斜面の下にしか標定点を置けない場合の精度 | 山口大学 空中測量(UAV写真測量)研究室の技術ノート

山口大学 空中測量(UAV写真測量)研究室の技術ノート

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2. SfM/MVSソフトAgisoft Metashapeの使い方
などなど。

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【このテーマの記事は、UAV写真測量について、日々の文献調査や研究で得た、PhotoScanに限らない一般的な情報を掲載していきます。用語の説明は「PhotoScanを極める」に譲ります。】

 

斜面崩壊の現場や森林のUAV写真測量などでは、対象領域(斜面)に片側からしかアクセスできず、従って片側(斜面の下にある道路など)にしか標定点を置けないことがあります。

専門家に聞くと、このような現場は、かなり多いようです。

 

このような現場のUAV写真測量は、(Phantom 4 RTKのように撮影位置の高精度測位が可能なドローンを使うならともかく、通常のドローンでは)当然厳しいものになります。

ただ、

  • 端から無謀なのか
  • それとも手間ひまかければ、好条件ならある程度の測量ができるのか
  • その場合に標定点から離れるにつれて、誤差はどのように増えるのか(加速的 or 線形的?)

調べておくことには価値があると考えられます。

 

そこで今回は、斜面の下にある道路等にしか標定点(対空標識)が置けない場合に、

  1. 斜面の地形は最高でどの程度の精度で写真測量できるのか。
  2. 道路から斜面を上るに従って、誤差はどのように増えるのか。

を、理想的な条件におけるCGシミュレーションによって検討しました。

 

その結果、例えば

斜面の下に標定点をしっかり置いて、しっかり撮影すれば、理想的な条件なら

水平幅200 mの斜面を、10 cmくらいの誤差で写真測量できる

ということがわかりました。

結果をまとめた資料はこちらです。

 

もちろんUAV写真測量では、対象領域を囲うように標定点を置くことが基本ですが、それができなくても、即諦める必要はないということですね。

 

この研究は4年生の学生さんが、卒論とは全く別に、自主的に取り組んでくれた成果です!

 

何でもかんでも「個人情報」と言ってしまう時代なので、「想定外」のリスクを避けて、一応名前を伏せて、私の責任で発表しています。が、今年度の成果の多くは、学生さんの自主的な研究成果と言っても良いものです(こちらから頑張れとは、一言も言っていないので)。