フリーパス無差別鑑賞企画(23)「復讐と絆のコンゲーム」 | ◆◆ ロイの書斎 ◆◆

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頭に浮かんだことをエッセイ風に書き綴っています

詐欺師はその手口などから様々な呼び方をされる。
手配師、ポン引き、ペテン師、山師、美人局…
詐欺を題材にした「カラスの親指」の“カラス”もそんな詐欺師の呼び名の一つであるが、親指はなんなのかというと、これは映画を観るまでわからない。

コンビを組んで間もない2人の詐欺師タケとテツは、仕事の最中偶然スリの少女まひろと出会う。
家賃が払えずアパートを追い出される寸前だというまひろにタケは引っ越したばかりの古い借家(それまでに住んでいたアパートは不審火で燃えてしまう)に一緒に住まないかと誘うとまひろは本当にやってきた。
しかもまひろに頼りっぱなしの姉のやひろとやひろの恋人の貫太郎というやっかいな居候付きで。
赤の他人5人の奇妙な共同生活は意外にもとても楽しいものになっていくが、ある時テツが彼女達の荷物の中からバッグいっぱいに金の入った封筒を見つけたためにタケはテツに告白する。
実はその金はタケがヒグチという闇金業者に無理やりやらされていた取立てで追い詰められ自殺した母親の子供達に送っていたもので、その子供達がなんと偶然にもまひろとやひろだった。
共同生活を提案したのは彼女達に対するタケの贖罪の意味が込められていたのだ。
だが、幸せな日々も長くは続かなかった。玄関が放火され怪しげな男達が周りをうろつき始めた時、タケはまひろ達に自分との関係は伏せながら8年前の暗い過去を話し始める。
これはタケの裏切りで警察に逮捕されたヒグチという男の復讐なのだと。
まひろ達はヒグチが自分達の母親を死に追いやった男だとわかり、逃げようと言うタケに我慢するのはもう嫌だと拒む。
その時やひろの恋人貫太郎が大事にしていた箱から拳銃を取り出した。それは本物そっくりの空気銃。
「偽物で1本取るのは、お二人の得意技じゃないですか」
こうして5人はヒグチに一世一代の詐欺で復讐することを決意した。名づけてアルバトロス(あほうどり)作戦が動き出す。

鮮やかな詐欺の手口を披露する冒頭からクライマックスの大仕掛けまでコンゲームの名作「スティング」を思い出すが、そのテクニックと巧妙なプロットもさることながら2時間40分という長丁場をまったく飽きさせずに牽引する様々な面白さが詰まっている。
見逃してしまうぐらいに小さなやり取りやカットにまでヒントが隠されたきめ細かい伏線の脚本は秀逸で、長尺になった最大の理由でもあるストーリー全体をひっくり返すようなどんでん返しが本作には待ち構えている。
多くの人がこれで終わりと思った箇所からまた驚きの一捻りがあるのだ。
これがテツがタケに話しをする「親指」にまつわる親子の絆へと結びつくと予想できる人はなかなかいないのではないだろうか。
親指だけがすべての指の顔を見ることができる。
すべてをお膳立てしたのは遠くから見守っていた「親指」だったのである。