シェフラーを破った試合後のインタビューで松山に笑顔はなかった。「ペアマッチでの3敗は自分のせい」と言った松山。もちろんそれは事実だったかもしれないが、自分が調子が悪いとペアに対して凄く申し訳ないという気持ちになってしまい、どんどん空回りしてしまったからだろう。彼は強靭なメンタルを持っているが、誰よりも繊細な神経の持ち主であるとも思う。ペアマッチに弱いのはそんな相手への気遣いが強すぎるからなのではないか。

 プレジデンツカップはアメリカのためにあるような試合。特に今年のメンバーをみるとどのみち勝てるわけがなかった。3日目が終わった後、「もうゴルフを辞めたいというほど嫌な気持ちになった」と。こんな言葉を聞くのは初めてかもしれない。それほどまで敗戦を引きずっていたかと思うと切ないし可哀そうでいたたまれない気分なった。負けても大はしゃぎしていた4人の韓国人と数人の他国のメンバーがとても鼻についた。6回目の出場、特に今回はエースとして出場した松山の姿は当然そこにはなかった。出るだけで大喜びしている選手とは立場が違うのだ。しかも独りぼっち。今年はかなり偏ったメンバー。次回は人選をもう少し考えてほしい。

 最終日のシングルス。通常のマッチになり松山にはすっかり生気が戻っていた。前の日にゴルフを辞めたいとまで落ち込んだ人とは別人のように、やる気満々で顔も引き締まっていた。インタビューの最後に「今日は切り替えて絶対やってやろうとピッチに立った」と締めくくった。有言実行。しかも短いながらも正直に発言することに共感できる。藤田寛之が、自分を過小評価してもっともっと上に行こうと努力する松山だからスーパースターになれたと語ったことがあった。

 ネットではシェフラーを破ったのは大金星などと書かれていたが、本当に失礼な話。今の松山にとってシェフラーはライバルであって、見上げる星なんかではない。

 どん底を味わいながらも最後に強い松山に戻ってくれてよかった。しかし一晩であれだけ変われるって、やっぱり彼のメンタルの強さと実力は常人には到底計り知れない。