Wolf 's world

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狼牙ミニが紡ぐ物語

どうも、狼牙ミニです。

Wolf 's worldにようこそおいでいただきました。


ここには、私が考える物語たちを載せていきたいと思います。


それでは、どうぞお目通しください。

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少し昔のお話。



このあたりで、一人の女性が無残な死体の姿で発見された。
第一発見者は、その女性の娘。目が覚めたら、目の前に母親が転がっていたらしい。
犯人は、その女性の夫。証言によると、殺されそうになったから殺したとのこと。




お母さんが、泣きそうに笑いながら話していた物語。







女性は最初、寝ていた娘をナイフで刺そうとしていた。しかし、あと一歩のところで夫に見つかる。
女性は、娘に振り下ろそうとしていたナイフを持ち替え、夫のもとへ。そして、夫の右腿を刺した。



そのとき、夫の方が壊れてしまった。
夫は幼い頃のことを思い出したのだろう。
ナイフを握る父親、ぐちゃぐちゃになっていく母親の光景を。
そして皮肉にも、その父親と夫は同じ道へと踏み外してしまった。



右腿のナイフを自ら抜き取り、妻へと一気に振り下ろす。
妻の胸からお腹までが縦に裂ける。妻は即死だった。



しかし、夫は止まらなかった。


工具を引っ張り出してきた夫は、妻で遊び始めた。
遊びが終わり、顔は綺麗なままぐちゃぐちゃになった妻を放置して、夫はどこかへと消えていった。




しばらくして、起きた娘は死体を見て警察に通報した。
調べるまでもなく証拠は部屋中に散らばっていたため、すぐに夫は逮捕され死刑となった。
残された娘も、行方をくらました。







「これが、失われていた記憶の物語よ」



 お母さんが私の頭を撫でる。その手はとても暖かくて、私は幸せだった。



「ねぇ、結花は幸せ?」
「うん!!」

 私は、元気いっぱいに“不幸せな娘”だった“幸せな母親”に返事した。

「あなたはいつか運命の人と出会い、結ばれるわ。だけど、結ばれるだけでは駄目なの」


 幼い頃から聞かされたその言葉は、いつしか私の生きる道標となっていた。



「愛しなさい。その人だけを、ただ一人だけを愛しなさい」


 父親にも捨てられ、愛していた夫からも捨てられた母から毎日のように聞かされていた言葉は、





「たとえ何を犠牲にしても、愛することだけをしなさい」


 私の生涯を愛で狂わせた。




 私は、隼人を愛している。

 隼人以外の生物なんて、私たちの世界にいらないわ。


 なのに、なぜ?

 なぜ、ソレは私と隼人の愛の育みを邪魔するのかしら。

 ソレが私たちの家に訪れてから、隼人の愛は行き先はソレばかり。



「お前によく似ているからかな。すごく可愛いんだ」

 私に似ているですって。笑っちゃうわ。

 憎い。あぁ、醜いわね。


 隼人の愛は、私だけのものよ?



 だから、




 ――――――――コレはいらない。

 その男にとって家族は何よりも大切なものだった。

 初めて手に入れた本物の家族。自らの手で作り出した血縁。

 男はその昔、孤児だった。




「はや君は、きっと幸せな家庭を築くことができるよ」

「はや君、いい家族を持ってね」




 先生は、いつもそう言っていた。自分自身も、言われたことを信じていた。

 実際、自分を愛してくれる妻ができて、かわいらしい娘も産まれた。

 幸せだった。そう、本当に幸せだったのだ。




 だからこそ、部屋の中で鬼のような顔をして包丁を握っていたそれが、今にも横たわるものに振り下ろそうとしている光景が信じられなかった。

 なにが、どうしてこうなっているのか訳が分からなくなって、頭の中が今まで見たこともないような程の白に包まれた。ただ、体が誰かに操られているように勝手に動いているのだけはなんとなく理解した。




 そして、右足に鈍い痛みが走り、耳元に妻の言葉が聞こえた気がした。





「隼人、愛しているわ」



                       続く.