あっという間に葉月は過ぎ去って、長月が訪れた。九月の初日は既に秋風が吹いていて、ああ私の季節なんだなと傲慢にも感じた。
夜から都内に繰り出す愉しさを覚えてしまった。空いている店内を自由に見て、陽の翳る様子に少し怯えながら服屋をはしごして、ダイナーみたいな素敵なお店でディナーにありつく。最後はほっとする温かい甘い飲み物で締める。肌寒い今日だから出来たこと。
秋冬は好きさ。彼らは誰に対しても平等に冷酷だから。
そして、三年前の二月一日をふと思い出してしまった、何もかもに絶望して自分が何なのか分からなくなっていたあの頃の自分が、あるものに出会って生まれ変わった日。
それ自体はあの頃のままではなく移り変わってしまったけれど、それは誰のせいでもないし、私がどうこういうことじゃない。私の思い描いた勝手な理想と現実の未来が矛盾してしまっただけの事。
もう一度、何も諦めない努力がしたくなってきた。
私が今怯えていたのは、いつでも掴める訳では無いけど今だけ貪れる怠惰な日常を平均として考えることで、私が身の丈知らず、必要以上のことをしているのではないかという不安。
でも全て達成できると思い込むのは自分次第だ。今ならきっと。私が途中で壊れても、拾い集めてくれる信頼できる人々がいるうちに、やりたいことはやっておくべきなのだ。