経済対策などの話を聞いていると、いつも「イノベーション」という単語が出てきます。
「新しい技術が。。。」などとコメンテーター達が言うのはもはや当たり前。

誰でも分かっていると思うけど、資源も無い、英語も出来ない日本と言う国が世界で現在の地位を確保する、むしろ上げるということを考えるのであれば技術という側面は非常に重要です。


日本発の新技術とかそういう期待をみんなしているはずなのに、高度な知識を持った理科系の人間に投資をしようとする土壌が無いのは非常に残念だと思います。

「技術が必要だ」と言っている経済アナリストに理系出身者がどれだけいるんでしょうか?国の技術戦略を練る議員達にどれだけ理工系の学位を持っている人が居るのでしょうか?甚だ不安です。


日本の技術力はある分野では非常に飛びぬけていると思います。
それは「時間」「人」が必要な分野です。つまり、大量生産を前提とする高品質、低価格の技術商材の開発・販売です。つまるところ「生産技術」です。物を安く高品質に製造する技術力です。

日本の技術の基本は非常に細かいところまで最適化を行い、「僅差で相手に勝つ」というモノです。極端に他を圧倒して「多少使い勝手悪くても、これが欲しいんだろ?」という商売は出来ません。従って、利ざやが小さいのが特徴です。


この「極端に他を圧倒する技術」というのがまさにイノベーションです。誰も考えもなかったような方法、斬新なアイディアで新しい技術を生み出す。これが出来ないのが日本人だと私は強く思います。


このアイディアというのは現代の科学技術水準では、「思いつき」とかそういうレベルのものではありません。厳密な理論を理解し、その上で理論と理論の掛け合わせで生まれるのです。こういう分野で活躍する人間は理論寄りの人間です。所謂、理学系の人達です。

英国では「物理学科」や「数学科」出身者がメーカーで非常に活躍しています。日本では教師くらいにしかなる方法が無いといわれるこれらの専門ですが、メーカーR&Dでは彼らの活躍が目覚しいです。


日本は工学部が就職に関しては需要があるかと思いますが、工学というのは理論を使って作り上げる人間であり、原理原則を完全に理解できているような人材では無いのです。しかももっと言えば、博士クラスの高度な知識は不要。OJTで入社してから鍛えます という雰囲気です。私から言わせると、OJTで理解できる部分は技能であって技術ではありません。

やっぱり教科書に向かってしっかり原理原則を理解する作業は「イノベーション」には必要です。高等教育を受けている技術者というより技能者が多すぎます。技能者は大学へ行く必要有りません。エリートが誰にでもできる仕事をしてはダメです。


日本を技術的に強くするために、私が今の日本にやった方がいいと思うのは

・博士の就職環境の改善
・結果重視の博士課程ではなく、研究者トレーニングとしての博士課程の完備
・理系にもっと英語を課す
・理学系をもっと大切にする。理系の花形にする。(現在は電気、電子、機械系)
・大量生産の技術戦略を止める(中国に負ける)


私のイギリスのお師匠様は12月で引退されました。(脈略ないですが)
目覚しい産業界での活躍によって、私の大学からDSc (Doctor of Science)を授与されました。過程博士でも論文博士でも有りません。凄すぎるから博士です。


彼はちなみに、物理学の学士号しか持っていません。そんな彼が私のスポンサー企業を30年以上、技術で支えてきました。本当に天才です。彼のノートは数式でびっしりです。こういう仕事をする人が一般企業に居ないからイノベーションが起こらないんです。


上手くいけば私は1年半後にドクターになれますが、はっきり言って恥ずかしいです。やはりドクターというのはこういう一握りの稀有な存在に与えられるものだと。

もっともっと勉強する必要があります。博士という肩書きに負けない知識を技術を身に着けないと恥ずかしいです。


では良しなに。