ご存じ怪盗猫娘 第5話 危険なぬいぐるみ | 高須力弥のブログ「ローレンシウム荘事件」

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 今から10年前、闇の世界に知れ渡っていた5人組の義賊「ブラックジャック」がいた。
彼らは社会的な悪人からしか盗まず、決して殺しはしなかった。

 その頭は通称「ジョーカーのトウマ」と呼ばれていた。
彼は左目に眼帯をつけ、海賊のような服を着ていた。

 その配下に4人の若い女盗賊がいた。
彼女らはスペードのユウナ、ダイヤのマドカ、クラブのフユカ、ハートのカスミと呼ばれていた。
4人の女たちはトウマを愛し、トウマの手足となって盗みを手伝っていた。

 やがてトウマと4人の女の間に子供が誕生した。
子供はいずれも男の子であった。
子供たちは母親の名前から1字をとってユーゴ、マナブ、フトシ、カケルと名付けられた。


 ある夜、トウマと母親たちが仕事を終えてアジトに帰ると、帰りを待っていたはずの四兄弟の姿はなかった。
部屋には手紙が残されていた。

「トウマ。お前の息子たちは預かった。返して欲しければ○○ビルの○階の○号室に来い。 神堂」
5人はすぐさま○○ビルに向かった。

 トウマと4人の母親たちが部屋に入って来た。

四兄弟は縄で手足を縛られて部屋の中央に置かれていた。
「ユーゴ!マナブ!フトシ!カケル!」
「おやじ!おふくろ!」8歳のユーゴが叫んだ。

四兄弟とトウマの間は硬質ガラスの壁によって遮られていた。
壁は声を完全に遮断していた。

部屋の中に機械的に生成されたような声が響いた。
「よく来たなトウマよ。あのロボットをどこに隠した?素直に言えばお前の息子たちは返してやろう。」

「××××の××××だ!」
声にトウマが答えた。

「よくぞ答えた。約束通り息子たちは返してやろう。」
声が続けて言った。
「しかし!それでは私の怒りが収まらぬ!お前たちの命によって償ってもらおう!」

その直後、閃光がユーゴの目をくらまし、凄まじい爆音が響き渡った。 
そしてガラスの向こう側が爆煙に包まれた。
「おやじーっ!おふくろおおーっ!」
ユーゴたちは力の限りガラスに向かって叫んだ。

煙が晴れた時、ユーゴたちの目に映ったのは満身創痍で倒れ伏している父母たちの姿だった。

ユーゴにはトウマが自分に向かって何かを語りかけているように見えた。
しかし何を伝えようとしているのかはユーゴにはわからなかった。

ユーゴにはそれから後の記憶がなかった。

 その後、4人兄弟は虎のシーザーと一緒に父の残した船「イコマイヤー」を駆って、盗賊四兄弟として闇の世界を生きて行く事になった。




 その日は想一と未央奈が2人でショッピングモールに来ていた。
近づいているマオの誕生日のプレゼントを買うためだった。


 2人は玩具店に入って行った。
「あっ!これこれ!この前マオが欲しいって言ってたやつだ!」
未央奈がネコのキャラクターのぬいぐるみを指差して言った。
「ちょっと高いけど、私と想一のおこづかいを合わせれば買えるね!」
2人はそのぬいぐるみを買って店を出た。

 その後、2人はモール内のフードコートで昼食をとった。

 フードコートを出てしばらく歩いてから想一が気づいた。  
「未央奈、お前ぬいぐるみ忘れてるぞ!」
「あっ!いっけなーい!」
未央奈がフードコートに戻って先ほどまで自分が居たと思われる席にぬいぐるみを見つけた。
そしてそこにあったぬいぐるみを持って戻って行った。

 その後も2人はショッピングモール内をぶらぶら見て回った。

 2人がショッピングモールを出た頃には辺りはすっかり暗くなっていた。
「わあ。ずいぶん時間が経っちゃったわね。」
想一の返事は無かった。
「想一?」
突然未央奈の顔に何者かによってハンカチの様な物が押し付けられた。
未央奈はそのまま意識を失った。



 未央奈が意識を取り戻すと、想一と一緒に縄で手足を縛られてどこかの部屋の中にいた。
「こ……ここはどこ?」
「わからない……どうやら俺たちは誰かに誘拐されたみたいだな……。」

 部屋に3人の知らない男たちが入って来た。
「俺たちは麻薬密輸組織で、あのフードコートに置かれたヘロインを仕込んだぬいぐるみを受け取る予定だったんだ!」
「それをお前らが嗅ぎつけてぬいぐるみを横取りしやがった!」
「お前らあそこで取引きする事をどうやって知った!?言え!」
男たちが順番に言った。

「そんな事今初めて知った!」
未央奈が叫んだ。
「何っ!知られたからは生かしてはおけん!」
男たちが声を揃えて言った。
「べらべらしゃべったのはあんたらじゃないか!」
想一が叫んだ。
男たちは拳銃を取り出し、銃口を2人に向けた。

 次の瞬間、部屋の窓ガラスが破られ、中にバットモードの猫娘が飛び込んで来た。


「誰だ!!」
男たちが叫んだ。

「猫娘!!」
2人は叫んだ。

「夜の世界をひた走り 悪を見据える二つの目 その名も怪盗猫娘 悪党どもを退治いたします!」
猫娘はスタンロッドを構えて名乗りをあげた。

 マオとピコは想一と未央奈が車で連れ去られる所を目撃していて尾行していたのだった。

 男たちは猫娘に向けて拳銃を発射した。

 猫娘は目にもとまらぬ動きでスタンロッドで銃弾を弾き返し、男たちを次々とスタンロッドで倒していった。
そして意識を失った3人をロープで縛りあげて、想一と未央奈の縄をほどいた。

「ありがとう猫娘!!」
2人は叫んだ。



 数時間後、八木沢と松池が部屋に乗り込んだ。

「警察だ!そこを動くな!」
八木沢と松池が部屋の扉を蹴り開け、銃を構えて叫んだ。

 しかし部屋には縛られている3人の男が天井から吊り下げられていた。
「この者達極悪麻薬密輸組織」と書かれた猫娘のカードが額に貼られていた。

「くそっ!またしても猫娘に先を越されたか!」
八木沢が悔しげに呟いた。


 暗い部屋の中でルシファーが壁のモニターを眺めていた。
「”あれ”がぼくの手の中に戻って来るのも時間の問題だな。ではそろそろ計画を次の段階に進めようか……。」

「その計画、この私がお手伝いいたしましょう。」
いつの間にか部屋に入っていた銀髪を長く伸ばしたスーツ姿の若い男が後ろからルシファーに語りかけた。

「何者ですか。あなたは?」
ルシファーは鋭い声でその男に問いかけた。

 男は答えた。
「私の名はグレイ。十蔵様からあなたをサポートするように仰せつかってまいりました。以後お見知り置きを……。」