(自称、他称を問わず)アナログ・レコードの熱心な収集家は独自の目的=テーマをもち、やみくもに盤を購入しない。私が親しい同好の友人達もそうだ。しかも、幸いにも私と彼らとは収集のテーマが重ならないので、互いに情報を提供しあえる良好な関係にある。とかく収集家といえばライバルで自分の手の内はみせないものだが、テーマが重ならなければ別にどうということはない。買い得な盤を見つけたら代わりに購入したり、相手が欲しがるものを持っていたら無償で提供することだって珍しくない。私の場合はむしろ協力しあえる頼りになる仲間である。
エルヴィス・プレスリーやビートルズという競争が激しい盤の収集家はもとより、60年代サーフィンとホット・ロッドにエレキギター・インスト、フランク・ザッパやブリティッシュ・フォーク、フランク・シナトラとカントリー、ヴィッキー・カー&ジャック・ジョーンズとシャドウズ、60年代ヨーロピアン・ポップス&シルヴィ・バルタンとT・レックス、日本盤の洋楽オールディーズ・シングル、50~60年代前半までの日本発売全米20位シングル、60年代モータウンの米オリジナル盤モノラル&ステレオ・アルバム等々、人それぞれ、好みもさまざまとはいえ、とにかく皆さん日夜家族の冷たい視線を意識しながら「辞められない、止まらない」とレコード収集に励んでます。
人のことは言えません。かく言う私もかつては55年から少なくとも80年代後半のアナログ・レコード時代までは、日米盤混成ながら、全米100にランク・インしたシングル・ヒット曲全部にはじまり、アメリカのパロディ・レコード、フイレスやライフ・ソングやキャプリコーンなどのレーベル全作品、さまざまなアメリカのシンガー・ソングライター全作品などなど。さらに新たな収集テーマが加わってまさにエンドレス状態というありさまなのです。
こうなるとかなり重度の病といわざるをえない。対象になるアーティストや音楽のジャンルが多彩なので「何かがある」ということで、よほどでない限り、手ぶらでレコード店をでることがない。しかし、何かがあることは店の暖簾をくぐったら「買わずにいられない」、「買わされちゃう」ということで辛いと思うこともある。
とにかくあれもこれもと収集の手を広げずに、まず何から集めるか、対象となるレコードのテーマを決めることが大切だ。可能ならば収集のテーマは2~3あつたほうがいいだろう。経済的なことも関係するので、収集テーマはありすぎても、またなにもないというのも困りものである。
収集の対象があるか、なしか、ではレコードを探し、購入するモチベーションもまったく違う。漠然と、行き当たりばったりでレコードを購入し続けてもコレクションの中身の充実は満たされない。時々耳にする「何万枚もっている」と自慢げに語る人もいるが、ようは所有枚数よりもコレクションしたレコードの内容である。
レコード収集の究極の目的、目標は特定のテーマの完全制覇。そして理想は納得でき、同好の仲間にも自慢できる内容と、それに伴った枚数のレコード・コレクションである。