その知らせはJohnの時と同じようにテレビからもたらされた。
テレビからというのは、そうか、あれ以来なのだ。たった二度目なのだ。
つい最近New Albumが発表されたと、数か月ぶりでたまたま立ち読みしたRockin'Onで
読んだばかりだったから、NHKの六時のニュースで聞かされて、え!と声を上げてしまい、
奥さんに怒られた。
それから胸ににじんでいった気分はこれまで感じたことのない不思議な悲しみだった。
あのお兄ちゃん、死んじゃったんだ……。
短く言えばそんな感じで……それで……
お兄ちゃんは五軒先の家のお兄ちゃんで、道で会えば「新しいのができたから聞きに来てよ」
なんて優しく声をかけてくれる、伝統音楽好きのお兄ちゃんだった。
伝統音楽に情熱を傾けてるとは言っても、伝統をそのまま受け継いで真面目一点張りで
それに取り組んでるわけじゃなくて、いつも
「何かもっと、聞く人の心に優しく、すんなり入っていくような音楽をやりたいんだ」
と言って、いろいろ新しいやり方に取り組んでいるお兄ちゃんだったのだ。
それで僕も何度か、お兄ちゃんの音楽を聞かせてもらったんだけど、僕はいつも思った。
これが優しい音楽? こんなのが誰の心にすんなり入っていくの?
メロディーはとても素晴らしかった。どれも自然な心や物語の流れをそのまま音にしている
そんな感じだった。
でもお兄ちゃんはそれを決してそのまま素直に表現したりしなかった。
へんな服を着てやってみたり、宇宙人みたいな格好になってみたり、
ちょっと耳障りの悪いアレンジしてやってみたりしたのだ。
お兄ちゃんにとってはこれこそが、それまでお兄ちゃんのやっている音楽に興味のない人に
聞いてもらうための一番効果的なやり方なのだ。
お兄ちゃんは頑張った。そしてどんどん聞いてくれる人を増やし〈皮肉にもお兄ちゃんの音楽が
一番ウケたのは単純に流行のやり方でやった時だったけれど)ながら、どんどん年をとっていった。
そんなお兄ちゃんの名前を久しぶりに聞いたのは、お兄ちゃんが死んだという知らせでだった。
ああ、死んじゃったんだ、と僕は思って、ちょっと悲しい気持ちになった。
長く言えばこういう〈↑〉感じだ。
とても頑張っていた優しいお兄ちゃんが、おじいちゃんになって病気になって死んじゃった、
という……。
デヴィッド・ボウイには一時期とても楽しませてもらった。
Lowとか、Heroesとか、Station To Stationとかの時期に一番聞いて、
Lodgerというアルバムが一番好きだった。
でも家にあるのはこれだけです。