17、唯一無二のМC
МCは「MASTER OF CEREMONIEIS」の略語で、司会者、進行役という意味で、音楽の世界ではコンサートで曲と曲の間に演奏者がトークをすること、またその時間を指す言葉とのこと。
中居はワイドショーのМCのオファーを以前断ったことを、『金スマ』で語っていた。その理由は、もしワイドショーをやるとなったら、そのための勉強に時間を割かれ、他に何もできなくなってしまうという、何とも真面目で努力家の彼らしい理由だ。あと、決して知ったかぶりができない性分だし、昔、高校へもまともに行かず、勉強をしなかったので、政治や経済の難しいことなど分からないと、自らの分をわきまえているということだろう。
加えて、今のワイドショーはゴシップ話なしでは成り立たない。人の噂話が嫌いな中居には絶対にできないだろう。
中居は何を考えているか分からないとよく言われる。SMAP解散のときもそうであるが、人の批判をしないし、自分のことも当たり障りのないことだけで、胸の内を語ろうとしない。そのために誤解も受けるし、いらぬ詮索もされて、ファンとしては歯がゆくてたまらない。何を言われようとも、自分の言いたいことを耐えるのは、なかなか常人には難しい。
ネットを見てないから、余計な情報が入ってこないのかもしれない。
木村は工藤静香共々、カメラの前で他の4人に対して不満や愚痴めいたことを言っている。
退所組も、SMAPを連想させる、「NEW MAP」とグループ名をつけてみたり、『くそ野郎と美しき世界』という意味深なタイトルの映画を作ったり、そこまでする?みたいに、結構、ジャニーズ事務所に対して挑戦的かつ未練がましささえ感じる。しかし、活躍の場をドンドン広げている。それはそれで立派だと思う。木村も映画を、3本やっている。
その中でたった一人、中居だけは何の愚痴も言わないし、この2年、新しいことは何もしていない。
解散の日、大晦日のラジオ『Some Girls SMAP』で、毅然として、まず、「日頃、ネットとか週刊誌とか、ほとんど見ないんですけど、僕でも情報が入ってくることがあって、37万人の人が署名運動とか「世界で一つだけの花」の購買運動とか、ベストアルバムに投票してくれたこととか、9月9日のSMAPの25周年に各地でイベントをしてくれたこととか、新聞の広告欄にメッセージをくれてることとか、しっかりと、真っ直ぐに僕の耳にも目にも、何より僕の心に皆の全ての想いっていうのはちゃんと届いています」と視聴者に語り掛け、更に「誰も悪くないんですよ。メンバーは今年1年本当によく頑張った。よく踏ん張った。ちょっと年が明けたらそっとしておいてあげたいなというのはありますよね」と、メンバーを思いやった。そして最後に全員の名前を絶叫して、「SMAPじゃーね~バイバイ~」と明るく締めくくった。
ただ、自分が一番つらいはずなのに、それを視聴者には一切それを見せず、ファンへの感謝の想いと、メンバーへの想いだけを語った。我々は中居の発した言葉だけを信じて受け止めるしかない。中居は本当の意味で強い人間なのだろう。
父親の遺言は一言。「求めるな、与えよ」だそうであるが、鶴瓶がラジオで、中居は国内だけではなく、海外の災害にも寄付をしていると語ったそうだ。東日本大震災のときもスマスマ最終回の時でさえ、当たり前のように復興支援を呼びかけたし、自分のラジオでも未だに支援の呼びかけをしている。東日本大震災の時は億単位で寄付をしたとのこと。しかも事務所の反対を無視して、まだ放射能汚染の危険のある福島の山奥に、個人で炊き出しにも行った。だが自分が何をしたとかいうことは決して語らない。最近、いろいろな災害があり、300万円とか1000万円寄付しました、と公表する芸能人がいる。それはそれで素晴らしいことだが、中居のしてきたことを知ってしまうと、少し彼等の善行が色あせてしまう。
そして「与える」ということに関して言えば、何よりも、いろいろな番組を通して、その笑顔、発する言葉によって、ある時は癒し、笑い、それ以外にも、たくさんのものを我々に与えてくれている。
現在、МCと呼ばれる人は数多いる。そして、そのほとんどが芸人である。タモリは『笑っていいとも』の司会を32年間務めたことにより、司会者の鏡のように言われるようになった。よく、たけし、さんまと並んで、ビッグスリーなどと言われているが、いいとも最終回の挨拶で「気持ち悪い男でしてね。こういう番組で以前の私を見るのが大嫌いでした」と語っているように、イグアナの真似をしたり、キモイ芸を主とする芸人時代を経て36歳で横澤彪に抜擢されて『笑っていいとも』の司会者になった。最終回の挨拶で、「視聴者の皆さん方からたくさんの価値を付けていただき、みすぼらしい身にきれいな衣装を着せていただきました」と。まさに地位が人を作るという言葉がぴったりな人である。確かに32年でタモリは『ミュージックステーション』の司会を併せてやり、自分流の司会術を確立して、国民からリスペクトされる存在になった。
現在МCをやっているのはジャニーズだけでも、国分太一、井ノ原快彦、桜井翔、関ジャニ。最近では東山紀之が日曜日の早朝にやっているし、他のメンバーもちょこちょこМCをやっている。
タモリ、たけし、さんま以外の芸人でも、爆笑問題、ウッチャンナンチャン、ダウンタウン、クリームシチューの2人、有吉、マツコデラックス,、タカトシのトシ。ハリセンボンの春菜。まだまだ名前を挙げきれないほどいる。
最近では、俳優の坂上忍、梅澤富美男。特に坂上忍はテレビをつけると必ずと言っていいほど出ている。
しかし、そのうちの誰が、10代の頃からバラエティのМCを目指し、30年近くも努力してきただろうか。
中居は、SMAPでの自分とМCの自分を見事に両立していた。10代から常にネタ帳をつけ、暇があれば読書をして、これは、と思う言葉はノートにつけている。
『なかい君の学スイッチ』で博多大吉が、中居が20代前半頃、あるテレビの現場で一緒になったとき、待ち時間にいつも読書しており、大吉に、「将来のために、本、読んだほうがいいですよ」と。大吉はその時、「この人、何言ってるんだ?」と思ったそうである。だが、現在の中居を見て、そういうことだったのかと改めて思ったとのこと。
最後の『スマシプ』のとき、バスの中で、3人の荷物の中身を見せ合うことになり、嫌がる中居のバッグを香取が無理やり開けさせると、ノートが入っていて、香取が、ちらっと覗いて、「わあ~、草とか、木とか書いてある。これSMAPだよね」と言うと、「やめろよ!」と中居がもぎ取ったが、多分スSMAPのことが書いてあったのだろう。