『my classics!』4
AVE MARIA
この曲がAVE MARIAというタイトルだとは、聞くまで知らなかったなぁ。アヴェ・マリアと聞けば、シューベルト、としか思わなかった。不勉強を反省。
アルバムの中では、このAVE MARIAとミオ・アモーレだけが、もともと歌曲なんだね。あとは器楽。
ヨーロピアンテイストっていうのかな。アレンジとしては、ラテン系の入った… といっても南米系のではなくて。最初に聴いたときに思い出したのは、ポルトガルのファドだったな。哀愁の入り方というのか…。
胸に迫るような歌だよね。同一旋律を、オクターブ違いで歌うというのは、綾香嬢得意とするところ。それが出来るだけでもすごいと思うんだけど、低いとき高いときで、それぞれまったく違う表情というか、二面性を見せていると思う。この曲ではとくに。
低く歌うときには、何かゆるがない決意というか…梃子でも動かないという決心が伝わるように感じたし、高く歌うときには、澄んだ声が蒼穹に吸い込まれるみたいに、何か人知を超えた存在に対する祈りが伝わるようだなと思った。
後半ではスキャットが入って(綾香語っていうんだね)、これが前衛的な響きさえ感じさせて、すごく面白い仕上がりになっている。あーやはサックスプレーヤーなので、たとえば歌の端々に管楽器のフレーズっぽいものが出てくるのはよくわかるんだけど、このAVE MARIAのスキャットは、どう聴いたって、ギターのフレーズだよ。こういうセンスって、どうやって身に付くものなんだろうなぁ。
新世界
僕にとっては、おそらく人生でもっとも多数回聴いたクラシックのひとつと思われるドヴォルザークの「新世界より」。子どもの頃、叔母さんが貸してくれた何枚かのレコードのうちの一枚だったからなんだけど。その頃見聞きしたことってのは、ほんとに忘れないもので、そのとき読んだライナーノーツの内容は30年以上たった今でもおぼえているくらい。
さて。あーや版の新世界は、バラード風に始まったかと思うとゴスペルのようだったり、間奏ではJAZZになったり、転調もくりかえしてめまぐるしく表情が変わる。「家路」で知られたテーマの他にも、この二楽章の中には、ぐっとくるメロディーが出てくるけど、「新世界」ではそういうところもちりばめられていて、とてもいい。一曲でアメリカ音楽の旅みたいになっていて楽しいんだよね。遊び心と同時に、原曲が生まれたいきさつに対する敬意も込められている感じがしたな。
彼女はセルフライナーノーツの中で、メロディーのおわりの部分、「レ~ドレ~ラ~ド」がひとつだけ「レ~ドレ~シド~」になっていることに触れて、「ふるさとに帰るイメージ」だと書いている。なるほどなぁ。たしかに、ラよりもシのほうが圧倒的に解決を志向するから、帰るんだという意思を感じ取るというのはわかる気がする。加えて、ラ~ドというそれまでの土着的な音階から、シ~ドはヨーロッパ音楽へ戻ったという感じもあるな、言われてみれば。
ちょっと悪乗りして便乗すれば、原曲ではこのあと、「ド~ ド(#)~ ド~ ド(#)~ ド~ レ~ ミ~」と終わるんだけど、この部分は、楽章のいちばん冒頭でも調は違うけど出てくるんだよね。それから中盤でちょっと曲調が変わるところの前にも。
これはちょうど、旅先へ向かう時空のトンネルみたいな気がして仕方ない。どこでもドアみたいな(笑)。あるいは、映画でいうと、回想シーンのワイプみたいな?
だからライナーノーツを読んだ時、「これで旅はおしまい、さあ帰ろう!」って時空トンネルに入ったなんていう想像をしてしまった。