肝斑の治療について
以前レーザー医学会でも肝斑は内服外用とトーニングしかまだ手はないと言われていましたが、ここ1,2年でまた少し変わってきました
一つにはカスタマイズ治療研究会というKOクリニックの黄先生主導の研究会において、ニードルRF(主流はシルファームと呼ばれる商品ですが)の治療により劇的に肝斑と肌質の改善が得られることが臨床経過でわかってきたこと、
もうひとつには皮膚科の先生の努力によって集められた皮膚の病理初見において、肝斑がある皮膚には表皮基底層と真皮変性所見が見受けられ、ニードルRFを受けた後の皮膚の病理組織では変性病変が消失し、正常な状態に導かれていたことなど、医学的にもわかってきたからです
つまりは病理学的に異常な(変性している)組織があるエリアに効率的にダメージを入れて、あらたな組織に生まれ変わらせることで肌質が甦るということですね。ではなぜ肝斑が良くなるのでしょう?
肝斑は真皮内の炎症に伴う表皮基底層のメラノサイトの異常であると言われており、以前はその炎症が過剰な摩擦や紫外線によるものと言われていました
ところが、これも皮膚科の先生方の努力によってわかってきたものなのですが、紫外線そのものによる炎症ではなく、紫外線により光老化を起こしたコラーゲンから表皮に対する炎症性物質(サイトカインと呼ばれます)が産生されていることが判明し、ニードルRFなどの治療によって光老化を起こしたコラーゲンを正常なコラーゲンへ導くことでそもそもの原因となる炎症性サイトカインが作られなくなるのではないか、ということが推察されています
これはとても画期的な発見なのですが、ものすごく臨床的に腑に落ちるところがありまして…
たとえばトーニングを5~10回くらい繰り返すと、肌のハリが出てきた感じと肌のトーンが明るくなってきた感じがします、とよく患者様から聞かれます。
トーニングとは1064nmの波長で超短パルス(ナノ秒またはピコ秒)で照射をすることで表皮のメラノサイトを刺激することなく炎症を引き起こすことなく、トーンアップをしていく治療とされています。
しかしこれを上記の機序で考えると、表皮よりもむしろ真皮のコラーゲンに弱く熱と衝撃波によるダメージを加えてゆっくりとリジュビネーションを進め、5回~10回治療後に真皮のリジュビネーションが進んだことで肌のハリが出るのと合わせてトーンアップしてくる、つまり表皮のメラニンにはほとんど効いていたわけではない、ということが考えられます。だから1回で効果が出るものではない、となるわけですね。
もちろん1064nmの波長は多少メラニンへの選択性はあるので、まったく表皮に効かないわけではないと思いますが、トーニングの効果の本態は真皮のリジュビネーションであるのではないかと私は思っています
そう考えると頻回にやるメリットはあまりなく、1か月に1回くらいの治療間隔が適切なんだろうなと思います。頻回に照射しすぎると逆にメラノサイトへのダメージが蓄積し、白斑を起こしてしまうことが報告されていますからね
では、トラネキサム酸はどうでしょうか?
トラネキサム酸は抗炎症効果により皮膚の炎症性サイトカインを抑えてメラニンの生成を抑える効果があるので、確かに肝斑に効果的です。
しかし、真皮のリジュビネーション(表皮基底層と真皮コラーゲンの正常化)が促されれば炎症性サイトカインは放出されなくなるはずなので、理論的には離脱、終了ができるはずです。今後、それも臨床で経過をみていきたいと思っています
今回は肝斑について少し新たな知見を踏まえて考察してみました。
ニードルRF(シルファーム)に限らず肝斑に効果的な結果を出せる治療がいくつか思い当たるので、今後検証していきたいです
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