路上に火柱が立っていた。勢いよく立ち上がる炎。よく燃えてんなあ。実によく燃えている。そうか、車ってのはこんなに盛大に燃えるもんなのか。真夜中の国道45号線、本町交番からおよそ100mほど東に行ったあたり。日本海を上っていった台風のせいで昼間は風が強かった。しかし目の前の炎は、まるでバカでかいバーナーをおっ立てたかのように、まっすぐ夜空に向って立ち上がっていた。
しばらくして無線から、「黒のセンチュリー、ナンバーは○○○○」――県警からの捜索協力要請。火をつけられたのかあ。しかしなぜ?路上トラブル?どうやって?爆弾でも放り込まれたみたいだったが。
二時間ほど経ってから同じ場所を通りかかった。鎮火した車はトラックの上。ホンダのRV車――Step WGN? 白。色が判別できるぐらいで、表面はあの炎は何だったんだ?幻?と思うぐらい原形をとどめている。が、もちろんタイヤはすっかり無くなっていた。(内装までは見えなかった)
真夜中の火柱はあってはならない炎ではあるが、ずっと見ていたいと思わせる炎だった。事件性を大いにはらんだ、しかし事件性などあってもなくてもまったく変わらないであろう炎の存在感そのものに、俺はわくわくし、ゾクゾクしていた。
(ほどなく無線から、探していた車が見つかったという声が聞こえてきた)