ご存じ怪盗猫娘 最終話 猫は自由を愛す  | 高須力弥のブログ「ローレンシウム荘事件」

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最終話 猫は自由を愛す  


 1

 その部屋の床一面には多くのロボットの残骸が散らばっていた。

「ここはかつてのルートヴィヒの研究所だった……。ルートヴィヒが死んだ後はぼくが引き継いで使っている……。ぼくもお前もこの場所で生まれたのだ……。」

 


 ルシファーはブレスレットを装着して叫んだ。
「サタンモード!」

 ルシファーのマントが黒い翼に変化して、2本の角と長い尻尾が生え悪魔のような姿になった。

「どうしても僕に従わないというなら仕方がない。リリス。先にインフェルノで待っていてもらおう。」

「私はもう過去には囚われない!みんなの未来を守るため、ルシファー!お前の野望を絶対に止めてみせる!」

 猫娘はルシファーにスタンロッドを叩きつけた。

「ふふふ……ルートヴィヒが作りあげたこのデビルレザーにはスタンロッドの機能は一切通用しない……。」
ルシファーはほくそ笑んだ。


 2

 その時、ユーゴが部屋に入って来た。

 続いてマナブ、フトシ、カケル、シーザー、八木沢、松池も助けに来た。

 

 

 

 

 


 ルシファーの手から放たれた光線が猫娘の胸を直撃した。

 猫娘は床の上に倒れた。

「猫姐さん!!」
ユーゴが叫んだ。

ユーゴが猫娘に駆け寄り、猫娘を抱きしめて言った。
「猫姐さん!お、おれは……あなたの事が好きなんだ!!だから死なないでくれ!!」

 ユーゴが猫娘に口づけをした。

 すると猫娘の全身から金色の光を放ち、白い衣を纏った女神のような姿に変身した。

 浮き上がった猫娘が放った光がルシファーを包み込んだ。

「なんという優しい暖かい光だ……。ぼくも……パライソに……行けるのか……」

「ルシファー。いいえルートヴィヒ。あなたは誰も憎しむ必要は無いのです。さあ、この母の胸でお眠りなさい……。」

「か……あ……さ……ま……」

 ルシファーは倒れ、元の姿に戻り目を閉じ動かなくなった。


 3

「怪盗猫娘様。邪魔者を始末してくださってありがとうございました……。」
部屋の奥の扉が開きグレイが現れた。



「貴様!よくもまあ抜け抜けと……」
ユーゴが叫んだ。


「これをご覧なさい。」
グレイが言った。

 壁が開き十字架が現れた。
そこには神堂十蔵が生きたまま磔にされていた。


「神堂十蔵!生きていたのか!」
ユーゴが叫んだ。

「イコマイヤーで起こった出来事はルシファー様が仕組まれた芝居でした。」
グレイが言った。
「ルートヴィヒ様もルシファー様も私の手駒としてよく働いて下さいました。ああ、それからウィルスは既に私が無効化してありますのでご心配無く。十蔵様はブラックジャックを殺したのはルートヴィヒ様だとお思いになっていらっしゃっていましたが、本当はこの私なのです!」

「何~ッ!?お前一体何歳なんだ!?」
八木沢が叫んだ。

「私が何歳だったかはもう忘れてしまいました。それに私のこの顔は素顔ではありません。私はどんな顔にでも変装出来るのです。」

「私の目的は全ての人類を私の思い通りに動く操り人形にする事です。何も考えずただ私の指示に従って生きればいい……。これぞ人類にとって真の楽園!」

「アレマ天導会の黄金の女神像は「大災厄」以前の旧時代に作られた洗脳装置の試作品でした。しかし、全人類を完全に支配するには力が足りませんでした。」

「私に幻覚は通用しません……。怪盗猫娘。お前の力で私が神として君臨する世界「光の帝国」の礎を築くのです!」


 4

 その時、マナブが抱えていたピコの全身が輝き、倒れていたルシファーと合体して一体化した。

「猫娘。ぼくはルシファーと合体する事によって真のアダムとなりました。アダムとイブが力を合わせる事によって真の力が発揮されるのです。」

女神の姿の猫娘と光輝く真のアダムが一緒にグレイに光線を浴びせた。

「ぐふっ‼」
グレイは壁際まで吹っ飛んでいった。

 猫娘は本来の黒いスーツの姿に戻っていた。

「姐さん!今だ!」
ユーゴが叫んだ。

猫娘「夜の世界をひた走り!」 

ユーゴ「悪を見据える二つの目!」 

猫娘「その名も怪盗猫娘!」 

二人「悪党どもを退治いたします!!!」

猫娘とユーゴが一緒にグレイに飛び蹴りを食らわせた。

 グレイはその場に倒れた。しかし意識を失ってはいなかった。   

「ふふふ……どうやら今回は引き下がるのが上策のようですね……。」
グレイは懐から出したスイッチを押した。

「時限爆弾によってあと10分でこの館は崩れ去ります。さらばです。怪盗猫娘。命があったらまたお会いしましょう。」
グレイはルシファーが降りてきたエレベーターに飛び乗り、上がって行った。

 アダムが十字架から十蔵を解き放った。
「お父様……。ぼくはお父様に申し訳ない事をしていました……。」

「ルシファー。私はお前が死んだルートヴィヒの生まれ変わりだと思ってお前のやりたいようにやらせてきた。しかし、それは私の間違いだった……。ルシファー。私を許してくれ……。」
十蔵がアダムに言った。

 一同は元の道筋を引き返し、1階で博士と合流した。

「おお!待っておったぞ。猫娘を無事助け出したようじゃな。」
博士が言った。


 アダムがタマスケに触れた。
「サザンクロス、いえ、タマスケのエネルギーを充填しました。早く脱出しましょう。ここに隠し通路があります。」

 アダムが壁のスイッチを押すと、壁が開いて隠し通路が現れた。


 5

 全員が館の外に脱出したとたん、神堂邸は爆音をあげて崩れ去って行った。

「ぼくはもうみなさんとはお別れです。猫娘さん。後をよろしくお願いいたします。」
 そう言うとアダムは機能を停止したバットモードのピコと意識を失ったルシファーに分離した。

「ピコ!」
猫娘が叫んだ。

 博士がピコを調べて言った。
「ピコはただのバッテリー切れじゃな。イコマイヤーに帰って充電すれば元に戻るはずじゃ。」

「お前ら!今日の所は特別に見逃してやるからさっさと帰れ!だが次に会った時は必ず捕まえてやるからな!」
八木沢が叫んだ。

「先輩!いつもそうだからいつまでたっても出世出来ないんですよ……。」
松池が言った。



「姐さん。帰りましょう。俺たちの船に。そしてまたみんなで一緒に夜の冒険を続けましょう!」
ユーゴが猫娘に言った。

マナブ、フトシ、カケル、シーザーが高らかに歓声をあげた。


 6

 それから数日後の朝。
マオは玄関を出て母親とピコに言った。
「行ってきます!お母さん!ピコ!」

 

 

「おはよう!マオ!」
途中で想一と未央奈に出会った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう!想一!未央奈!」

爽やかな秋の風がふいていた。



ご存じ怪盗猫娘 完






Special thanks to 
石ノ森章太郎
手塚治虫
永井豪
藤子・F・不二雄
藤子 不二雄Ⓐ
水木しげる
諸星大二郎
モンキー・パンチ

横山光輝
(敬称略)




怪盗猫娘は今夜も夜の街を駆け巡っているのだろう。