お薦めされて、図書館で予約して読みました。

 

 

『塞王の盾(さいおうのたて)』

 

 

第166回直木賞 受賞作

 

発行日:2021.10

作者:今村翔吾

出版社:集英社

ページ数:552p

価格:2000円

 

 

【あらすじ】

 

幼い頃、落城によって家族を喪った石工の匡介(きょうすけ)

彼は、「絶対に破られない石垣」を作れば、世から戦を無くせると考えていた。

一方、戦で父を失った鉄砲職人の彦九郎(げんくろう)は「どんな城も落とす砲」で人を殺し、その恐怖を天下に知らしめれば、戦をする者はいなくなると考えていた。

秀吉が病死し、戦乱の気配が近づく中、

匡介は、京極高次に琵琶湖畔にある大津城の石垣の改修を任される。

攻め手の石田三成は、彦九郎に鉄砲作りを依頼した。

大軍に囲まれた絶対絶命の大津城を舞台に、信念をかけた職人の対決が幕を開ける。

 

 

【登場人物】

 

匡介

越前・一条谷生まれ

幼き頃戦で父母と妹を失う

積み方の小組頭にして飛田屋の副頭

 

飛田源斎

穴太衆(あのうしゅう)・飛田屋の頭目

鉄壁の石垣を積み上げることから「塞王」の名で

 

玲次(れいじ)

荷方の小組頭

源斎の甥

匡介と同い年

 

彦九郎(げんくろう)

国友衆の次期頭目

豊臣秀吉にも認められた、国友衆始まって以来の鬼才

 

 

【作者紹介】

 

 

1984年京都府生まれ

2017年『火喰い鳥 羽州ぼろ鳶組』でデビュー

    第7回歴史時代作家クラブ賞・文庫書き下ろし新人賞受賞

2018年『童神』第10回角川春樹小説賞受賞、第160回直木賞候補になる

2019年『八本目の槍』第41回吉川英治文学新人賞受賞

2020年『じんかん』第11回山田風太郎賞受賞 第163回直木賞候補になる

2021年『羽州ぼろ鳶組』シリーズ 第6回吉川英治文庫賞受賞

2022年『塞翁の盾』第166回 直木賞受賞

 

 

【目次】

 

 序

第一章 石工の都

第二章 懸(かかり)

第三章 矛盾の業(ごう)

第四章 湖上の城

第五章 泰平揺る

第六章 礎(いしずえ)

第七章 蛍と無双

第八章 雷(いかづち)の砲(ほう)

第九章 塞王の盾

 終

 

 

【感想】

 

552p分厚いです💦

読み切れるか自信が無かったけど、読み始めたら

お薦め通りの面白さです。

 

 

戦っているのは武士だけじゃない!

 

手柄は、武士にあるのだろうけど、

それを手助けする、

手助け以上に戦略を練っている石工がいることに驚き@@

 

その功績は、大名も知るところで、

武士と同等の扱いを受け、

刀を差して、城に入ることが出来ます。

 

この小説は史実を基にしたフィクションですが、

登場人物がいきいきと描かれています

 

 

盾と矛

 

まさに矛盾が描かれています。

 

ウクライナ侵攻が現実に起こっていて、

重なる部分が多く、

戦をするとうことは、人が死ぬと言うことであり

両親がいなくなる子どもが出ることで

昔も今も戦争をすると言うことは・・・

と考えてしまいます。

 

 

 

 

良きライバル

 

匡介と彦九郎

その生き方がカッコ良すぎます。

その道を極めている二人。

お互いがプライドを持って仕事をしています。

ただ、それが真逆なのですが、

思いは一つなところが読み手の心を打ちます。

 

二人とも 泰平な世

を望んでいるのです。

この戦を最後にと言う願いです。

二人とも戦争で親を亡くしています。

その生い立ちにも似ているところがあるのも偶然かvv

 

 

二人とも希代まれな鬼才。

 

そこには、並々ならぬ努力もあったと思われますが、

努力が花開きます。

 

誰にも破られない盾(石垣)を作る匡介と

人を殺すための銃を作る彦九郎

でもそれは、戦を終わりにして、泰平の世を作るための武器と捉えています。

抑止力にと。

 

最後の章は、手に汗握る攻防戦でした。

匡介が主人公なので、匡介が勝つのだろうと思ったけど・・・

 

 

懸(かかり)

こちらは作者の造語だそうですが、

一晩で石垣を作り、

最後の章では、門を守るために石垣を作り続けました。

 

匡介も石が呼んでると言ってました。

 

大砲と石垣

 

要石にひびが入り、もう持たないと悟った匡介でしたが、

それと同時に高次が降参したのでした。

大津城は、落ちたのでした。

 

城が落ちると言うことは、城主は切腹です。

凄い時代ですvv

まさに命がけ。

 

相手の立花宗茂の勝ちですが、

こちらの武将もアッパレなのです。

 

京極高次の勇士を讃えます。

 

 

京極高次と立花宗茂

 

蛍大名の名を持つ高次とエリート将軍の宗成

対象的です。

 

蛍大名と言われ、運だけで城主になったと噂されていますが、

実は、家来たちの士気を高める才に長けていたのでした。

それは、人柄からと思われますが、

家来が高次のために働きたいと思うのです。

これが、戦争の強みとなっています。

 

この大津城の戦は、歴史上も有名で、意味のあるものだったようです。

 

 

驚きの技術継承

 

石垣とは500年で一人前

300年で崩れれば恥

100年は素人

飛田屋は、1,000年で半人前と言う、どの集団よりも厳しく

仕事が丁寧な集団で一目置かれてました。

 

書に記さず すべて、口承

城の縄張り(設計図)も頭に入れます。

口外しない信頼から、あらゆる城から仕事が入るのです。

敵、味方は、関係なく 依頼があれば、仕事を受けるだけ!

 

だから、殺されずに済むのです。

「肥後の石工」では、駆り出された農民は、生きて帰れませんでした。

 

 

 

源斎の言葉

 

石が呼びかけてくるが、それは優れた耳を持っているからでは無く

特殊な眼を持っている

3つを同時に観ている

1 石の「今」

2 石の「昔」

3 石の「先」

 

匡介も石を選ぶ

 

この本を読んだら、石垣を見たくなりました。

石垣にこんなに違いがあったとは@@

 

 

石垣の積み方

 

野面積(のづらずみ)・・自然石

打切接(うちこみはぎ)・・扇の勾配=武者返し 美しい形状

             (姫路城、鳥取城、熊本城)

切込接(きりこみはぎ)・・・江戸城、大阪城、駿府城、名古屋城

 

積み方は「乱積み」・・大小不規則

「布積み」横目地が並んでいる

 

見せる石垣「伏見城」、最も初めの攻城戦の舞台となる

「余白」をあえて残す