「プライスウォーターハウス・クーパース(PwC)の中国人女性社員が過労死」――。「新浪」や「捜狐」などの中国ミニブログに書き込まれたPwCのスキャンダルに注目が集まっている。

書き込みによると、この女性社員は上海交通大学を卒業したばかりの修士取得者、潘潔さん(25歳)。4月10日に急性脳膜炎を起こして死亡した。近年は過度の疲労が原因で重病を患う、あるいは死亡する若者が増加傾向にあることから、ネットユーザーの間では「潘さんの死亡は過労に原因があるのではないか」という疑問の声が多い。

この書き込みは数万人のネットユーザーによって転載され、中国の多くのサイトでトップニュースとなった。潘潔さん本当に過労死だったのか? 会社側は否定しているが、専門家の多くは「過労が死亡を招いた要因の一つだ」と分析している。

■ 若くしての死に疑問

「白血球1800とはどういう意味か」、「みんなが言うならやめよう」――。潘潔さんが4月1日午後に自身のブログに書き込んだ最後の言葉だ。潘潔さんはこのコメントを午前2、3時に更新していた。この意味深な言葉をかすかな手がかりに、ネットユーザーは「潘潔さんが過労でなくなった」と信じている。

疑問その1: 過労死なのか

『中国網事』の記者は14日、PwC上海事務所を取材。会社責任者は「潘潔さんは2011年3月31日に発熱し、会社を休んだ。その後、上海市第五人民病院で治療を受け、6日に華山病院へ転院、4月10日に亡くなった」と説明。ネットユーザーが訴えた「過労死」について否定した。

健康教育専門家の楊秉輝教授によると、潘潔さんが若くして死亡した背景にはさまざまな原因が考えられる。人によって体質は異なるが、過労は免疫力低下につながる。またウィルスが脳膜に入った時点で適切な治療が施されなかったことも要因といえる。

疑問その2: 勤務体制に問題はなかったのか

ネットユーザーは4大会計士事務所のプレッシャーを指摘している。潘潔さんの幼なじみである余天寅さんによると、潘潔さんの話では、毎年1月から4月は最も忙しい時期で、残業はほぼ毎日、休みも返上で、いつも帰れるのは午前3時~4時だったという。

外資系企業においては潘さんのように「必死に仕事する」ことは珍しいことではない。4大会計士事務所の社員の多くは「体面、高い賃金、魅力的なキャリア」を魅力に入社するが、周りはエリートだらけで、社内の競争が激しい。若い人は徹夜もいとわず仕事し、健康に問題を生じかねない。

疑問その3:誰が責任を取るのか

上海の健康専門家、王鼎来氏は、「過労は潘さんの死亡の大きな誘発原因だと考える。仕事と休みのバランスを取り、早く病院にかかっていればこうした悲劇を防げたかもしれない」と話した。

過労が死亡の誘発原因である以上、潘潔さんの死に対し会社はどのような責任を取るべきか? 上海財経大学法学院の王全興教授は「ホワイトカラーの間で、過労は社会問題、法律問題でもある。中国はいま、『過労』についての法律が整備されていない。残業時間を規定しているが、残業時間のオーバーと死亡や負傷、病気の因果関係についての明確な基準がない」と指摘している。

■ 会社側は補償について触れず

PwC上海事務所市場部の担当は、「11日午前に潘さんが亡くなったことが分かってから、直ちに幹部会議を開き、潘さんの家族を全力で応援することを決定した。家族に対してできる限りのサポートを提供する。潘さんの同僚に心理カウンセリングも行い、みながこの悲しい時期を平穏に過ごせるように努力する」と述べたが、補償金については一切触れなかった。

「中国網事」の記者は上海人力資源・社会保障局を取材したが、同局の関係者は「この事件に注目している」と答えるにとどまった。(記者:兪苑 潘旭 黄安 謝櫻)

(翻訳 李継東/編集翻訳 松尾亜美)