「翔くん。」
じっと大野さんの目が、
栗鼠の姿の俺の目を見据える。
「は、はい。」
やばい。これ。
大野さんのpeopalとしてのオーラだ。
あまりにも黒く威圧するようなオーラに圧倒される。
ごくん。
食われる。
闇に葬られる。
あまりに大きな自然の中に、
放り込まれた時に
自分の命などちっぽけなものだと悟るような
命の危機を感じる。
「やっぱり戻りたいよねぇ。」
ごくん。
あまりの迫力に唾を飲む。
「は。はい。」
「じゃあさ。
今から見たりしたりすること。
全部内緒ってできるかなぁ。」
大野さんの影が、
黒い羽がのびる。
やばい。
これって。
俺。
やられちゃう?
栗鼠の姿のまま。
じりり。
後ろに下がりながら、
「はい。
元の姿に戻してくれるなら、
なんでも秘密にします。」
大野さんがにやりと笑う。
その口からは美しい牙をのぞかせる。
「うん。なら良かった。」
ぱちり。
大野さんが指を鳴らすと、
あたりは真っ暗になった。
…
えっ。
真っ暗になった瞬間。
目を瞑っちゃったけど、
ゆっくり目を開けると、
目の前には蝙蝠が飛んでる。
「も、もしかして。
大野さん?」
「うるさいっ。
俺の完全変化を指さすなっ。」
小さいっ。
栗鼠の俺より小さいんですけど。
「だから、嫌なんだよ。
年取ったから、完全獣態変化も、
自分の思う通りにできるようになったけど、
こんな小さな姿だせ?
全く迫力ないっての。
それだったら、
瞬間移動や、分身の術や、
透視や、読心術、念動力や、電撃の方が、
使えるしかっこいいだろ。
やりたくないんだよ。これ。」
ぶちぶちと文句を垂れてるのが可愛い。
「で、大野さん。
完全変化してどうするの?」
すっかり怖くなくなった大野さんに気軽に聞く。
「きまってるだろ?
相葉には無理で、
俺の大きさならできること。
むつみあってやるから、
そこに寝ろ。
完全獣態を維持するには、
強固な性的エネルギーの結合が欠かせない。
それを分化して、
解体すれば…。」
大野さんは、
難しい言葉を吐いているが、
そういうことだ。
「流石に結合は無理でしょ?
こんな動物の個体同士じゃ。」
俺の目の前の蝙蝠さんに聞くと、
「当たり前だ。
俺も、俺の和にぶち込む以外に、
他のやつとはやりたくない。
ちゃんとお前の性的エネルギー放出させてやるだけだ。
安心しろ。」
蝙蝠の大野さんがちろちろと舌を出すと、
寝っ転がった俺の上にかぶさった。
⭐︎つづく⭐︎