今回は、JAZZの歴史を語る上で、欠かせない一人、デュークとエリントンの曲、It don't mean a thingです。


スイングしなきゃ意味がない

深川隆成 日本語歌詞

スイングしなきゃ 意味がないさ
Doo wah doo wah doo wah doo wah
Doo wah doo wah doo wah doo wah

歌ってみなきゃ 始まらないさ
Doo wah doo wah doo wah doo wah
Doo wah doo wah doo wah doo wah

甘さや辛さの違いじゃない
リズムに乗るだけさ

スイングしなきゃ 始まらないさ
Doo wah doo wah doo wah doo wah
Doo wah doo wah doo wah doo wah

英語原歌詞と日本語訳
作詞 Irving Mills
作曲 Duke Ellington

It don't mean a thing if you ain't got that swing
あなたがスイング出来ていなければ意味がない
Doo wah doo wah doo wah doo wah
Doo wah doo wah doo wah doo wah

It don't mean a thing if you got do is sing
あなたが歌ってみなければ意味がない
Doo wah doo wah doo wah doo wah
Doo wah doo wah doo wah doo wah

It makes no difference if it's sweet or hot
それは甘さや辛さの違いなど意味がない
Just give that rhythm everything you got
ただ、全てのリズムをあなたが受け取ればいい
→ あなたはリズムに乗りさえすればいい

It don't mean a thing if you ain't got that swing
あなたがスイング出来ていなければ意味がない
Doo wah doo wah doo wah doo wah
Doo wah doo wah doo wah doo wah

ほぼ直訳に近く、音符に乗せているのがお分かり頂けるかと思います。
他にもチック・コリアのSpainなど、主語などを抜いても通じる日本語の特徴を活かしてほぼ直訳に近く歌詞を乗せられるものがありますが、この曲も、その一つでした。

【作者と背景】
この曲は、デューク・エリントンの代表作の一つですね。
デューク・エリントンはJAZZの草創期から活躍して来たルイ・アームストロングと並び称される偉大なプレーヤー兼バンドリーダー兼作曲家です。
デューク・エリントンの本名は、エドワード・ケネディ・デューク・エリントンEdward Kennedy "Duke" Ellington、1899年ー1974年)
デュークというのは、本当の名前ではなくて日本語では公爵です。デューク公爵という事ですね。彼の父親は首都ワシントンの著名な医師の執事という環境で育ちました。その育ちの良さから身だしなみがよく優雅な雰囲気を持っていたので、尊敬を込めて呼ばれていたそうです。そして、彼が活躍するきっかけになったのが、1927年から1931年まで、当時の禁酒法時代のニューヨークにあった巨大なナイトクラブ『Cotton Club』の音楽監督兼バンドリーダー兼ピアニストに迎え入れられてからでした。映画Cotton Clubでも有名な場所です。ニューヨークの繁華街を支配したギャングの一人であるオウニー・マドゥン(Owney  Madden)がフィラデルフィアで有名になっていたデューク・エリントンをフィラデルフィアのボスに頼んで引き抜いて四年契約を結んだのだそうです。この間、エリントンは一箇所で演奏する事で腰を落ち着ける事が出来、百曲以上の作曲をしたのだそうです。
そして、契約が終わった翌年の1932年にIt don't mean a thing をレコーディングします。
実は、その当時Swingという音楽用語はなかったそうです。
sweetは甘いバラード
hot 辛い、熱いはアップテンポ
swing はその中間のミディアムテンポで、遅すぎず早過ぎず、いい感じでいこうというのを当時のデューク・エリントン楽団で申し合わせる様にしていたそうです。
そこから、スイング感とかの概念が具現化したのかも知れません。
この曲が出来てから暫くして、ビッグバンドが全盛を迎えます。
白人音楽家ベニー・グッドマン(Benny Goodman, 本名:ベンジャミン・デイヴィッド・グッドマン(Benjamin David Goodman)1909年 ー  1986年)が1932年に楽団を結成、1936年にSing, Sing, Singを世に出して今も吹奏楽などでも演奏されていると思います。
グレン・ミラー(Glenn Miller、1904年ー1944年)は1937年に楽団を結成して、In the moodやMoonlight Serenadeなどの名曲を出しています。
そして、デューク・エリン・オーケストラを代表する名曲Take The A Trainは1941年にレコーディングされています。
ダンスミュージックとしてラジオや映画と共に大ヒットし、第二次大戦前後に世界が暗い世相の時にJAZZはアメリカの自由の象徴の様に位置付けられていたと当時を振り返る様々なドキュメンタリーで見たり聴いたりした方も多いかと思います。
第二次大戦前後のJAZZは、アメリカで生まれた最先端の音楽で、最先端の音楽=若者の踊りでもあり、第二次大戦中、JAZZバンドは戦地のアメリカ兵の慰問にも行くようになりました。
戦後、演奏曲に歌詞をつけたりスキャットでソロをしたりマンハッタントランスファーに歌詞を提供したしたヴォーカリーズの第一人者のジョン・ヘンドリックスは軍人で、戦地でよくJAZZを聴いて歌詞をつけたりしていた事が後々に役立ったというインタビュー映像を観た事もあります。
その時々の世相を背景に先端をいく人、それを受け止めて自分のものにして新たな事を創り出していく人の連鎖で音楽というのは今も現在進行形なのだなと思わされます。
私の歌っている、It don't mean a thing は少し、アップテンポで歌っています。
元々の曲はもっとゆったりしていますが、もっと早いのもありますね。
同じ曲でも演じる人間が違えばそれぞれ違います。
歌っている人、演奏している人、聴く人が楽しければ、それはそれでいいと思っています。