【このテーマの記事は、UAV写真測量について、日々の文献調査や研究で得た、PhotoScanに限らない一般的な情報を掲載していきます。用語の説明は「PhotoScanを極める」に譲ります。】
↑ フォーカスの設定を、無限遠を意味する「∞」に合わせると、遠景がぼける!
大人気のDJI社製ドローン Phantom 4 Pro (P4P)。
手軽・安全で、飛行時間が長くて、カメラも良い・・・ということで、私も写真測量の研究に活用させてもらっている。
しかし、何気なくDJI FORUMへの投稿を見ていて驚愕!
なんと、操縦によく使われるアプリDJI GO 4の、マニュアルフォーカスのスライダー(ダイヤル?)について、接写を意味する「花」マークと、無限遠を意味する「∞」マークが、間違って逆についているのではと議論されているのだ。
ドローンによる写真測量では、フォーカスは固定する必要があり、マニュアルフォーカスが推奨されている。ある程度の高度から撮るならば、フォーカスを無限遠に固定することになる。
Phantom 4(Proではない)では、フォーカスは無限遠に固定されていたので、間違える余地はなかったが、Phantom 4 Proでは、フォーカスの調整が可能になった。私はこれまで、スライダーを「∞」側いっぱいに寄せることで、無限遠にピントを合わせていると思っていた。
しかし、DJI GO 4では、「∞」は最も近距離にピントを合わせている状態だというのだ。
自分で試してみたところ、DJI GO 4のみならず、自律飛行に使っているDJI GS Pro (Ground Station Pro) でも同じだった。
まず、下の写真は、マニュアルフォーカスのスライダーを「花」側いっぱいに寄せたときの、iPadのスクリーンショットだ。遠景は明瞭に写っているのに対し、近くに置いたチェスボードはぼやけている。「花」はふつう接写(近接撮影)を意味するはずなのに、おかしい。
次に、下の写真は、マニュアルフォーカスのスライダーを「∞」側いっぱいに寄せたものだ。近くに置いたチェスボードは鮮明に写るのに対し、遠景は多少ぼやけている気もする。
「ピンボケ」がわかりやすいように、一部をトリミングした画像を下に貼る。1枚目が「花」、2枚目が「∞」に設定したときだ。
それでも、iPadのスクリーンショットでは、遠景の違いがわかりにくいかもしれないので、Phantom 4 Proで撮影した画像で、遠い部分を比較してみる↓
違いは明らかだ。「∞」に合わせると、遠景がボケる!
このことは、DJI GOに関して、上記のDJI FORUMの記事でも議論されているし、フォーカスについて説明したYouTube動画でも、「なぜこんなに距離が遠いのに、『花』でピントが合うのだろう」というような疑問が述べられているようだ(06:00 - 06:15)。
私はDJI GS Proを使っているが、今年の夏にPhantom 4 Proを使い始めて以来、ずっとこの罠にはまっていた。「∞」に設定しても近くのものにピントが合うことに多少の違和感はあったが、すごい被写界深度!くらいにしか思っていなかった。「花」と比べてみるくらい、試してみればよかったものを、インターフェースを信じ切っていた。ARIDAでの発表では、運動場の実験例で、フォーカスを∞に合わせたと資料に書いたが、実質的には接写の設定にしていたことになる。
また、上記のDJI FORUMの記事では、スライダーの目盛がいつも同じフォーカス距離を表しておらず、時間とともに変わる、というような返信投稿もある。本当だとしたら、写真測量に使う身としては恐ろしい限りだが、スライダーの端っこ(「花」)だけは安定していると信じたい。
現時点で、Phantom 4 Proを写真測量目的で利用する場合は、マニュアルフォーカスのスライダーを「∞」ではなく「花」側に合わせるべきだと思われる。私は存じないが、この問題がPhantom 4 ProというよりもDJI GOやDJI GS Proの問題であるならば、他のシリーズのドローンを操縦する場合についても、同じ注意が必要かもしれない。
最後に、DJI FORUMのやりとりを見ると、スライダー(ダイアル?)の解釈次第では、これは別にバグではない(つまり、「∞」だと思っている設定が実は「花」だ)という意見もあるようなので、記しておく。いずれにせよ今回の件で、スマホ・タブレット系に多い直感に頼ったインターフェースというのは、技術的な仕事に使うには怖いと思った。見た目は無骨でもいいから、すべて数値で設定したいものだ。