・今ここから…・

どうしようもない俺を拾ってくれた
中林さんには恩が有るが…
いつまでも便利屋稼業に甘んじて居る訳にはいかない…
俺は高橋さんに真っ直ぐ向き合う為に…
真っ当で有りたいと思っている…
今までなら
中林さんの要望通りにシュウジさんに近付く女を誘惑しては
報酬を貰うのが生業に等しかったが…
足を洗う事にした。
こんな俺に満面の笑みを投げかけてくれる高橋カナさんとの時間を失いたくない…
ただ今の自分のままでは
高橋さんに向き合えない…
ダラダラ生きて来たけど…生まれ変わりたいと思う…
何から始めれば良いか解らないけど…
これ以上続けていてはいけない事くらい解る。
今まで考え無いで逃げ続けていたけど一歩だけでも前進したい
そう思っていた頃…
中林さんから最後の依頼が入った…が
今までとは完全に何か様子が違っていた…
それは失踪したシュウジさんを探し出すと云う依頼だった…
何かのチカラで全てが変わろうとしている様に思えてならなかった…
それはきっとシンジがこの町に帰ってきた時から大きく動き始めたんだ…
シンジを好きな高橋さんの事が好きな俺…
結ばれる事を望まない訳ではない…
シンジと上手く行く様に応援したいと云うのでも無い。
結果を求めるよりも
今は高橋さんに向き合う為に誠実で有り続けたいだけだ…
数少ない一緒居られる時間を大切にしたいだけだ…
過去を変えたい訳では無く…
未来を望むままにしたい訳でも無く…
ただ今を大切にしたいと思うだけだ。
シュウジさんも何かを変えたくて
恵まれた環境を捨てたんだろう…
シンジだって自分を変えようとしているのだと思う…
高橋さんも何かを求めるからこそ週末にココに来るんだろう…
コジツケかも知れないが、それら全てが俺の背中を押してくれている様に思えている。
変われると素直に信じられるのは…
地道に動き始めている人達に触発されて居るからだ…
それは強制でも命令でも無く…
前に進もうとしているであろう想いに
勇気を貰って居るからだ…
口先や説教で
人の心が動くハズがない…
人はきっと行動によって触発され
誠実によって心を開くのだと信じたい…
そして、
その誠実には
誠実で向き合いたいのだ。
ただ一つ、
誠実でしか
変えられないモノだけが…
人間には必要なんだと…
嘘ばかりついてきた俺だからこそ思えるのかも知れない。

(つづく)