とにかく全部ね、混ざってないと。いいのと悪いのとか変だけどさ、ものすごくピュアなものと濁ったものとかさ、全部見せて、じゃないとおもしろくない。俺は一見ピュア風のところだけ出されるのはいやだね。汚れを見せないと。
http://apm.musabi.ac.jp/imsc/cp/menu/artist/araki_nobuyoshi/interview.html
インタヴューから抜粋してコピペ
荒木経惟・大舘奈津子(一色事務所)×岡部あおみ
日時:2003年12月17日
岡部:『人妻エロス』でもいろんな写真がありますけれど、着物で写すこともありますよね。最初に着付けとか化粧とかを指示なさるわけでしょ?
荒木:いやいや、そんなことはしない。一番面白がって、いいなと思っているのはね、その本人のお化粧と本人の衣装。普通、AVの女優とかだと、メイクして、きれいにして撮るのが普通じゃない。ヘアメイク付いて、スタイリストさん付いて。そうじゃなくて、『人妻エロス』は撮られるために、例えば「いつもの下着じゃなくて、勝負下着買って来た」とかになるんだよ。
岡部:そうした小道具というか、演出はすべてモデルになる本人に任せているんですか?
荒木:そうだよ。任せてるんじゃない、そうじゃなくちゃだめ。要するに表現してるわけだ。一番いいのは、自分でメイクして、こういう服装のセンスでとか、その人が表現してるってこと。服装はその人の表現だから、裸より面白い。で、ものすごくセンス悪い服で来たり、着物で着たり。それが面白い。だからすぐに脱がないで、ちゃんと着てるのも撮っておく。
。。。
岡部:では、同じモデルで何回も撮ることはないのですか?あるでしょう。
荒木:いや、それはさ『人妻エロス』じゃない特別のもの。『人妻・・・』は通り過ぎる写真。一期一会じゃないけど。それだけのと、気に入ったらずっと撮ってるのと、女の種類がいっぱいあるわけ。ずっと何度も撮ったり、好きな娘だとさ、何年も撮ることになっちゃうんだよ。でも、『人妻エロス』が面白いのは、そのままずうっと向こうも走ってくる、こっちも走ってくる。で、ぶつかるようなとこ。それで別れちゃうのが、またいい。『人妻エロス』は、上手く撮ろうとかじゃなくて、そこにポーンといて、ただ撮る。そういうなんでもない写真をいっぱい集めて、もうちょっとで連載300回になる。すごいんだ。本も何冊も出てるでしょ。カラーで一日に3人撮る。淡々と撮ってるときに、「ああ、いい。そのたるみがいいんだよ」とか、みんな褒める。「そのケツがいい」とかさ。で、褒めるとモデルも喜んで、良くなって、それなりにいいのが撮れる。で、いつも正常位だからさ、ちょっと後背位やろうとか流れでなるの。そういう写真撮ってるだろ、それだけじゃね、やっぱりつまんないんだよ。それは『週刊大衆』に出すための、読者のためのだから。それで、脇にモノクロのフィルム入れたカメラ置いてんの。で、カラー撮ってる脇で、顔カットしちゃって、醜い肉体を「きれい、きれい」っつって、モノクロームで醜い肉体撮ってるの。黒ずんだ乳首とかそういうの、顔なしモノクロームのヌード。それで「顔は究極のヌードだ」なんて言ってるけど、そんなの嘘でさ。
学生:え、嘘なんですか!(一同笑)
荒木:ははは、いや、だからさ、そう言ってる事とか、「素敵だ」とか言って撮って、それを裏切ってるわけだよ、実は。だから今度、写真集『裏切り』を出す(2004年1月発売)。人妻ヌード100選だけど、みんな顔がないの。2通りやっちゃてんだよ。
。。。
岡部:今は、プロのモデルさんもかなりいらっしゃるのでしょう?
荒木:プロっていうのはいないよ。あのね、ヌードモデルのプロは、みんな美術や、彫刻とかでなるでしょ。だからAV女優とか。「AV」をやってる女。そこらの美大の子が「撮って」とかいって来るんだよ。でも要するに職業がない。ただ「芸術のため」とか何とか。AVで生活してる、エッチやってる、生活がある、その人の日常がある方が面白い。それと、「人妻」ってプロだろ。自分の生活を持ってる奴じゃないとだめ。だから学生は一番だめ、おもしろくない。勉強のためだとかで、写真やる奴はさ、「されなくちゃ上手くなんないよ」って言ってさ。そんなこと言って撮っちゃうんだけど。そういうことじゃない。何かのためだろ?
岡部:つまり学生の場合は、生活がないからですね。
荒木:そう、だから裸の意味合いが学生は全然弱い。ソープ嬢とはまったく違うよ。
岡部:生きるために仕事してますからね。でも、生きるためじゃなくてバイトでやってる人もいますよ。
荒木:生きるためっていうか、職業としてそれをやってる人。体使ってる、曝してるっていうか。
。。。
岡部:荒木さんの仕事のスケジュール調整したりですね。
荒木:それ、あんまり関係ないんだ。俺一人でやってるから。だから、だめだろ?本人にアポイントしないと。他人にスケジュール決められんの嫌だからさ。
岡部:そうでした。Aat Roomの事務所にも時々は行かれるんですか?
荒木:最近行くの少なくなってきたけど。だって、あいてる日もあるけど、大切なのは、俺も自分の秘密のスケジュールがあるのに、仕事入れさせられたら嫌じゃない。デートだとか、アタシの場合は実はそっちの方が大事なんだから。頼まれて雑誌でやる写真、それはお金のためだから。金捨てるときのほうが大切。
岡部:その捨てるときというのはどういうときですか?お金を自分でかけるプロジェクトがあるという・・・
荒木:それはだよ、プロジェクトなんかじゃなくて。そ~れは、あれですよ、恋愛。全部。
岡部・生徒:全部恋愛?!
荒木:当然ですよ~。ねえ。ふははは、ふはははは。(一同笑)
。。。
岡部:だから荒木さんが海外で展覧会ができるのはそういう規則が少ないところですね。
荒木:うん。アメリカはできないよな。
岡部:カナダとかオーストリアも難しいですか?
荒木:まあポンポン行ってるけどね、向こうで選ぶ出し物が違う。空だけとか、すごい地味なのが多い。
岡部:あまり問題ないものとかですね。
荒木:そう、そういう類のね。それはつまんないんだよ、アタシとしては。とにかく全部ね、混ざってないと。いいのと悪いのとか変だけどさ、ものすごくピュアなものと濁ったものとかさ、全部見せて、じゃないとおもしろくない。俺は一見ピュア風のところだけ出されるのはいやだね。汚れを見せないと。
。。。
学生:『色情花』とか、びっくりしましたよ、泣きました(笑)。あの色彩に、ドキッとしました。
荒木:そうだろ?『色情花』なんかは、花に色を塗ってる。今度二月頃、『バルコニーの空に色情花』が出るけどね、それはもう花が濡れてるよ。同時にDVDも出る。要するにうちからの眺めの空なんだけど、空って言うのはいつまでたっても彼岸で、死の世界なんだよ、死。で、モノクロームで撮って。具体的っていうかちょっとひっかかってるのは陽子の死、空ばかり撮ってたから。空っつうのは「死空」。それと向こう側ね。それに花を捧げるっていうような感じ。いつも生と死があって、撮る時はいつもそういう気持ちがまざってないとだめだし、見せるときもそう。本当のことと嘘のこととかさ、まぜこぜにしないとね。そういうのがアタシ自身だし、人生ってそうでなくちゃおもしろくないっていうこと。だから、清潔な男っていやでしょ?
学生:あははは。
荒木:正面から見たらものすごーくきれいに、でも後ろ見たらうんこついてるとかさー(笑)。そういう奴いいだろ?拭かないやつとかさ。そこまでいかないけど(笑)、そういうんじゃないと、やっぱり魅力ない。おもしろくないじゃない。人間に限らず絵でもアートでも、音楽でもなんでもさ。
。。。
写真は止まっちゃってるから、解釈によって、本当になったり嘘になったりする。そこが魅力だし、そこがまた不思議なところ。写真を信用したらだめ、絶対に。だって料理写真でも、美味そうでもひどかったりするだろ。「わ!ステキなホテル!」つったって、ワイドに素敵にとってるから、行ったら狭っ苦しいとかさ。写真は嘘つきなんだから。美人だってさ、こんないい美人だ!って思うような、一日で何秒しかない顔を撮って出しゃあいいんだからさ。
学生:そこを引き出すのが難しいんじゃないんですか?
荒木:難しいっていうか。撮る方にそういう気がないとだめなんだよ。最低同格ぐらいじゃないとだめ。アタシの場合、ここんとこ『日本人の顔』ってシリーズやっと始めたんだけど、顔が肖像写真で一番だと言ってても、30歳位の時のを見ると「まだだめだ」って。要するにまだ写真家として人格はないし、だましのテクもないし。40歳になると「よし、40になったからやるぞ」ってまだだめだった。50になってもだめ。そんで還暦60歳に「もう見切りだ!」って言って。もう体力がなくなるから(笑)。そういう風に、自分が相手の顔の奥まで見えるような人間になってこないとだめ。ここが大変。だめな魅力ない写真は、撮った奴も魅力ないんだよ。それがでちゃう。写真はバレちゃう。結局自分をバラしてるだけなんだな。
岡部:そうですね。直観力、洞察力みたいなものがはっきり出る。
荒木:それから、相手に対してどういう気持ちになるかっていうこと。好きになった気持ちとか、意地悪になった気持ちとか、みんな出ちゃうんだよ。やな奴は嫌に撮るでしょ。アタシなんて、みんなステキに撮っちゃう。と言ってもモデルの首切ってとかさ、裏切って(笑)。
。。。
岡部:写真機に対しては、偏愛はあまりなくて、いろいろなものを使われますよね。ライカはお好きでしょう?
荒木:写真っていうのはカメラで決まるんだよ。だから「荒っぽいものを撮るときはこれ」っていうように。だから来年からライカに絞っていこうかなと。人間の顔じゃないけど、もっと大きな何かね。
学生:人生のスパンで。
荒木:そうそう、人生の。人生を撮るにはライカ。
岡部:シャッター音がじつにいいですよね。パリではじめて買って撮ったとき、びっくりしました。
荒木:だから『裏切り』は、69年型のフジカメラのでかいの使ってる。音やなんか「ガチャガチャ!」って品がない。本当に、自分の気持ちも相手の気持ちも裏切ってる。わざと、そういうやな音を使うわけ。それと同時に『東京夏物語』を出すんだけど、それは車に乗って車の窓から見ればわかるっていう、67年型でレンジファインダーのプラウベル・マキナで撮ってる。その時その時で、比率は小津映画。だから『小津に捧げる』って、車に座ってるからロー・アングルで撮って、小津生誕100年に合わせてプレゼントした。そういう風にカメラも使い分けるわけ。
。。。