「どうだった?松田さん。」
次の日、
俺が指定してくれた喫茶店に、
松田先生が、
こそこそと入ってくる。
「これ。
これだけ見つかったけど。
これでいいんだよな。」
松田先生がスマホで撮影したデータは
すぐに松田先生がみんなで共有した。
それでも、
やはり大事なのは書類の写し。
それがどこにあって、
どう保存されているのか、
それが一番大事となる。
びくびくしながら、
俺に松田先生が書類のコピーを差し出す。
「よくできました。
上出来です。」
にっこりと笑うと、
はぁぁぁと、
松田先生が、胸を撫で下ろす。
「良かったぁぁ。
正直さ、
俺、親友だと思ってた創が嵌められたのも、
頭来てるんだけど、
俺たち下の者としては、
あんな本郷みたいな使えないやつが、
ロボット手術センターのセンター長になるなんて、
ありえないわけよ。
人格的にも技術的にも信頼できない医者なんて、
俺から言うのもなんだけど、
ただのクズよ。
それが、
阻止できるなら、
こんな泥棒みたいな真似でも、なんでも、
やってやるよ。」
あの夜、
いきなり教授室に忍び込ませたのを、
根に持っているらしい。
確かにそうだ。
彼は、
ただの善良な医者だからな。
こういうことには、
向いてない。
「ほんとすみません。
あとは、俺が外側の証拠を固めますから。」
らしくなく、
深々と頭を下げると、
「任せましたよ。
三条さん。
俺ら、
風浜大学病院に働くものも、
働く者なりの矜持ってやつがあるんです。
そいつをなくして、
私利私欲だけに
医療を利用とする奴は、
俺は許せない。」
ああ、
この人は根っからの医者なんだな。
もし、手術をするとしたら、
このような人に執刀してもらいたいな。
でも、
この人は麻酔医だから、
だめか。
胸の中でちらりと思いながら、
「任せてください。
SHOWの準備は大詰めです。
SHOW must go on. ですから。」
サーカスの曲芸師のように、
自信たっぷりににっこりと笑ってやった。
⭐︎つづく⭐︎