不動産の内装の写真測量 in GTA SA (3) 撮影 | 山口大学 空中測量(UAV写真測量)研究室の技術ノート

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【このテーマの記事は、日々の興味本位のお試しを記録するものです。おふさげも入っています。】

 

<試行錯誤>
結論から述べると、寝室の内装の写真測量は、それほど容易ではなかった。

 

なかなか満足できる結果に至らず、10回程度、写真の選び直しや解析のやり直しを行ってしまった。廊下を含めて1000枚を超える写真を使ったケースもあるし、寝室を数周しただけの200枚程度でどこまで出来るか試したケースもある。またある時は明らかに位置がおかしい点 (outlier)を目視判読で除くことにしたが、ある時は一切の手作業を禁じた上で、自動的な処理の反復による改善を試みて失敗した。

 

10回程度の経験では、コツを語る資格などないが、とにかく写真測量は撮影も解析も奥深いと感じた。以下、紹介するのは、最後の1ケースで、撮影枚数、解析の労力と結果の品質のバランスが一番良いと思った事例である。もちろん、これがベストな撮影・解析方法である保証は全くない。

 

 

<写真撮影の戦略>

前記事でキャリブレーションしたカメラ(San Andreas州で唯一使えるカメラ;1280×768画素)で、 ホテルThe Clown's Pocketの一室にて、計384枚の写真を撮影した。例として、うち25枚のサムネイルを示す。

 

 

PhotoScanのユーザーマニュアルの図解によると、部屋の内装の場合、少数の立ち位置から放射状に撮るのではなく、部屋の中をぐるっと周りながら対面(トラックの内側)向きに撮るべきだ。基線長のあるペアが増えるし、壁の各部が壁から見て正面と左右両方向から重なりを持って撮られる、収束的なカメラの配置("Convergent imaging geometry" in James, M. R., & Robson, S. (2014))となるためだろう。

 

しかしその撮り方だけでは、ベッドやソファなどの家具の陰になって、部屋の隅がよく写らない。そこで、隅でも常に壁に背中をつけて対面を撮る、長方形状のコースの撮影も行った。

 

また、壁に背中をつけても、正面を撮るだけでは、床や天井が十分に写らない。そこで、各立ち位置から見る角度を「斜め下向き」「正面向き」「斜め上向き」のように変えて、寝室を数周した。

 

本来は鉛直方向にも、撮る高さを変えて撮るべきだと思われるが、San Andreas州ではしゃがみ撮影や寝そべり撮影だけは何故か禁止されている上、重力加速度をゼロにして浮遊しながら撮影などというチートを働いては現実の参考にならないので、それは出来なかった。ただし、壁際にソファなどの家具がある場合には、ソファに乗って壁に背をつけた状態で対面を撮る撮影と、ソファの前の床まで出て対面を撮る撮影を、適宜(?)組み合わせている。

 

こうした写真を合わせても、家具の水平な上面や壁に面している部分、部屋の隅にあるものは、十分に形状が復元できない(密な点群が生成されない)ことが多かった。これらに関しては、ある程度接近して俯角をつけて撮る、周りをぐるっと回りながら収束的に撮影をするなどの、補完的な撮影を加えた。


しゃがみ撮影や寝そべり撮影ができないために、天井の撮影にも難儀した。テクスチャに乏しい天井をマッピングするためには、カメラの位置・姿勢が正しく推定されるよう、他の物を広く写りこませるべきだ。

しかし、立った状態で天井を撮ると、十分な距離が取れないのだ。

 

誤って推定されたカメラの位置・姿勢を修正するのはもちろん、誤りを見つけて無効化するだけだとしても手間のかかる作業である。結局、天井を無理に撮ることはせず、多少の雨漏りを覚悟した。

 

 

<撮影の位置と向き>

さて、実際の撮影位置・向きを図示するため、まずは後述のPhotoScanによる処理で出来た密な点群を前借りして(うまくいったことがバレてしまうが)、天井を含む部屋の上半分の点群を削除し、「モデル」ビューのコンテキストメニュー「ビューをキャプチャーする」で、寝室を上から見下ろした図を作ってみた。

 

 

上図に、カメラの撮影位置・向き(黒い線分が付いている方が後ろ側)を重ねると、下図のようになる。

 

 

長方形のコースや丸みのあるコースが見えるだろう。また、復元が難しかった机の上面は上に立って撮ったり、机に乗った植木鉢はぐるっと収束的に撮影したりもしている。

 

繰り返すが、これがベストな撮り方である自信は全くない。また、ベストな撮り方というのは、部屋の形、家具の配置、壁・家具・床の模様、光環境、カメラの性能など、非常に多くの条件に依存するので、実際にはわかるはずもない。現実的には、経験と勘でそこそこの結果を目指すしかないように思う。