「先に就職した方が1年間相手に小遣いをあげること」
と私と妹は親に無理矢理約束させられたことがあった。
それから十数年後、先に就職した私は律儀にその約束を守り、毎月家に帰っては小遣いを渡す代わりに妹に服を1年間買い続けた。
「繕い裁つ人」はそんな服との関わりを思い出させてくれる映画だった。
神戸の高台にある「南洋裁店」。
2代目店主の南市江が作る服はとてもエレガントで、新作はいつも即完売。だが扱っている店は1店だけだった。
市江の服に魅せられた大丸神戸店に勤める藤井は、ブランド化の話を持ち掛けるが、“頑固じじい”のように頑なな彼女は、けんもほろろに断る。
「2代目の仕事は1代目の仕事を全うすること」。
先代の祖母から付き合いのある客の服を仕立て直し、時折先代のデザインを流用した新作を作るのが市江の仕事の全てだった。
そんな市江に藤井は市江のオリジナルの服が見たいと諦めずに通い続けていた。
ある日、年に一度の夜会の日に藤井も給仕として呼ばれる。
先代が始めたこのダンスパーティーは、ドレスアップした服を着て楽しむ30歳以上しか参加できない会だった。
そこに参加する人々の先代の服をこよなく愛する気持ちに触れ、藤井は市江のオリジナルの服を願いながらも「あなたはそのままでいい」と言って去り、東京へ転勤してしまう。
しばらくして藤井の妹にばったり会った市江は、兄の服への情熱が、体の不自由な妹のある出来事が原因だったことを知る。
そして、市江は誰にも言わずに秘めていたある強い思いに心を揺さぶられ始めるのだった。
この映画の舞台に神戸ほどふさわしい場所はないだろう。
神戸系ファッション(私のイメージでは上品なお嬢様ファッション)という言葉があるぐらい昔から“モダン”や“ハイカラ”という言葉が似合うオシャレな街だ。
神戸発のブランドも数多い。
QUEENS COURT
VICKY
PREMIUM by VICKY
UNTITLED…等々
共通するのは、流行にとらわれないコンサバティブでエレガントな着こなし。
松陰高等学校の制服もそれを象徴する一つだと思う。
冬は紺、夏は白の膝下丈のワンピースでウエストをベルトで締め、胸には赤い学校のロゴの刺繍。清楚な雰囲気漂うこの制服はなんと90年前からずっと変わらない。
こういう装いへのこだわりが今も素敵なレトロビルを擁する神戸の街並みととてもマッチしているように思える。
今、服は衣料量販店によるファストファッションの時代であり、安い服をどんどん買い換えて楽しむ人が多い。
この映画はある意味時代の波に逆らった作品である。
だが見終わった後強く心に残った人にはきっと洋服との様々な思い出が蘇ってくるだろう。
映画では先代の仕事を愚直に守り続けたいという主人公の仕立て屋としてのプライドが、いつしか今生きている自分にしかできないことをしたいという思いへと変わっていく。
そして初めて市江はオリジナルの服を作る。
そんな心のこもった服はどんな着心地なのだろうか。
自分に合う服を探すのではなく、自分に合わせた服を仕立てる。
50歳になって、そろそろ一生着続けられる人生に寄り添う服を持っておくというのも悪くないと思った。
と私と妹は親に無理矢理約束させられたことがあった。
それから十数年後、先に就職した私は律儀にその約束を守り、毎月家に帰っては小遣いを渡す代わりに妹に服を1年間買い続けた。
「繕い裁つ人」はそんな服との関わりを思い出させてくれる映画だった。
神戸の高台にある「南洋裁店」。
2代目店主の南市江が作る服はとてもエレガントで、新作はいつも即完売。だが扱っている店は1店だけだった。
市江の服に魅せられた大丸神戸店に勤める藤井は、ブランド化の話を持ち掛けるが、“頑固じじい”のように頑なな彼女は、けんもほろろに断る。
「2代目の仕事は1代目の仕事を全うすること」。
先代の祖母から付き合いのある客の服を仕立て直し、時折先代のデザインを流用した新作を作るのが市江の仕事の全てだった。
そんな市江に藤井は市江のオリジナルの服が見たいと諦めずに通い続けていた。
ある日、年に一度の夜会の日に藤井も給仕として呼ばれる。
先代が始めたこのダンスパーティーは、ドレスアップした服を着て楽しむ30歳以上しか参加できない会だった。
そこに参加する人々の先代の服をこよなく愛する気持ちに触れ、藤井は市江のオリジナルの服を願いながらも「あなたはそのままでいい」と言って去り、東京へ転勤してしまう。
しばらくして藤井の妹にばったり会った市江は、兄の服への情熱が、体の不自由な妹のある出来事が原因だったことを知る。
そして、市江は誰にも言わずに秘めていたある強い思いに心を揺さぶられ始めるのだった。
この映画の舞台に神戸ほどふさわしい場所はないだろう。
神戸系ファッション(私のイメージでは上品なお嬢様ファッション)という言葉があるぐらい昔から“モダン”や“ハイカラ”という言葉が似合うオシャレな街だ。
神戸発のブランドも数多い。
QUEENS COURT
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UNTITLED…等々
共通するのは、流行にとらわれないコンサバティブでエレガントな着こなし。
松陰高等学校の制服もそれを象徴する一つだと思う。
冬は紺、夏は白の膝下丈のワンピースでウエストをベルトで締め、胸には赤い学校のロゴの刺繍。清楚な雰囲気漂うこの制服はなんと90年前からずっと変わらない。
こういう装いへのこだわりが今も素敵なレトロビルを擁する神戸の街並みととてもマッチしているように思える。
今、服は衣料量販店によるファストファッションの時代であり、安い服をどんどん買い換えて楽しむ人が多い。
この映画はある意味時代の波に逆らった作品である。
だが見終わった後強く心に残った人にはきっと洋服との様々な思い出が蘇ってくるだろう。
映画では先代の仕事を愚直に守り続けたいという主人公の仕立て屋としてのプライドが、いつしか今生きている自分にしかできないことをしたいという思いへと変わっていく。
そして初めて市江はオリジナルの服を作る。
そんな心のこもった服はどんな着心地なのだろうか。
自分に合う服を探すのではなく、自分に合わせた服を仕立てる。
50歳になって、そろそろ一生着続けられる人生に寄り添う服を持っておくというのも悪くないと思った。