卓球男子が地元フランスに負けてメダルを逃した。二十歳を過ぎてデビューしたころの憎たらしいほどの怖いもの知らずだった張本に、今回のオリンピックでその面影はなかった。水谷が「あの気持ちとプレーではメダルは遠い」と評したが、国際経験の浅い戸上たちに過剰な期待をするのはあまりにも酷だ。水谷だってエースとして活躍したのは二十代後半だった。水谷、丹羽が抜けた今回、男子卓球も世代交代の時期にオリンピックがきてしまった。
張本は「すべて自分の責任」と涙にくれたが、若い彼にとってエースとしての重圧はいかばかりだったと、彼の気持ちをおもんばかることはあっても誰も責めることなんかできない。中国、日本の二強だった時代は過ぎ、ヨーロッパ勢の躍進が著しい。特にフランスは開催国としての意地もあり、大声援の中で絶対負けられないという気迫に満ちていた。東京から3年、通常通り、あと1年あったらもう少し結果は違っていたかもしれないし不運でもあった。
石川祐希しかり、張本しかり、普段は物静かで人の好い選手だ。多分、性格的には俺についてこいというタイプではなく、自分の背中で引っ張っていくタイプのエースなのではないか。二人ともエースとしての責任感から、パリ五輪では少し空回りしてしまったが、一人で責任を負う必要など全くない。十分頑張った。胸を張って帰ってきてほしい。