一般的な方々からの推薦・AO入試の印象は、かねがね「楽して入れる」とか、「学力低下につながる」とかいうネガティブなものばかりだと思っていた。思ってはいたものの、えてしてそういうものは主張の強い人(テレビに出てるコメンテーターとか教育者とか)の意見に引っ張られてしまうので、本当のことを確かめるために意識調査のようなものをしたいと最近強く考えるようになった。推薦・AO入試を"適切な"形で維持・普及させていくためには、世間での印象を確認することも非常に重要だからだ。


そう思ってGoogleで検索したところ、すでにYahoo!にて実施されていたようだ。


大学のAO入試「不要」47%

書類審査や面接などで合否判断するAO入試。入学者の成績低下を理由に見直す動きがあります。大学のAO入試は必要だと思う?

(実施期間:2008年2月14日~2008年2月24日)

実施したのが約2年前なので最新のデータというわけにはいかないが、単なる投票にとどまらずに470件もの自由記述によるコメントがあったので意外と参考になった。


「不要」と回答した人が47%、「学部・学科によっては必要(=学部・学科によっては不要)」と回答した人が39%、合わせて86%もの人が「不要」と考えていることに対しては特に驚きが無かった。


自分が驚いた、というよりも「救われた」と感じたのは、「不要」と回答した人たちの以下のようなコメントだった。


SFCによる実施で有名になったからといって、名前だけをまねて、実質的には推薦入試(こちらも名前だけ)を2回やっているような大学がとても多い。その結果、しっかりした学力がない学生が集まってしまい、入学前後でそのフォローに奔走する始末。なさけない。

僕は現役の高校生です。僕の高校では、推薦入試やAO入試で合格する
先輩が多いです。ですが、先生から聞けば、たとえ合格してもそのあと勉強をせずに遊んでしまう人が多いと聞いています。ですが将来、苦労するなら、一般入試で勝負したほうがいいとおもいます。

最低限のラインも実力でクリアできない人間に来られてもねえ

AO入試導入に成功した大学(たとえばSFCなど)をただまねただけの大学が多いというのはもっとものことで、これは(大学がその気になれば)その大学のアドミッションポリシーやカリキュラムに適合するように実施形態を変更することで解決できる。


早期に合格が決定して遊んでしまうのであれば、合格後に課題を出すなりして学力を維持するようなプログラムを組めばいい。(コストがかかるという声がありそうだが、そもそも大学側は早期に学生を囲い込んだことに対する責任として、そして中途退学の防止・研究成果や就職実績の向上に対する投資として取り組むべきだ)


入学者の学力レベルが問題なら、選抜方法に学力試験も導入すればいい。現に、成蹊大学のAO入試(マルデス入試)は学力試験を取り入れているし、高大接続テスト(センター試験に代わる、基礎学力確認を目的としたテスト)を導入しようという検討も文部科学省によってなされている。


要するに何が言いたいかというと、導入方法や実施方法に問題があるだけで、「各大学・学部・学科に適した学生を、従来の学力試験"のみ"に固執することなく、それらの学生を選抜するために"最適な"方法で選抜する」という推薦・AO入試の本来の目的に反対する人はそこまで多くないんじゃないか?ということだ。


自分が推薦・AO入試に携わっているのは、それが社会や国、ひいては世界を良い方向に導くという可能性に賭けているからだ。だからこそ間違った形で推薦・AO入試が普及することは避けなければならず、そのためにはたとえ多少の不利益があったとしても現実から目を背けてはならない。しかし、今回発見した意識調査の結果はこの緊張感のような気持ちをすこしだけ和らげてくれる、そんな様な気がした。