私は学校の顧問に呼び出され、説教をくらわされた。

昨日の部活の作戦会議の話だった。


顧問「なぜ意見を合わせないんだ?」

小林「…周りに合わせた答えが正解だとは思わないので。」

顧問「あのなぁ…作戦会議なんて早く終わらせたいんだ。お前のような奴がいたら終わるものも終わらない。その考え方、やめた方がいいぞ。」


先生から突きつけられたその言葉。


なぜ自分の意思を大事にしない?

それで後から文句を言うことが目に見えているのに。


小林「…意味が分からないです。教師向いてないですね。」

先生「は!?」

私はその場から去った。


大人というものは我慢しなければいけないのは知っている。

下のものは上に立つものに完全服従。反抗なんて許されない。

でもこのことを知っても大人のことが大嫌いだ。



私は屋上の手摺に腕を乗せ、紙パックのお茶を飲む。
すると屋上のドアが開く音がした。


理佐「由依、また顧問に反抗したんだって?」

小林「だって顧問の言うことは気に入らないから。」

理佐「昔から全然変わらないね笑」


この人は友達の渡邉理佐。

小学六年生から高校生までずっと一緒に居て、私は理佐にバレー部を紹介され部活に入ったようなものだった。

そして、親でさえ見捨てたこんな私を見捨てないで居てくれた人。


小林「…何で理佐は私を見捨てないの?私の家族や友達は全員私を見捨てたのに…。」


常日頃から疑問に思っていたことを質問した。

お昼だって一緒に食べてくれるし、移動教室だって一緒に来てくれる。理佐は人気者なんだからこんな私に構わなくてもいい人なのに…。


理佐「昔言ったじゃん、由依のこと絶対離さないって。」


小林「…」


理佐「それと由依が私を助けてくれたから、私が由依を守るよって。」


小林「そんなの忘れなよ…昔のことなんだし」



理佐「由依がなんと言おうとも私は絶対忘れない。」



小林「…」

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私が小学生六年生ぐらいの頃、理佐が学校に転校してきた。

美人でクールだから男子からの人気があり、注目の的だった。

だが、周りの女子は理佐に嫉妬した。

「渡邉さぁ…ほんと調子乗んなよ!」
「○○君のこととったの許さない…いじめてやる!」

そして理佐に対してのいじめが始まった。

最初の頃は靴を隠されたり、筆箱を隠されたりしていたが、徐々にエスカレートしてきて暴力を加え始めたらしい。

渡邉「ゲホッ…ゴホッ…」

「お腹辺りなら周りにバレないし沢山傷つけてもいいよね。」

「てかこいつにそんな勇気ないからバラせないでしょ笑」

女子たちは理佐を嘲笑った。

私は放課後の教室でたまたまその姿を見つけた。

そして身体が勝手に動いた。


小林「…離せ。」

「は?何?」

小林「理佐を離せって言ってるんだよ」

「別に小林さんに関係ないじゃん笑」
「何?あんたもいじめられたいの?」

小林「勝手にいじめればいいじゃん。でも私は理佐と一緒なら耐えれるから。」

「何よそれ!!何で私には向かう!ふざけんじゃないわよ!」

一人の女の子は掃除箱からちりとりを取りだした。
そして私たちをそれで殴ろうとしてきた。


ガンッ


私は理佐を庇うと、私の右頬にちりとりが当たった。
そして、右の目元の辺りが切れてしまい血が垂れてきた。

小林「痛った…!」

ちりとりの先端が尖っていたようでそれが私の目元を切ったらしい。

すると担任がその光景を見つけ、問題となるはずだった。


先生「渡邉と小林が何かしたんだろ?謝りなさい。」


先生はバカなのか?

今まで理佐の物が隠されたりしたことは知ってるのに、そしてこの光景…どう見てもちりとりを持ってる奴を犯人にするのが普通はずなのに。



あぁそうか…親たちがお金持ちだからか。



私はその考えを察した。



そして、私はその時初めて大人の汚さを知った。




小林「親が金持ちだからって子供には優しくしてお金を貰う…お金を貰うためには手段を選ばない…そうなんでしょ、先生。」

先生「な、何を言ってるんだ?そんなことない!」

小林「いいよ隠さなくて。分かってるから。行こ?理佐。」


私は話したことない人の手を初めて手を引いた。

そして空き教室に入る。


理佐「…えっと…ありがとう、小林さん…?」

小林「私がムカついただけだからお礼言われる筋合いはないよ…あと由依でいいよ?小林嫌いだし笑」

理佐「うんっ…由依…!」

小林「明日から私たちどうなるんだろうね、いじめた奴らにも先生にも目付けられてるし笑」

理佐「…さっき由依言ってたじゃん…。私は由依となら耐えられるよ?」

小林「ふふっ、覚えてたんだ笑」

理佐「でも例え目をつけられても私が由依を守るよ。お返しとして!」

小林「いいよそんなの笑」

理佐「私がしたいことなの!いつでも由依を守れるように由依のこと離さないで捕まえとくから!」

小林「拘束じゃーん笑」

初めて私は素の自分の出し、初めて素の笑いを見せた。

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昔のことを思い出し改めて理佐に言った。


小林「…やっぱり理佐は私に構わなくていいよ。バレー部のエースで人気者。こんな反抗的な奴とは関わってちゃダメだよ。」

理佐「…自分の意思を大事にしてるから周りに何を言われようと私は構わないよ。由依が悪く言われてるなら私は怒るし、その事で嫌われたっていいよ。」

小林「どんだけ私の事好きなのさっ…笑」

理佐「…すごい好き。大好き。愛してる。」


すると理佐は私を後ろから抱きしめてくれた。

理佐「由依は強がりだよね…私にぐらいは甘えてよ…」

小林「っ…これからも私と一緒に居てください…理佐が離れたら私生きていけないっ…」

理佐「大丈夫、絶対離さないから。」

小林「…カッコよすぎるよ…バカっ…」

理佐「惚れた?」

小林「…昔から惚れてるよ」

理佐「ふふっ、私も由依に惚れてるよ」


世の中が理不尽で辛くても、私は理佐となら耐えられる。