そして、「これだけは言わせてください。秀樹は最後の頃、リハビリを3日から5日にしたんです。うつになることもあったでしょう。でも心が折れなかった。最後の最後まで心が折れなかった。凄い男です。中居さん、そんな人っていますか?」と、明らかに感情を高ぶらせて言った。普通なら「そうですね、なかなかいませんね」くらいのことを言うところだが、中居は感極まった表情をしながらも口を真一文字に結んで少し首を前に傾けたが、何も言わなかった。世の中には立派な最後を迎える人は他にもたくさんいる。軽々に「いませんね」とは言えなかったのだろう。
多分、五郎も何か言ってほしかったわけではなく、ただ、最後に秀樹への自分の思いの丈を中居にぶつけたかったのだろう。中居の表情で、自分の気持ちは汲み取ってくれたと思ったはずだ。
ラストは2007年の『ザベストテン』の特集で黒柳徹子と久米宏を招いた回の最後に、ゲストの、歴代最高の9999点を出した西城秀樹が元気に「YMCA」を歌い、その横で昔の秀樹の衣装を着て楽しそうに踊るまだ若い中居や、今は亡き飯島愛などの姿も見えて、全員大盛り上がりした賑やかなシーンで終わる。
余計なことは一切言わず、ただゲストにそっと寄り添って語りたいことを語らせる。そして、表情でも相手に思いを伝えられる。それが中居のМCとしての実力なのだ。
あと、中居がゲストに怒られるという、とんだ被害者になってしまった回もある。2018年4月1日の石原慎太郎の回である
まず、出てきた途端に後ろに座っている女子たちを見て、「これはどういう人たちですか?気持ち悪いね」と先制パンチ。そして彼が田中角栄のことを書いた『天才』という著書について中居がした質問が、石原を不機嫌にさせた。
当時、田中角栄の金権政治批判の急先鋒だった石原に、「僕も本を拝読させていただきました。田中角栄氏側になって書かれたわけですよね」「側というか一人称ですから」と。どんどん不機嫌になっていき、「その当時からそういうように感じられていたのか、それともこの長い間、政治の世界を歩まれた、今の石原さんが感じられて書かれたのか、どちらでしょう」「あなたの言うことよくわからないね、何?」「いや、当時から石原さんは田中角栄のことをそう思われていたのか、この年齢になって思われて書かれた?」結局、この質問に対しては適当にはぐらかされた。その質問が一番石原にグサリと刺さるものだったからだ。中居はそれ以上の追求をしなかった。多分中居のことだから、相当本を読み込んで、田中と石原の過去について勉強してきたはず。誰が聞いても、ごくまともな質問に思えるが、石原がなぜ怒ったのかよくわからない。しかし、これ以上怒らせて場の空気が悪くならないよう、最後まで中居は石原に対して礼を失わず、終わるときには「この番組を作っていただいて、私も角さんも浮かばれたと思いますよ」と言わせて帰らせた。
芸能界の誰もが中居にあまり物言わなくなった昨今、中居には良い経験になったのではないか。
改めて、中居は金スマをはじめ、沢山の番組を通じて多くの人、中には奇人も変人もいて、そういう人も含めて会って話を聞き、それを糧に成長していったことが、金スマを観るにつけ、思わずにはいられない。
次回はSMAP 解散について