父親の実家は納屋だけ残して、更地となっている。叔父さんが亡くなった時に従兄弟が処分した。父親はやはりそこは面白くないようで、従兄弟のことはあまり好きでないように感じる。

仕方がないことなのだが、気持ちはわからんでもない。
私自身も父親の実家は大好きだった。フワッとしか覚えていないが、嫌な記憶ひとつない。


納屋の上には父親の部屋が残っていた。
工業系だったので、あれこれ分解したものなどが残っていた。

(お父さん、こっちの道に進んだら良かったのにな。)

父親は上京して染色会社に就職したが、

何年かで倒産した。

そこからはまた同じような染色の会社にいき

また倒産。

そんな、父親の事を

バカにして文句ばかり言っていた母親

だから不倫相手の男はよく見えたんだろうな。

一部上場の会社の男

パートで勤め始め、

そこの会社の男とW不倫を始めた。



父親の昔の写真を見せてもらった。
こちらに上京する前日の家族で映っている写真をみた。両親、姉、従兄弟と写る写真、父親もとても清々しい表情をしていた。
両親は笑顔ではない。

そこは勝手な想像で

これからとても遠い関西に一人で十八歳で送り出す親の気持ちはわからんでもない。

自分と重なった。

父親はこっちにきて、母親と暮らして
幸せだったんだろうか。
もっと優しい人と出会って
幸せに暮らす人生だったらよかったな。