十四番目の月 〜うちのごはん〜 | 嵐好き・まるの ブログ

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まるです。

Over50の葉担櫻葉erです。
徒然におはなしを書き、投げ込んであります。
基本は読み手。
色々なブログに顔を出しては、叫ばせていただいております。

どうぞよろしくお願いいたします^ ^


 「うーん。」

雅紀が、夕方のワイドショーを見ながら、
顎を撫でて悩んでる。


「どうした?雅紀。」

今日は、三連休。
敬老の日。
彼岸の入りだから、
おはぎも買って、
ゆっくりと淹れた煎茶でおやつもたべて。


そんなゆっくりとした休日も、
終わろうとしている夕方。



「うーん。翔ちゃん。
明日、中秋の名月で、満月なんだけど。
曇りの可能性が高いんだって。

今日、お月見しちゃったほうがいいみたい。」




今年の中秋の名月は、
八年ぶりに満月と重なった。



「名月は必ずしも満月ならず」というのが、
よく言われる言葉だが、
今年の中秋の名月は、
美しく黄色い望月とあって、
名実ともに兼ね備えてるため、
ずっと雅紀も楽しみにしてたのだ。




「仕方ない。
ちょっと待っててね。

買い出し行ってくる。

今日、
お月見やっちゃお。」



サンダルをつっかけて、
エコバッグを持って、
ふらっと出て行った雅紀が買ってきたのは、

尾花(すすき)と、
桔梗と、
バゲットと、
里芋。


「よし。
中秋の名月の、別名は芋名月だからね。

翔ちゃんは、
尾花と、桔梗。
花瓶に入れて飾って?

俺、お月見ご飯つくるっ!」



気合を入れて、
キッチンに入った時の雅紀はすごい。


あちらでフライパンに火をかけているうちに、
こちらでまな板を音をさせて、
野菜を切り、

鍋にぶち込んだかと思ったら、
流しの中の洗い物を始める。


あちらこちらに雅紀の分身があるんじゃないかと思うぐらいだ。


今日も、
玉ねぎとパプリカ一個、ベーコンとニンニクひと玉を凄い勢いで刻んだかと思えば、
小鍋でトマトジュースと、コンソメとお好み焼きソースとカレー粉ひとふり、蜂蜜少々で煮る。


その間に、
りんごと蜂蜜とヨーグルトのサラダを作り、
小ぶりの里芋を洗った蒸し器で蒸す。


手が空いたところで、
味噌と砂糖、酒、味醂をといて、
小鍋で煮て、
すりごまを大量に投入すれば、
里芋の田楽につける味噌ダレができている。


その間に、
ビニール袋に入れた、ひき肉と卵の白身と、
パン粉と牛乳をよく揉み込んで肉団子を作り、
ころころと揚げ焼きにしている。





花瓶をテーブルの上にセットすれば、
月がゆっくりと昇っていく。



うん。
十四夜だけど、深みのある輝きのいい月だ。

明日の満月も、
8時55分に月の最大だというから、
今日愛でるのもあながち間違いではないだろう。


そんなことを考えていると、

「翔ちゃーん。ご飯できたから、
そっち持ってってー。」

雅紀が俺を呼ぶ声がする。




「今日のご飯は、

CMでみたシャクシュカ風お月見トマトスープと、

まーるい里芋の田楽。

肉団子の甘酢餡かけ。

りんごのヨーグルトサラダに、
バゲットです。


ほんとは、
CMみたいにフォカッチャがいいんだけどねぇ。

なかったので、
黄色いお月様みたいな黄身を潰して、
トマトシチューと混ぜて、
バゲットひたして食べてみてください。」



どれもこれも、
まんまるで、

シャクシュカ風のスープとやらには、
黄色い卵のお月様が半熟気味にこんにちはとのぞいてる。


「うん。うまそ。」

黄身を崩すように、
バゲットを割り入れて、
ざくりとつけて食べれば、

「まじか。
これ。おいしいっ!」


夢中になって食べてしまう。



「くふふ。
こちら、死ぬほどニンニク入れてあります。

明日に響かないように、
りんごとヨーグルトのサラダで、
臭いは消すようになってるから、
安心して。


夜は長いよ。

素敵な俺たちの夜も、
お月様に見せつけてやろ?」



ぱくぱく食べる俺を嬉しそうに、
目を細めてみる雅紀のほうが、
名月の100倍美しい。



次の夜から欠ける満月より、
十四番目の月が一番好きなんて、
歌の歌詞があったけど。


俺は、
どんな月よりも、
目の前のこいつの方が綺麗で愛おしくて、
離さないなんて思ってることは、
内緒にしておく。



だって、
そんなこと、
一言でも口にしたら、
離してくれなくなっちゃうし。


そしたら、
やっぱり言った方が、
いいのかな。




嬉しい期待にむねふくらませながら、
望月に照らされる美しい雅紀をみて思った。





⭐︎おしまい⭐︎



明日が中秋の名月で、
ずっとお話をかけることを
楽しみにしてたんですが、
夕方のワイドショーを見て、
急遽今日書きました(笑)


ご笑納ください。


十四番目の月は、
私世代だと知ってるかな。

ゆーみんの、初期の名曲です。
(荒井由実時代だとおもう。)