1
ユーゴとシーザーはカッシウスの入って行った赤い扉に入った。
部屋の中央ではカッシウスが待ち構えていた。
部屋の奥には他の部屋と同じようにもう1つ扉があった。
カッシウスがフードマントを脱ぎ捨てた。
その下から現れたのは長槍を携えた筋骨隆々とした短髪の男であった。
「改めて自己紹介しよう!我はルシファー様を護るためにルートヴィヒ様によって作られたアンドロイド三魔将が首席カッシウスである!ルシファー様の命によりお前達にはここで朽ち果ててもらう!」
カッシウスが名乗りをあげた。
「俺は怪盗猫娘を支えるクロネコブラザーズの長男スペードのユーゴ!こいつは俺の相棒のシーザーだ!あんたには恨みは無いが、猫娘姐さんのために力づくで鍵を渡してもらうぜ!」
ユーゴも名乗り返した。
カッシウスは長槍を頭上に掲げ、大きく振り回した。
ユーゴはカッシウスから距離を取り、攻撃のチャンスをうかがった。
カッシウスは長槍を正面に構え、ユーゴに向けて走り出した。
その横からシーザーがカッシウスの持つ長槍の柄を噛み砕いた。
「よくやったシーザー!」
ユーゴが叫んだ。
「くっ!小賢しい真似を!」
カッシウスが叫んだ。
シーザーは飛び上がって再びカッシウスに襲い掛かった。
「ふん!!!」
カッシウスはシーザーの腹部に正拳突きを食らわせた。
シーザーは呻き声をあげて床の上に転がり、意識を失った。
「シーザー!」
ユーゴが叫んだ。
「邪魔者は消えた……。ここからは我とお前の1対1の戦いだ……。」
カッシウスが言った。
2
ユーゴとカッシウスの素手での戦いとなった。
カッシウスの激しいパンチの連打に、ユーゴはかわし続けるのが精一杯であった。
そしてついにユーゴは顔面にパンチを喰らい、眼帯が千切れ飛んで行った。
ユーゴは床の上に倒れ付した。
「若き戦士よ……この我を相手によくぞここまで闘った。安らかに眠りに就くがよい……。」
カッシウスが床の上のユーゴに言った。
「ちくしょう……体が動かねえ……この俺もこれまでなのか……マナブ、フトシ、カケル……猫姐さんを頼む……。」
ユーゴの脳裏に親しい人々の顔が走馬灯のように駆け巡った。
「猫姐さん……マナブ……フトシ……カケル……シーザー……おやじ……母さん…………母さん!?」
ユーゴは不意に思い出した。
ユーゴの母ユウナの家系には稀に金色の瞳を持つ者がいた。
その瞳はある特別な力を宿していて、その力を1回使うとその両目は一生見えなくなるのであった。
ユーゴは母から左目に金色の瞳を受け継いでいた。
トウマはその力をうかつに使ってしまわぬようにユーゴの左目に眼帯をかけて育てていた。
ユーゴが左目を開きカッシウスを見据えた。
ユーゴの左目の瞳は3秒先の未来を視る金色の瞳であった。
右奥の燭台が倒れる光景が見えた。
ユーゴは全身の力を振り絞って立ち上がり、右奥の燭台に向かって走り出した。
「無駄な事を!」
カッシウスはユーゴの後を追った。
突然、燭台がカッシウスの上に倒れてきた。
「何イッ!!!」
カッシウスは倒れてきた燭台の下敷きになった。
すかさずユーゴは動けなくなったカッシウスの脳天に渾身の飛び蹴りを食らわせた。
カッシウスの頭部が砕け、電子部品が周りに飛び散った。
倒れていたシーザーもようやく動き始めた。
「見える!見えるぞシーザー!」
ユーゴはシーザーに叫んだ。
「どうやら俺の右目は普通の瞳だったから、視力を失わずに済んだようだな……。」
そしてユーゴはカッシウスの体から鍵を取り出した。
「今助けに行きますからね!猫姐さん!」
ユーゴはシーザーとともにその鍵を持って奥の扉に進んで行った。