かもしれない運転で行きましょう、と自動車運転教習所の先生は言った。
だろう運転はいけません、と言った。
まったくその通りだと、五十を過ぎてからやっと免許を取るに到ったカツシカゴンゾーは思う。
だって、
あの右折車は俺の前で突然右折を始めるだろう、とか、
あの門から突然じいさんの自転車が飛び出してくるだろう、とか、
正面から走ってくる真っ赤なスポーツカーはゆるいカーブでこっち車線に飛び出してくるだろう、とか、
あそこでこっちに背中を向けていちゃつきながら歩いてる男女は突然けんかを始めて、男は車道に女を突き飛ばすだろう、とか、
あの工事現場の前を通り過ぎるまさにその瞬間、頭上から鉄骨が落下してくるだろう、とか、
そんなことばかり考えながらハンドルを握ってたら、一メートルも前に進めねえんだよなあ。
かもしれない、と、そう思う程度に留めておいたほうが、やはりいいのだ。