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安倍のみクス
日本人には意外!?
海外はアベノミクスをどう評価しているか
2015年9月16日 DIAMOND online
外国人が安保法案よりも注目するのは
アベノミクスの行方
円安進行と株価上昇。長年の経済的な停滞感やデフレ経済からの変化はあったものの、安倍政権には脆さも見えており、先行きは明るいとは言い難い。また、中国の株価が下落していることを受け、日経平均株価も下げ基調を続けている。
日本では、スキャンダラスな閣僚の辞任劇や、世論を無視した安全保障関連法の改正案の可決への動きが騒がれる中、海外では、アベノミクス10+ 件に対して、より冷静な疑問が沸き起こっているようだ。
外的要因をいったん横に置き、国内要因だけで見た「アベノミクス10+ 件」はどういった方向性を持つべきなのだろうか。今までの成果を振り返るとともに、今後日本が持続的な経済成長を続けるには何が必要なのか、海外の10+ 件エコノミストの視点から考察する。
持続的な円安傾向から転じ、円高に進む動きも見られる為替の不安定さや、中国経済の失速による影響が懸念される一方で、日本経済の内側を見れば短期的には、緩やかに経済が復調していくと見られている。ただ、アベノミクス10+ 件の成績は現状では是非を問うことが難しいとの見方が強い。
日本政府主導の量的緩和を主な要因に円安が進行し、株価が大幅に上昇した。日本経済を牽引する輸出企業の利益を押し上げ、資本支出や賃金上昇につながり、消費者物価指数にも好影響を与えるはずだった。だが、蓋を開けてみれば、消費者物価指数は、2013年から14年にかけて1.3%しか上昇しなかった。また、上昇要因も円安による輸入コスト上昇分と分析されている。インフレ率の目標値2%の達成は難しく、1%を少し上回る数値に留まる見込みだ。
石油価格の下落は輸入企業のコストを押し下げるとも見られている。その浮いたコストを、賃金上昇にまわせれば、賃金上昇による消費者物価指数の上昇や、インフレ、経済成長率の増加につながる可能性もある。
株価上昇以外では日本経済がもたつく中、日本企業は、成長が著しいアジアへの海外進出を、より一層積極的に進められていくと見られる。アジアのマーケットは、成長が早く、利益率が高い。さらに、マーケットの成長が持続していくと考えられるためだ。
消費増税を巡るドタバタで
海外の投資家が募らせる不信感
海外直接投資が円安により減少することが危惧されたが、今のところ影響はさほどないことが、日本がアジアのマーケットを重要視している証明となる。アジアへの直接投資は、13年が3.9兆円、14年が3.8兆円だった。12年は2.7兆円だったから、投資額の増加は維持していると言える。中国との政治的な衝突により、中国への対外投資が減少したものの、そのぶんの資金がASEAN地域への投資に向かった。
05年に中国、香港、台湾、韓国、タイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、インドのアジア10ヵ国の合計GDPが日本のGDPを上回って以来、その差は拡大を続けており、成長著しいアジアマーケットは日本の投資家にとって魅力的に映るはずで、これからも資金が流入することがアジア各国で期待される。
ただ、海外の投資家の間では、アベノミクスへの不信感が募りはじめている。
一番の理由は、消費増税を巡るドタバタだ。アベノミクスが14年に実施した増税の影響もあって経済の成長率は鈍化し、消費税率10%へのさらなる引き上げは17年に延期された。増税は、政府の財務状況を改善する策として活用されるはずだったが、これを簡単に延期してしまったのだ。
世界一の借金大国である日本の財政状況の改善は、海外の投資家の間では重要なポイントとなっている。是正の具体的な案がないまま延期してしまったことは、赤字を解消する気がそもそもないと思われてもおかしくなかった。
この応急処置的な対応が国際的不安感を募らせている。アベノミクスを打ち出したまではよかったものの、政府の大きな収入源になるはずだった増税を簡単に延期してしまったのだが、その収入減に対する新たな政策は具体的に示されていない。
また、増税を延期しても、中長期的には、経済の失速リスクは拭い切れていない。再び増税に踏み切れば、消費は冷え込み、税収は目標に及ばず、財政政策の緊縮を余儀なくされ、経済への大きな打撃があるかもしれない。金利の上昇、リスクプレミアムの上昇、国内貯蓄の低下、信用格付けの格下げなどへのリスクが懸念されている。
人口減少という大問題に
有用な解決策が示されていない
シンガポール大手銀行DBSのエコノミストMa Tie Ying氏は、アベノミクスの今後を判断する焦点として、生産性の低さや競争力の低下にどのように政府が対策を打っていくかに触れている。
本質的に経済が成長していくには、人口が増加することが分かりやすい判断材料となる。それとは逆に、日本は出生率が低く、超高齢社会に突入していることからも、労働人口が減っており人材育成が急務となっている。ただ、抜本的な解決策は見えず、どうしても熟練者の定年を引き伸ばさざるを得ない状況だ。
人材育成が思うように進まず人的生産性の向上が遅れているため、年々生産性は落ちていくと見られる。消費力がある若者も年々減るということであり、経済失速要因となりかねない。これに対する具体的な政策が求められる。
Ma Tie Ying氏も「競争力とは、為替だけで表されるものではなく、人件費や生産性と一緒に計らないといけない。また、科学技術や国のブランド力など、数字で計れないものも含まれる。日本政府は、円安で得た資金を技術革新や人的資源の改善などの正しい領域に使用しなければ、長期的な成功にはつながらない」と述べている。
労働力強化の対策として考えられるのは、外国人労働者の受け入れだ。技術の習得に貪欲で、消費欲も消費力もある人口が増えることが期待できる。ただ、社会の同質性が高いこともあり、異国からの労働者が容易に日本の雇用システムに受け入れられるとは思えない。シンガポールでも、日本への食や文化、質の高い商品に対し好意的な意見を持つ人が多い一方で、日本の働き方を敬遠する声も多い。
また、女性の社会進出やフレックス勤務などを活用した雇用形態の受け皿を増やすことも、スピーディに動いてはいない。長年日本の雇用システムであった年功序列を覆すのは難しく、このシステムが外国人労働者が日本で働く足枷になる。また、フレックス勤務者にとって働き方に理解を得やすい職場環境の創出には課題感も残る。この問題は、民族的な独自性を持つ日本にとって早期に改革され得ることではない。
「小泉元首相に続く変革者」
アベノミクス評価の声も
アベノミクスを評価する声もある。グローバル経済が専門のライターであるCouncil on Foreign RelationsのJames McBride氏は「小泉元首相や安倍首相は、バブル以降これといった政策が打ち出されなかった中、一定の変化を起こしたことは評価されるべきだ。もし、安倍首相が構造改革に注力できるとすれば、日本経済は長期的に成長し、アベノミクスの政策が世界にとっての模範ともなり得る」と述べている。
アベノミクスで打ち出された改革案の具体策が決まれば、国際的信任という追い風を受ける可能性は十分にあり得る。
アジアの金融ハブとも言われるシンガポールの元プライベートバンカーは「アベノミクスで株価は上昇したけど、長期的にどうなるかは不透明という意見が多い。今の段階でアベノミクスの今後を今ある判断材料で語るのは難しいが、少なくとも安倍首相は任期を全うして存在感を示している」と述べた。
これらを踏まえると、安部首相は視点を変える必要があるように感じる。現政権ではアベノミクスで何をするかに焦点が集まってしまっているが、それよりどうやってするか、なぜするのかが日本への信頼感を高める。
安倍首相に求められるのは、国民の意見を反映して日本が向かう先を訴える。そして具体的な政策を打ち出し、進めていく。結果が出なければ責任を取って辞職するのではなく、改善策を提示して取り組む。
その断固たる姿勢という根本的な面で、不信感を覚える期間が続いた。そこを省みて、なぜその政策を行うのか、それは国民のためなのか、どうやって実行するのか、進捗状況に対しどうやって改善するのかを示し、行動に移し続けることが、日本が国際的に信頼を得るための根幹となっていくのではないだろうか。
(赤江龍介 & 5時から作家塾(R))
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