引越しも落ち着いて、のんびりした日々が帰ってきた。

 

それにしてもこの街は、私の理想に近い街だなと、買い物をしながら、犬の散歩をしながら、感じることが多い。

 

どこも小綺麗で上品で、コンパクトに何でも揃っていて、とても便利だ。

古さと新しさが両方あるのもいい。

ノスタルジーを感じるのは、子どもの頃に一時期住んでいた地域に近いからなのかもしれない。

 

新しく人生をやり直すために、自分でこの街を選んだ。

初めて、自分で住みたいところを選んだ。

何十年もかかったけど、やっと、自分の家を持てた気がしている。

 

生まれた時から今まで、何度か引っ越した。

結婚後に住んだ所が一番長かった。

どこも、自分で選んだ場所じゃない。

 

前の結婚では、自分の家のはずなのに、不安がいつもあった。

元夫のお決まりのセリフが、「出ていけ」だったから。

ここは俺の家だ、出ていけと、ケンカのたびに怒鳴られた。

 

ストリートビューで、過去の画像を見られるのを知って、結婚生活のほとんどを過ごした家を、15年前まで遡って見た。

そこには、元夫の車が写っていた。この頃、仲は最悪だったけど、一緒に住むしかなかったなあと思い出した。

 

12年前は、ベランダで大量の洗濯物を取り入れる自分の姿があった。

息子は中学生になる頃かな、部活や制服のシャツの洗濯物で毎日追われていたんだったな。

 

今から思えば、母親としては一番充実していた時期だったなと、もう一緒に住むことはない息子を思い出して切なくなった。

 

 

今の夫は、どんなにケンカをしたとしても、出ていけと言うような人じゃない。

自分が出て行くこともしない。

静かに黙って、同じ部屋にいる。

 

この人は一生、側にいてくれるんだと安心する。

 

私の人生、正直、男運が本当に悪かったけれど、この年になってこんな幸せな毎日が送れているなんて。

自分でも驚くし、ふとした時に、しみじみと噛み締めることがある。 

 

当たり前と思わず、驕らず、幸運に感謝して、彼との普通の日々を大事にしよう。