トンネルと幽霊 深夜のトンネルに佇む幽霊 俯いたその表情はうかがえしれず 虫の音すら遠い静寂と影に、人は震えあがる ある人は悲鳴を上げて逃げ出し ある人は心を握りしめて無視を決め込む 誰もが誰も距離をとる 誰もが誰も嫌忌する トンネルと幽霊それだけで 表情が見えないそれだけで 「今日は月がきれいですね」 僕は幽霊にそう投げかける 幽霊は僕を見つめると、トンネルを抜け出し、夜を見上げる 「そうね、月ってこんなにきれいだったのね」 そう呟いた彼女の表情は、誰にも教えたくないぐらいきれいだった