淡い紫色の花が活けられた、床の間。
燻した鉄の色の、花瓶に活けられたその花。
その花は、チリギワも潔いのだろうか。
そんな事を考えつつ酒を口に運ぶ、ホウさんです。
六畳の密室。
障子窓らしいものはありますが、飾りに過ぎません。
障子の向こうは、厚く塗り込められた壁に過ぎませんし、
入ってきた襖戸の上の欄間も、飾り物に過ぎません。
襖戸を閉め切ってしまうと、不思議なほど物音が入ってきませんし。
何か特殊な素材で出来ているのだろうか。
ホウさんの、そんな穿った目が、襖に向けられます。
権藤: どうだい。旨いだろ
権藤さんが、運ばれてきたマグロを突付きながらそう言います。
ホウ: ・・・・・
ホウさんはそんな権藤さんを見て、首を傾げました。
気がそぞろと言うか、心が此処にありません。
権藤: あ、口に合わんかい
ホウ: いえいえ、美味しいです
権藤: そうかい。そりゃ良かった
そう言う、権藤さんの、視線の先が分かりません。
ホウ: 権藤さん。どうしたんですか。何か
権藤: どうもしねぇよ。ルキスのガキどもが、いや、なんでもねぇ・・・
権藤さんは、途中で話をきると、
気持ちを切り替えるように、表情を変えました。
権藤: 実はいい話があるんだ
権藤さんは、それまで迷い箸のように、
煮物やら刺身やらを突付いていた箸を止め、
その箸で角煮を突き通すと、一気に口に運び込みました。