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ロシマヤンのブログ

心理学の知識を元に、人間の生き方や社会のあり方について

自分なりにいろいろ考えていきたいと思っています。

感想など、コメントいただけると幸いです。

まさるとなるみ

おっぱいの雑念にまみれたなるみの拳法の稽古の様子を見ていた勝が自分も強かったらいいのにと鳴海にこぼします。

ここで一大企業であるサイガの社長の愛人の子供であることから、

勝が学校で壮絶ないじめにあっていることがわかります。

 

そのいじめの内容たるやすさまじく、

階段から突き落とされて骨折したり、

なぐられて歯をおられたり、

アルコールランプをふとももに押し付けられたりともはや拷問の域です。

 

そしてつらい体験を思い出し泣きそうな勝に、

鳴海は恥ずかしがりながらも泣き虫で弱虫だったころの幼少時の写真を勝に見せます。

 

泣き虫の弱虫だった鳴海が拳法く通して強くたくましくなったことを知った勝が、

鳴海にあこがれ実際に自分も強くなりたいと思うようになる最初の一歩です。

 

ここで心理学的にはコーチングのお話と例としてGANTZを紹介し、

ロシマヤンがいくつか気になった勝の表情や背景に注目したいと思います。

 

まずは二人の会話の流れを確認します。

 

1. 鳴海から拳法の話をきいて自分も強かったらこんなに怖い思いもしないで済むのにと勝がこぼします。

ややうつむきながらたよりない表情ですね。

 

2. しかしナイフやバットを持ったやくざの一団が一斉に襲ってきたときや、

機械仕掛けの人形が笑われたときは自分だって実は怖かったのだと鳴海が打ち明けると、

当然勝はどうして怖いのにそんなに戦えるのかと質問します。

 

鳴海はそうしたかったとしか答えられません。この辺は鳴海の存在証明そのものですからね、

損得勘定のような具体的に説明できる理由なんてないんですけれど…

自分でもよくわからないでいる鳴海の表情が面白いですよね。

 

また美術的なことはロシマヤンにはさっぱりですが、

こういう背景の使い方もきっときょとんとした感じを演出するのに有効なんでしょうね。


3. 鳴海としては拳法を長く続けていると、

自然と痛みに対する怖さは減ってくると説明したところ、

歯を折られても怖くなくなるのかと勝は聞きます。

 

この時の勝の表情はみじめな体験を生々しく思い出したくないから、

悲しくもどこか淡々とした表情を見せます。
 

こういうのは心理学的には要チェックポイントですね。

過去の辛い体験をそのままに思い出し誰かに伝えるってすごく大変なことなんです。

極端な場合、たとえば幼児期の虐待被害などを大人になってから告白しようにも、

被害者の側があれは乱暴ではあったけどしつけの一環だったなんて、

自分で自分をごまかそうとすることがあります。
 

そこまで極端ではなくても、

そんなことも昔はあったけど大したことではなかったかのようにへらへら笑っていたり、

淡々と冷静に論理的に説明することで生々しい感情が呼び起こされないようにしたりします。

 

 

4. ここでどういうことか鳴海が確認すると実は先に挙げたように壮絶ないじめにあっていることがわかるんですね。

当然鳴海は彼の存在証明にかけてそんな事態を許せるわけがありません。

この時の鳴海の表情と背景の書き方が怒り狂うとはこういうことなんだとよくわかります。

さっきのきょとんとした鳴海の表情、背景とは真逆です。

 

 

 

いじめられていることをだれにも相談できずにいたこと、

いじめられる理由の一つが一人だけ外車で送り迎えされていることなので、

それを成人している異母兄弟に相談したが、

サイガの子供が歩いて出歩くなんてみっともないと取り合ってもらえなかった時の無力感、

あきらめの表情、無力感、うつむき加減になっています。

 

 

そして話しているうちに徐々に抑え込んでいたみじめでつらく悲しい感情が込みあげてきます。

強かったらいつも笑っていられるのにってと嘆くのですが、

ここでまさるの歯が折れていることが強調されていて痛々しいです。

 

 

ただこの泣いている勝の顔は実は勝の回想なんですよね。

鳴海の前の前で泣いているのではなく、

鳴海の前では淡々としていながら、

歯を折られていたくて悲しくて泣いていた時の回想シーンが挿入されているんです。


この描き方は非常に複雑でうまいなと感じます。

というのもあまり考えずに読んでいると話している位置に勝が泣き出してしまったように見えるんですが、

勝は実際に鳴海の前では泣いておらず、この泣きじゃくる一コマは勝の心象風景なんですね。

 

頭のいいまじめな子であると同時に、

ナイーブで深く傷ついている勝の二面性が見事に演出されているとロシマヤンは感じました。

 

5. そこで勝が(心の中で)泣きじゃくる中で鳴海は自分の子供のころの写真が写るアルバムを取り出し勝に見せてやります。

 

そこにはおぼっちゃんふうのピカピカのランドセルを背負った今の鳴海とは似ても似つかない鳴海が写っていたり、

運動会でびりになったり、

給食で嫌いなおかずをたべられず食べ終わるまで残されていたり、

学校に行くのが嫌だと柱にしがみついて泣きまくる鳴海のはずかしい写真が写っていたのです。


あまりに子供っぽく滑稽な鳴海の子供のころの様子に勝はおもわず笑いだしてしまいます。

 


 

先ほどまでのどこかむなしさやかなしみとはうってかわって優しい笑顔になりました。

これぞまさしく「笑う」ことがテーマとなっているこの漫画にふさわしい一コマです。

ちなみに恥ずかしい過去を絶対にだれにも言わないようにすごむ鳴海の表情と背景も面白いです。

 

きょとんとした鳴海、

怒り狂う鳴海、

そして恥ずかしさをこらえつつ汗かきまくりの鳴海、

こういう少ないコマに明らかに異なる書き方があることに気付けると美術的にも面白いですよね。
 

美大生の方なんかこういうところ、しっかりチェックしながら読まれているんでしょうか。