指輪をドアップにした写真を映し出す。


由依「……これがなんなのよ」
理佐「これ、どこか見覚えないですか?」
由依「あるわけないでしょ。もうどいて。」
理佐「本当かな…?」


折角写真を持ってきたのに見向きもせず「見覚えがない」なんて、本当ふざけないでほしい。私は後ろから抱きしめたまま由依の左手をスマホの横に持ってくる。

液晶の中で輝く私の薬指と、目の前にある由依の輝く薬指。


由依「えっ?もしかして撮影でこの指輪使ったの?」
理佐「んふふ、どうだろね。」


それだけ言って私は由依から離れて机の上の支度をし始める。少し離れたところでわざとらしくチラッと見てみると、私の方をキッチンからまんまるな目で見てくる由依。びっくりで頭まだ追いついてないかな。

そう、実はあのドラマで使った指輪は由依とのペアリング。
私がどうしてもと監督に無理なワガママを言って実現してもらったのだ。

と言うのも、由依がドラマ見てぷんすかするのが目に見えてたからね(笑)少しでも由依の中で気休めになってくれればと思って仕込んでおいたものだ。こんなにも想像通りになるとは思ってなかったけど。


それから由依は指輪の真相を私に尋ねようとしてきているのだけど、上手く言葉を濁している。たまにはこんなソワソワもいいかと思って。


由依「ねぇ理佐さっきの…」
理佐「ん〜美味しかった♪洗濯してこよ〜」

由依「理佐、さっきのことなんだけど…」
理佐「あっ!由依、寝室に忘れ物した!とってきてくれない?」

由依「ちょっと理佐、さっき…」
理佐「ん〜、今日はいい天気だな〜」


ここまで肩透かしを喰らうと流石に腹が立ったか、由依が干すために持ってきた掛け布団を私ごと抱きしめてくる。


理佐「うわぁっ?!!」
由依「もうっ。指輪のこと!ちゃんと教えて。」
理佐「だから、さっき見せた通りだって。」
由依「それじゃわかんないのっ!もしかしたら理佐の想像と
   私の想像が違うかもじゃんっ、!」


かなり怒ってる由依だけどこんな布団越しに抱きしめながらそんなことを話されたら、怖さなんて微塵もない。

………きっと由依はとっておきの怖い怒り方をしているつもりだろうから、本人には言わないけど。

仕方ない私は、布団に包まれたまま由依の左手を手探りで探してきて私の左手と絡める。


理佐「ほら、由依。こう言うこと。」
由依「はぁ?だから、わかんないって。ちゃんと喋ってよ」
理佐「え〜?もう。勘の悪い子だなぁ。」


呆れたふりして布団から脱却して、自然な流れで由依の唇にキスを落とす。

チュッ

理佐「……こう言うこと。わかった?」
由依「っ、バカ……///わかんないよっ、///」


目線が下に下がってよく見えないけど、由依の目は泳いでいるみたい。恥ずかしそうに下を向く姿から考えて由依はもうきっとわかってる。

だけど、それでもわからないふりして「言葉にしてほしい」と欲張るあざとい由依ちゃんに私はあの日と同じ言葉をかける。


理佐「はぁ、

   __________私はいつでも由依のものってことっ!」


由依「…しってるし///」


照れて抱きついてくる由依は、私の耳元でそう言った。小さくてちょっと拗ねてるような声に見え隠れしていたのは、由依の隠しきれてない嬉しさだということなんて言わずもがなだと思う。

そんな私に幸せをくれる存在。

由依、私の愛しい人。




fin




お読みいただきありがとうございました!

たくさん溜まっているリクエスト作品の1つを今更かと思われてしまうかもしれませんが出させていただきました。遅くなってしまって申し訳ありません🙇‍♂️

最後に出てきた“ あの日 ”ですが、皆様に想像していただいた方がいいかと思いまして意図的に抜かしてもらいました。読者の皆様ならどんな想像をするのでしょうか…✨

今回も楽しんでいただけたら幸いです。それでは、おっす。