こんばんは、です。
入居されているA様は、脳梗塞による失語で意思疎通が難しい状態です。
A様の場合、話の理解はできますが、言葉で表出することが難しい状態です。(専門用語では、ブローカ失語(運動性失語))
運動性失語は、自分が話す時にうまく言葉が思い浮かばない状態で、自分で考えた事をことばに変換する「運動性言語野」に障害がある場合に生じる症状です。
A様は、自身の意思を思うように相手に伝えられず、いらいらや異常行動が目立つような状態となっていました。
もともと視力もほぼないA様、思うように意思を伝えられない状況も加わり、かなり精神的にも苦しい中にあったと思われます。
例えば、トイレに行きたい場合、一見無意味な大きな声を上げ何度もベッドから立ち上がろうとされたり、時には車椅子上で、ズボンを下げられようとされるなどといった状態がみられていました。
A様の担当となった作業療法士aさんは、介入当初、意思疎通が難しく、リハビリの介入も難しい状態だったと振り返ります。
作業療法士は、A様とのコミュニケーションを取りやすくするため、リハビリの際には、精神的不安を取り除くことに配慮しました。
まず作業療法士が実施した 肩のリラクゼーションは、マッサージによって、血行が促進され、筋肉の緊張がほぐれることで、ストレスや不安を緩和します。
また、A様の訴えをジェスチャーや発せられる言葉から汲み取れるよう務めました。
ある日、A様が訴えられようとしていたのは、背中のかゆみ。
自身では手が届かず、
担当作業療法士は、A様がかゆみを訴えられた場所をかゆみが落ち着くまで、掻いてあげました。
また、「トイレに行きたい」と察せられるときは、トイレにお連れしました。
A様の要望にひとつひとつ丁寧に応えていくうちにA様には笑顔が増えていきました。
通常の会話は難しいものの、落ち着いてコミュニケーションも取れるようになり、「どこが痛いですか?」と尋ねると、腕のあたりを指さされたり、同所にアプローチすると、「ありがとう、ありがとう」(現在、同じ言葉を繰り返す、保続の症状も見られています)と、感謝の気持ちを伝えられていたそうです。
目の前にいる利用者様が、今何に不安を感じ、何を求め、何を訴えられようとしているのか、知ろうと寄り添い、信頼関係を築いていくことは、リハビリテーションにおいてとても大切なものなのではないかと思います。
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