シリーズ物の第5弾!

こちら が第1回。こちら が第2回。こちら が第3回。Q&Aの第1回がこちら

質問④

『具体的に非課税で支給して良い額というのは、いくらまでですか?』

回答④

公共交通機関を利用するケースと、自転車・バイク・車などを利用するケースで違います。

【公共交通機関を利用】

10万円を上限として、1カ月当たりの合理的な運賃等の額とされています。これは、実際に利用している公共交通機関の1カ月定期代と考えられています。6ヶ月定期の1/6でも、1カ月定期の代金を下回るのでかまいません。

 この通勤経路については、経済的かつ合理的な経路という考え方になります。明確な定義ではないので、実際に通勤しているルートで申請するのが最も自然です。前の質問③のバス代は、現実的に乗るようなものではないわけですから、ここに反して、非課税対象外となるわけです。

【交通用具(自転車・バイク・車等)を利用】

距離に応じた、非課税限度額が定められています。それぞれの距離と金額は以下の通りです。

① 片道2km未満 0円

② 片道2km以上10km未満 4,100円

③ 片道10km以上15km未満 6,500円

④ 片道15km以上25km未満 11,300円

⑤ 片道25km以上35km未満 16,100円

⑥ 片道35km以上45km未満 20,900円

⑦ 片道45km以上 24,500円

ただし、平成23年については、④~⑦の場合に、公共交通機関を利用した場合の運賃相当額がそれぞれに定められた額を超える場合には、その運賃相当額が非課税限度額となります(税制改正により平成24年からはこの特例は廃止。)。

 ごらんの通り、交通用具利用で、片道2km未満の場合は、非課税支給することはできません。また、『交通用具』の利用が条件なので、徒歩の場合は何km歩こうとも非課税支給することはできません。

 

質問⑤

『じゃあ、一般的にはどうされているんですか?』

回答⑤

 自由に決めて良い分、知れば知るほど迷ってしまうのが通勤手当の支給ルールです。そんな自由だらけの中、唯一の法的基準が『非課税限度額』です。所得税法において、この額までなら通勤手当をもらっても個人の利益とみなさないとしている基準です。

 結局は、上限だけを経営者が決めておいて、これを元に支給しているケースが多いです。従業員への説明の際の根拠としても十分です。最も無難な支給方法と言えます。

 もちろん、交通用具利用時に『距離に応じて1kmあたり20円の支給をする』のも自由です。駐輪場の代金を負担してあげるのも自由です。しかし、それらを支給することで非課税限度額を超えることとなる場合は、課税で支給する必要があります。

シリーズ物の第4弾!

こちら が第1回。こちら が第2回。こちら が第3回。

質問①

『通勤手当は支給しないといけないの?』

回答①

通勤手当の支給は義務ではありません。シビアな会社では、仕事に関係ないのに住んでいるところで給与が決まるのはナンセンスだと、一切支給しないケースもあります。

ですから、通勤手当について検討する際に、まず考えないといけないのは、通勤手当を支給するかどうかです。

質問②

『通勤手当は定期代(一定額)以上支給してはいけないの?』

回答②

通勤手当の上限を定める法律はありません。ですから、何十万円の通勤手当を払ってもらっても結構です。

ただし、非課税で支給するには、上限設定があります。あくまでも、非課税で支給するにはということなので、課税で通勤手当を支給する分には、いくら支給しても誰のお咎めを受けることはありません。

逆に言えば、支給義務もないので、上限を勝手に設けることも問題ありません。ただし、すでに支給しているものを減額することは、転居等で減額になる場合を除き、不利益変更に該当するため、相応の理由か同意が必要になります。

質問③

『乗ってもいないバスの定期代を請求してくる従業員がいるのですが…。』

回答③

これもまた、支給義務の話につながります。支給するのは自由です。ただ、一定のルールとして、実費支給と定めている場合に、払っていない費用を請求してきているとすれば、これは立派な犯罪行為です。

従業員は、『通勤手当は天から降ってくると思っているのだろうか?』と思うほど、悪気なく、不正請求をしてきます。

あるいは、優しい経営者がわかっていて容認するケースも時折見かけます。これも、支給すること自体はかまわないのですが、非課税で支給しているとなると問題になります。

悪気なく不正に請求してくることがあることを理解した上で、そうしたことが起こらないように、抑制のために、通勤経路や通勤距離の不正な届出に対して、返金やその後の不支給などの罰則は明確に定めておきましょう。

シリーズものの第3回です。

第1回はコチラ

第2回はコチラ

今日は交通用具、自転車・バイク・車などで通勤される方への通勤手当の話です。

前回、通勤距離に応じた非課税限度額の説明をさせていただきました。

これは、元々の実費支給の目安として、所得税法上の非課税限度額を利用しようという考え方からの通勤手当の決定方法です。

当然ですが、雇用契約書次第で、払うも自由、払わぬも自由の通勤手当ですから、別の方法も考えられます。

それが、ガソリン代的に1kmあたりおいくらという支給をするケースです。

片道12kmの場合、単純に非課税限度額を払うということなら、通勤手当は全額非課税で6,500円です。

このケースでは1kmあたり20円を支払うと考えてみましょう。

だとすると算式は以下の通りです。

12km×2回(往復)×22日(平均出勤日数・仮)×20円=10,560円

この場合は、非課税で6,500円、課税で4,060円を支給ということになります。

22日の部分は実態に応じて変わりますし、20円が妥当かというところも検討の余地はあります。

20円というのを比較的良く見かけますが、課税にはみ出る場合が多く、税務署から見た実費とは少々差があるようです。ただ、ガソリン価格が上がっているこの時代にあえて下げるというのもどうかと思い、いまのところの一般的な水準かと思います。

ということで、交通用具の場合、どういったルールで支給してもかまいませんが、あくまでも、非課税限度額は決まっているので、非課税枠を超えれば課税で支給してあげてください。

逆に言えば、自転車通勤者に対して駐輪場の費用を負担してあげる場合でも、この非課税範囲内であれば、非課税で支給することが可能です。

ただ、実務上、上記12kmを自転車通勤する場合、多くは、その事実により6,500円を支給されてしまいます。これに加えて駐輪場の費用を負担するとなると、それは非課税限度額を超えるものとして課税で支給する必要があるようです。

また、駐輪場が必要になるのは、交通用具と公共交通機関の両方を使用する場合であり、その場合の非課税限度額は、それぞれの交通用具と公共交通機関の非課税額を合算したものが非課税限度額になるとされています。

ですから、公共交通機関の分として定期代を非課税で支給。そして、自転車通勤の距離が片道3kmなら4,100円を超えないまでの駐輪場代なら非課税で支給することもできるようです。

ただ、また原点に戻りますが、これは非課税のルールです。実際に、家から最寄りの駅までの費用を負担するかどうかは、雇用契約の段階、あるいは社内ルールとして明確にしておく必要があるわけです。

同様のケースで、バス停1つ分で実際は乗っていないのにバスの定期代を請求してくる労働者なんかも存在します。

そうした時に困らないようにルールをきっちり決めておきましょう。

ちなみに、この場合のバスの定期代は、実際は、乗っていなくて、交通用具も利用していないので、支給するとしても課税で支給しないといけません。

あ~ややこしい。

つまり…。

支給のルールを、非課税限度額を参考にして決める。

が、最終的な課税・非課税は、所得税法に従い判断する。

という段取りが必要になるということですね。

少し前の記事の続きです。

(1)はコチラ を参照ください。

さて、実費支給的な考え方が一般的ということでしたが、『実費支給=労働者に利益が発生していない』ということになりますので、参考・基準になるのは、『所得税法上の非課税限度額』になります。

公共交通機関で通勤する人は、話が単純で、定期代なり切符代なりの支給ということになります。

定期代なのか、切符代なのか、雇用形態によっても変わると思います。

いずれにしても支払っているものが明確であり、実費支給もしやすいでしょう。

次に公共交通機関以外で勤務する人ですが、具体的に実費を支払っているわけではないので、いくら払えばいいのかと思い悩むわけです。

そこで参考にするのが、『所得税法上の非課税限度額』ということになります。

片道の距離に応じて、交通費として支給するべきではないという額を定めてくれているわけですから、実費支給の最も参考になる数字でしょう。

片道の通勤距離             1か月当たりの限度額

2キロメートル未満             (全額課税)

2キロメートル以上10キロメートル未満    4,100円

10キロメートル以上15キロメートル未満   6,500円

15キロメートル以上25キロメートル未満   11,300円

25キロメートル以上35キロメートル未満 16,100円

35キロメートル以上45キロメートル未満 20,900円

45キロメートル以上 24,500円

ただ、これは月額で定められていて、切符代というような概念がありませんので、出勤日数の少ない人に支給する場合は工夫が必要です。

交通用具を利用ということが条件になりますので、徒歩の場合は、何キロ歩こうと非課税額は0円ということになります。

実費支給的に、非課税交通費=交通費の全てという考え方で言えば、この支給方法ということになります。

ただ、前回も説明したとおり、これ以上払うことを禁じているわけではありません。課税交通費として払えば良いわけです。また、これだけ払うことを強制しているわけでもありません。住んでいる家が遠いから給与が高いって、単純に考えればおかしいですから…。

ということで、次回は少しイレギュラーな支給方法についてのお話にします。

まずは、ブログの更新が2週間滞ったことを反省してみたりします。

おかげさまでバタバタとさせていただいており、ブログ更新にあてていた早朝の時関すら追いやられる始末…。

落ち着いたわけではありませんが、頑張って、現場のタイムリーな話をご紹介していこうと思います…。

さて、今日のブログの題名。社会保険の扶養認定基準ですが、いまひとつ明確になっている記載がありません。

一応は、『今日以降の1年間において、130万円以上の収入が見込まれないこと』というベースはありますが、詳細な取り扱いについて、明記されているケースはほとんどありません。

源泉徴収票で1月~12月で判定しているところもあれば、自己申告で通ってしまっている(調査等で指摘を受ける可能性はありますが)ところもあります。

そんななか、比較的厳しいとある共済組合において、その基準が明確にされました。

ここまでされるケースは少ないと思いますが、家族手当の支給が医療保険の扶養になっているケースだとシビアに見てくるケースはあります。

参考までに紹介しますと…。

年額※130万円以上の恒常的な収入のある者。ただし、その者の収入の全部又は一部が公的年金等のうち障害を支給事由とする給付に係る収入である場合又は60歳以上の者であってその者の収入の全部又は一部が公的年金等に係る収入である場合には、年額180万円以上の恒常的な収入がある者

※「年額」とは、毎月初日からみて向こう1年間の収入額をいいます。よって、短期間の雇用等により、結果として年額130万円以上とならなくても、月額108,334円(130万円×1/12)以上である場合は、その期間については取消し手続きが必要です。

 なお、退職金や土地を売却したときに得られる一時的な収入は、年額に含めません。

理屈上はそうですね。失業給付がその考え方です。1日あたりの給付額が、実際に1年給付される見込がなくとも、1年継続したら130万円を超える額になるなら扶養にはなれないという見解は出されています。

今まで、年間の収入を気にしていた方にも、一度、扶養認定基準を確認してもらったほうが良いかもしれません。

「脳・心臓疾患および精神障害などの労災補償状況」という資料の平成22年度版が発表されました。

ピーク時にくらべて件数は少し減りました。

計算されたかのような労災認定率の2年連続の微減。

その中の資料ですが、以前から言われている、長時間労働との関係性についての報告についてです。

脳・心臓疾患で支給決定された事案285件のうち、266件が1カ月の平均時間外労働時間数が80時間以上となっています。

80時間以上となると、週休二日なら1日4時間程度の時間外労働。毎日2時間の時間外労働で休みのどちらかを休日出勤というペースです。

9時~18時の会社なら、毎日22時まで働いて週2日休んでいるパターンか、毎日20時まで働いて週1日しか休まないパターンとなります。

現実社会としてはよくあるケースかもしれません…。

逆に言えば、それくらいの労働でも、その労働の質と内容によっては、過労が原因で脳・心臓疾患が発症したと認められる労働時間数だということです。

過酷な労働条件においては、もっと多くの時間数を働いているケースもあるでしょう。

私は単純に時間数だけが問題だとは思っていません。

ですが、ひとつの目安として、時間外労働時間数が80時間を超えた労働者に産業医の面接指導を受けさせるという労働安全衛生法の規定を無視するわけにはいかないと思います。

医師による面接指導はもちろん、日々、経営者や管理職が、質や内容的に追い込まれたオーバーワークになっていないか、気にかけておくことが大切です。

新規開業のお手伝いをしていると、よくご質問をいただきます。

通勤手当の支給のルールを定めている法律など存在しません。

労働基準法上も、支払義務はありません。

割増賃金の支給単価の計算のさいに省いて良い通勤手当というのは定められています。

所得税法により、非課税限度額は定められています。

ただ、それだけです。

非課税限度額は決められていますが、課税で通勤手当をいくら払おうと自由なわけです。

つまり、規制がないことによって、逆に迷うことになってしまうわけです。

いっぽう、労働者側の要望はというと…。

通勤手当は、必要経費として空から降ってくると思っているかのごとく、経営側の財政とは関係ないがごとく、好き放題言ってきます。

全く悪意なく、本当の通勤経路よりも費用が高くかかるルートで申請をしてみたりします。

乗ってもいないバスを申請してみるなど…。

通勤に自費がかかることにもかなりの抵抗感を示し、駐輪場代金がもらえないのかと請求してみたりもします…。

こういった要望を適切に処理するためにも一定のルールを定めておかないと、個別の特殊対応が増えてしまって、それが全体に広がり、かなり甘い通勤手当の支給基準が成立してしまいます。

そのルールとして一般的なものが、実費支給的な考え方です。

今日はここまでにして、明日以降続きを記載します。

標準報酬の保険者算定について、日本年金機構から、様々なアナウンスがなされています。

確実な詳細事項については、それぞれのアナウンスを確認いただきたいのですが…。

ひらたく言えば…。

①業種、部門的に、慢性的に4月5月6月の報酬を年間の平均とすることが適当でない。

②実際に4月5月6月の報酬の平均と、前年7月~当年6月の報酬の平均が2等級以上違う。

という場合に適用されるわけです。

ポイントは、『慢性的に』というところでしょうか?

今年1年だけそうではダメで、業種や部門の説明内容が『それはそうだね』ということにならない内容の場合は、さらにもう1年分を調べたりするようです。

社会保険料は安いほうが良いという概念を持っているので、安くなるほうだけを考えますが、高くなるほう、つまり、4月5月6月だけが報酬が低い場合も申請が可能です。

これらは、強制的に適用されるわけではなく、申請により検討されます。

部門ということであれば、決算月や新卒採用の関係で、総務・経理なんかも対象になる可能性もあります。

代行で行っている場合には、どこまでチェックするのかという問題もありますが…。

どちらかと言えば、制度をしっかりアナウンスして、事業主さんからの申し出を待つスタンスが一般的かなと考えています。


下記はそうしたアナウンスです。


http://www.nenkin.go.jp/main/system/pdf/santei.pdf


モラル・ハラスメントが人も会社もダメにする/マリー=フランス イルゴイエンヌ
¥2,100
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今、本を熟読しています。

『モラル・ハラスメントが人も会社もダメにする』という本です。


熟読しているというからには、さらっと読んでいるのではなく、この書籍に記載されていることを、組織運営に活かせるように、再翻訳しようとしているイメージです。

モラル・ハラスメントというのを、厳密な定義を横に置いてひらたく言うと、職場のいじめです。

・群れをなして悪口を一般化させて孤立させる。

・厳しすぎて、対処不能な指導で、新入社員を追い込む。

・根拠がなく、具体的でない批判をする。

・暗黙のルールというものが、存在しているかのように相手を操作しようとする。

・不機嫌さで相手を操作しようとする。

これらが継続的かつ頻繁に行われる状態を言います。

日本の組織において良くある事柄に合わせているので、もしかすると本当の意味とずれが生じているかもしれませんが、概ねそんな感じです。

上記の一番怖いところは、こうした『いじめ』が『組織のため』『規律を守るため』『モラル維持のため』といった、正義感に基づいて行われていて、加害者本人にその自覚がなかったりすることです。

どんなに正義の大義名分があっても、相手を退職に追い込んだり、精神疾患に追い込む権利は誰にもありません。

が、現実には行われています。

そして、多くの人は、そこに同調します。止めることはしません。

悪意のない加害者が増えていきます。

実は、職場を原因とした精神疾患や、人間関係が理由の退職は、ここが大きな理由になっていることが多いです。

メンタルヘルス対策の指針として、厚生労働省が示していること。

もちろん大切なことだと思います。

しかし、そもそも、労働者それぞれが個々の能力を発揮して、助け合って、組織の目標を実現するために協力しあうという当たり前のことを実現するために、モラル・ハラスメントが大きな阻害要因になっているのは間違いありません。

セクハラ・パワハラが一般化していくにつれ、みんなの意識に防止しようという考えが埋め込まれていったように、モラル・ハラスメントについても、同様の動きがあって当然なのだと思っています。

修行って労働時間でしょうか?

私たち士業の世界でも少なからずあることですが…。

独立開業できる業種においては、『修行』と呼ばれるような、ある意味、労働だとしたら労働の対価に見合わない賃金しかもらえないケースがあります。

独立開業するには、当然、経験が必要です。

しかし、自分で突然商売を始めても、特に職人的な業種、技術・知識が必要な業種では、お客様を満足させることができません。

ですから、雇用されて働いて、そこで経験を積ませてもらうわけです。

しかし、働く側は、そこで一生勤めあげようとは思っていません。

ある程度できるようになれば、技術や知識を身につける、あるいは盗むことができれば、独立して、勤務先のライバルになってしまうつもりなのです。

この関係というのは何とも微妙なわけです。

多くの事業主さんは繰り返します。

長く続かないからと待遇を改善する。

結局裏切られて、お客様を連れて開業される。

ちゃんとしても裏切られるからと労働条件を切り下げる。

みんなすぐ辞める。

で、最初に戻って、長く続かないからと…。

業種の性と言いますか…。

最近でこそ、独立開業しても、ちゃんと食べていける士業さんが少なくなっているので、待遇改善のところでストップしている士業の法人組織が増えてきているように思えますが…。

さて、前置きが長くなりましたが、もっと露骨な業種があります。

そういったところでは、最低賃金を割るような賃金設定で、修行をして…。

例えば、料亭の板前修業なんかであれば、そんな世界ですよね。

お金を払ってでも、そこで修行したい。

そこで修行したことが、経歴上の裏付けになるような…。

だから、たとえ賃金なしでも働かせてもらいたいと…。

みんな納得しています。

住み込みで、まかないも出るので、給与と言ってもおこづかいのようなものです。

修行とはいえ、当然、お客様にお出しするものの仕込みをします。調理します。買出しに行きます。

『労働かどうか?』と言われれば、確かに労働なのかもしれません。

ここに労働基準法・最低賃金法が介入しますと…。

この双方が納得している『修行』は、賃金不払い・最低賃金法違反ということになります。

理不尽だと思います。

しかし、修行が労働であるという考えが成立しているとすると、それを逆手に取って、お弟子さんたちが、賃金不払いと訴え出てくれば、その料亭がつぶれてしまう可能性だってあるわけです。

修行が、一定のカリキュラムに従って行われていて、使用従属関係が見られず、労働者として働いている者との明確な区別があったとすれば、労働ではないという話も出てくるのでしょうが、現実的には、恐らくは労働者との判断が下るでしょう。

指揮監督下にない時間帯に、自己の技術向上のために行っていることでも、結果として、その修行がなければ、業務が成立しないような場合は、やはりそれも労働と言わざるを得ないわけです。

何故なら、きっと使用者は、その修行が放棄されたときに怒るでしょうし、業務に支障が出るからです。

修行と労働時間についての見解は、おそらくは、それぞれの主張が平行線です。

修行の部分を最低賃金法で縛るわりに、御礼奉公は許されません。

それでは、先にあがった士業ではありませんが、使用者はライバルを育てては独立させ、育てては独立させを繰り返すことになります。

全ての業種に同じ法律ということ自体が、無理があるのかもしれませんが、法律を逆手に取る労働者がいないとも限らない以上、何かあったときに、被害を最小限にとどめるための手立てはきっちりとしておくことが大切ということになります。

先の修行の概念についても、労使でしっかり共通認識を持っておく必要があります。

あまり型にはめるのは好きではなく…。

実態に合った形で、使用者の思いが込められた就業規則を作って、労使で共有してもらってます。